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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第二章 ヤシロ様の村
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アンサーチェック

 突然の乱入に、どうやらトミーのほうも面食らったようだ。

 奴のポチは、何回か攻撃して壁を破れないか試していたようだが、無駄な足掻きはやめたらしい。

 さすが頭がいいだけはある。


「そういや、不思議な姉ちゃんの姿が見えないと思ったら……姿まで消せるとは、何処の精霊様だ?」


 精霊様? それは俺も詳しく聞きたい。

 チラッとメフィのほうを見ると、とくに慌てた様子もなくすまし顔だ。


「ボクは悪魔さ。それも、君の想像の上をいく……ね」

「悪魔だと? 馬鹿いうなよ、お前みたいな悪魔なんて……」

「おいトミー、さっきの続きだ。俺から三つ質問をするが、お前の質問にも三つ答えよう」

「……おもしれぇじゃねぇか。いいぜ、答えてやる」


 メフィの障壁がいつまで持つかは知らないが、こいつが急に襲ってくるということはないだろう。

 向こうも時間と情報が欲しいはずだ、その点は心配ない。

 ……心配なのは俺の懐だけだ、大丈夫だろう。


「まず、お前は勇者か?」

「何を言い出すかと思えば……ックック……ハッハッハ! こいつは傑作だ。この俺が勇者だって? 勘弁してくれ」

「でも、このオーブを集めているってことは……」

「……どうやら、お前はこれを知っているらしいな。ちょうどいい、俺の答えは違う。ただの冒険者だ」

「お前がただの冒険者なわけないだろ!」


 あいつはこれ以上答える気がないらしい。

 くっ、しかし先行が俺でよかった。


「じゃあ次だ。なぜ魔物を従えてるんだ?」

「まず、どうして俺がこいつを従えてると思ったんだ? 答えるのはそれからだ」

暗殺獣アサシンビーストに命令したり、名前がポチだったり……それに、フレッシュハーブという素材に心当たりがあるだろ?」

「あの場所は良い群生地だったな。あの村にいる間は、随分とポチがお世話になったぜ」


 フレッシュハーブ。薬の原料にもなるそれは、魔物にとっては極上の甘味ともなるらしい。暗殺獣アサシンビーストをおびき寄せるエサとしても使われる……そう記載されていたが、主人としてはエサをストックしていても不思議ではない。

