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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第二章 ヤシロ様の村
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謎は全て解けぬ

 姿が見えないメフィを心配しつつも、どんどんと洞窟の奥へと進む。

 ピンチのときは助けてくれるとわかっていても、傍にいないというだけで随分と不安になるものだ。

 メフィ依存症にでもなってしまったかもしれないな。


「着きましたよ」

「お前にはこれが読めるんだよな!」

「ああ……予約、炊飯って書いてあるな」


 他にもメニューや、保温選択ボタンもあるが、そこまで詳しく伝えないでもいいだろう。

 ぶっちゃけ説明を求められると面倒だ。


「ところで、これ……開けちゃっていいんだよな?」

「ああ、俺も開けたことがあるから大丈夫だ。ただ、何かはわからなかったけどな」

「それだけ聞ければ十分だ」


 これでもし、悪魔とか小さい神様とか出てきても困るからな。

 二人が見守る中で、その御神体と呼ばれる炊飯器の盖へと手を伸ばす。

 ……ポンッ! と、小さな音を鳴らして開いたそれには、ポツンと水晶玉が収まっていた。大きさは野球ボールくらいだろうか。

 え、たしかに予想外だけど、これってまさか?


「お前さんには、それが何だかわかるのか?」

「一回見たことがあるけど……え、これって保管できるものなの? だとしても誰が何のために……」

「そ、それは何ですか?」

「これは、勇者が集めているもの……魔王幹部を倒した証のオーブらしい」


 間違いない。

 色や模様は違うが、あのときリョウタに見せてもらったオーブと同じモノだ。

 これが何故、炊飯器の中に……?

 とすると、あの門番二人が探しているものはコレになるのか。

 ……いや、待て。

 ということはだ。外にいるトミーとイリーって、まさか勇者?


「確認するが、勇者がこの村に来たことはないのか?」

「無いわけじゃないが……普通の冒険者すら、宿屋が無いとわかるとすぐに旅立っちまうな。そもそも、冒険者が寄るような村じゃねぇよ」

「何も取り柄がない村かよ」

「失礼なことを言うな! ヤシロ様を部外者に見せるわけにもいかねぇし、その通りだけどよ……」


 村に伝わる言い伝えとかで、ヤシロ様は神様として崇められている。

 しかし、その祠に村人以外を案内するのは禁止されている。

 ……例外として、あの取扱説明書を読めるものなら、案内していいんだとか。

 掟を定めたやつも、一体何を考えていたのやら。


 と思っていたところに、入り口から誰かの足音が聞こえてきた。

 ちょうどいい、奴らにこの場所の意味を教えてもらうか。






「……村長様! お兄さん! 入り口から誰か向かってきてます」

「おかしいな、誰も外に出るなと言ってあったはずだが……」

「誰も出ていねぇよ。俺らは最初から出ていただけさ」


 暗闇から近づいてくる人物が、だんだんとリューの放つ灯りに照らされていき……現れたのは案の定な二人だった。


「いやー……どうもどうも。ここまでの案内ありがとよ」

「トミー! どうしてここに」

「おっと動くんじゃねぇ、動くと俺のかわいいポチが、お前たち全員を食っちまうぜ」


 その言葉を受けて、門番の片方がみるみるうちに巨大な虎へと姿を変えていく……もしかして、あの姿はっ!


「イ、イリー? どうしたんだ、そんな獣みたいな姿になって……」

「そいつ、暗殺獣アサシンビーストか! さっき倒したはずなのになんで!」

「擬態しているのが一匹だなんて、誰が決めたよ。俺も驚いたぜ? あの場所でこいつのお仲間がやられそうになっていたんでな」


 ということは、レイナの腕を切り落とし、現場を偽装し、二人……レイナと擬態した暗殺