 恐らく匂いに釣られて、二匹もの暗殺獣アサシンビーストが集まったのだろう。


「それにポチって……どうみてもペットだろ?」

「ククッ……教えてやるよ。テイマーって聞いたことはないか? 俺は元々、そういうことに長けた村の出身でな。珍しくてもしょうがねぇな」


 あ、知り合いにいるわ。

 リアンがそのテイマーとやらだったな。

 しかし、暗殺獣アサシンビーストなんて魔物をテイムするとは、相当な手慣れらしいな。

 それよりも、重要な疑問がある。


「じゃあ俺から最後の質問だ……お前は、魔王側なのか?」

「そこに気づくか。答えはどちらでもない、だ。しかし、人間が魔王と手を組んじゃいけないって決まりはないだろ?」

「そうだな、現に俺も悪魔と組んでいる……自称だがな」

「それだ。お前からの質問は終わっただろう? 次は俺だ」


 これでも約束は守る男だ。

 聞きたいことは聞いたが、こいつにも答えてやろう。




「俺からは、そこの姉ちゃんについて聞かせてもらおうか。悪魔だとか言っているようだが、何処でその精霊を手に入れた?」

「何処で? 魔王の間かな」

「まっ! ……お前、あの場所からの帰還者かっ!」


 なんかトミーだけではなく、近くにいた村長とリューも驚いているようだが、別に嘘は言っていない。多少の誤解はあるかもしれないが。

 しかし、こいつと同様にこれ以上答える気はない。


「これ以上知りたければ次の質問をしな」

「チッ……じゃあ、お前は何だ?」


 なんというか、すごくアバウトな質問が来た。

 そう言われても、回答に困る。


「人間……勇者ではないが、勇者に巻き込まれた一般人、かな?」

「何だそれ。いや、そうとしか答えようがないのか」

「そう解釈してくれると助かる」


 俺だって、なんで自分がここに来たのか理解していないんだ。

 せめて魔法くらい使わせてくれよ。

 しかし、やけにこいつの物分りが良いのが気になるな……オーブを集めているようだし、ひょっとして。


「……こっちも今更になって聞きたいことが出てきた。ほら、最後の質問をしろよ」

「これ以上は俺も話さないぜ? そこの姉ちゃんが壁を解除してくれたら考えるけどな」

「生憎とボクは、マスターの命令にしか従わないのさ」

「そうだ。最後に、その姉ちゃん……悪魔といったが、契約したのか?」


 こいつ、メフィのこと好き過ぎるだろ。

 そんなに興味を持たれても、俺の相棒はやらんぞ。


「契約も何も、メフィは俺の所有物さ」

「マ、マスター! そういうことは、もっとこう……相応しいタイミングと場所で言ってもらわないと、ボクとしてはちょっと……恥ずかしいかな」

「てめぇら何イチャついてんだ!」

「おおっと、男色特有の嫉妬かい? 悪いが男には……」

「だぁー! もうっ、ポチに壁が破れないなら、俺の魔法でっ!」




 奴が急に暴れだしたが、本当に大丈夫なんだろうな?

 堪らず横のメフィを見ると、既に詰みの段階へ入っているらしい。

 俺の財布も詰みになりそうだ。


「……なんだこれ、俺の魔法が効かない? いや、後ろからも壁が!」

「何も考えずに質問をするとでも思ったか? 俺は魔法を発動していたのさ! 話に乗った時点でお前とポチは詰んだんだよ」

「実際に仕掛けたのはボクだけどね。マスターは何もしていないさ」


 そこ、ネタバレしない。

 メフィの作戦はこうだ。

 先に俺を先行させ、障壁の範囲を定める。俺のいる位置よりも、少し後ろといったところまでか。

 あとは門番二人が洞窟の中に入ったことを確認し、入り口から障壁の位置までどんどんと空間を狭めていけば良い。


 要するに空間圧縮だ。張った本人はすり抜けれるもんだから、必然的に残った二人が圧縮される。

 なかなか酷いことをしやがる。さすが悪魔だ。

 空間が狭くなればなるほど、より強固になっていく空間らしいが、俺からの位置でも、既に迫ってくる壁が見えている。


 あれを破れるもんなら破ってみな!

 俺の銀貨か、奴の気力か……どっちが持つか。


「く、くそっ! ここでやられるわけにはいかねぇんだ!」

「安心しろよ、お前にはまだまだ聞きたいことがある。そのまま容量空間ストーレージに閉じ込める手筈になっているが、殺しはしないさ」

「こうなったら……あの手は使いたくなったが。ポチ、待っていろ。俺はお前を見捨てない……送還術・退!」

「っ!! 何をする気だ!」


 奴が魔法を使うと、あれだけ巨大な存在感を放っていた暗殺獣アサシンビーストがどんどんと小さくなっていく。

 やがて、子犬くらいの大きさにまで縮んだと思うと……ポンッ! という可愛い音と共に消滅した。

 あいつ、魔物を逃しやがった!


「メフィ! あの空間からは脱出できないんじゃなかったのか!」

「……ボクはあの二人に対しては『存在を空間に固定』しているだけさ。まさか、退化させることによって、別の存在に成りすますとはね」

「あいつのほうは大丈夫なんだろうな?」

「人間というものは、早々に変化ができない。例え薬を飲んで別の存在に変わろうとしても、変化中が終わる前に空間が無くなるだろう」

「そうか……それじゃああれも、大丈夫なんだろうな?」


 ちょうどトミーは、何かの小瓶を取り出したところだ。

 まさか、魔物化とかするんじゃないだろうな……

 既に壁で挟まれそうになっているトミーは、俺の心配を知ってか知らずか、小瓶を勢い良く地面に叩きつけた。

 白い煙で一瞬だけ視界が塞がれるが、ただそれだけだ。


 ……意味のわからない行動だったが、トミーは相変わらずその場に留まっているみたいだ。

 心なしか、背が低くなって、右へ左へと頭を動かして、女の子のような見た目になって……って、あれは別人じゃないか!

 中の人は状況を把握したのか、迫ってくる壁に対し必死に両手を広げている。


「メフィ! 今すぐ壁を消せ!」

「どうしたんだい? あともう少しで仕上げ……」

「強制終了!」


 くそっ、間に合え!

 俺はメフィにそう叫ぶと同時に、無駄だとわかっていてもその障壁へと飛びつく。

 そのタイミングで強制終了が働いたようで、俺はそのままの勢いで中の人へ突っ込んだ。

 ……よし、無事だな。

 危なかった。このまま容量空間ストレージに収納されたら、アイツにかける予定だった拷問魔法が、全てこの子に降りかかるところだったぞ。


 おのれ、トミーのやつ! なんて奥の手を隠してやがったんだ!

 八つ当たりだとわかっていても、憤慨せずにはいられない。

 そういや、アイツの名前を聞き忘れたが、俺も名乗っていない……今回は逃したが、次に会ったときは許さない。






「今、何が起こったかわかるか?」

「……信じがたいことだが、彼はどうやらボクの魔法に気づいていたね。まさか『存在を空間に固定』する方法を逆手にとって、存在の退化と、存在自体の交換を行うとはね。これはボクのミスだ。すまない」


 存在の交換。

 別の場所にいる人物を自分がいる場所へと送り、自分はその人物がいた場所へと送られる。

 メフィの使った『存在を空間に固定』する魔法は、転移魔法などの逃げ出す方法に強い特化型だ。

 しかし、奴の使った魔法は魔物を送り返す送還。それと、別の人物を召喚し、立場を交換する道具。

 これは転移魔法ではなく、召喚魔法に分類される。

 魔物の場合は存在を書き換えるという暴挙に出たようだが、まさか人物ごと入れ替わり、身代わりにするとはな。


 身代わりにされたのは、どこかの女の子のようだ。

 いきなり壁が迫ってくるというのは、相当な恐怖だったのだろう。

 俺が抱きしめるとすぐに気を失ってしまった。

 ……決して、俺のせいではないはずだ。




 御神体も無事、中身のオーブも無事。

 こちらに被害はナシか。被害があったのは俺の財布だけでいい。

 全て終わり、さて帰ろうかというところで、空気が話しかけてきた。


「お前さん、決着はついたのか?」

「おや、空気が喋ったぞ。メフィもいたずらが好きだな」

「ボクのせいにされるのは心外だけど、マスターの気持ちも理解るさ」

「あのー、お兄さん? トミーさんはどうなったんでしょうか?」

「おや、今度は灯りが喋ったぞ?」

「す、すみませんでした! 口を挟んで良い雰囲気じゃなかったので……」


 まあいじめるのはこれくらいにしてこうか。

 二人ともただ見ているだけだったが、邪魔されても困るしな。

 手早く、トミーと暗殺獣アサシンビーストに逃げられたこと。代わりにこの少女が身代わりとなって召喚されたことを伝える。

 これで少しでも村から報酬が出ればいいんだけどな。

 今の財布を見るのが怖い。


 まあ、今は村へ戻るか。

 二人に先導してもらい、俺は少女を抱え込もうとして、その頭についているあるモノに気づいた。


「なあメフィ……この娘ってもしかして?」

「一見すると人間のようだが……この頭だと違うね。まさか、あの種族の生き残りがいるとはね」


 少女の頭には、ちょこんと、しかし強く自己主張をするように二本の白いツノが、生えていた。

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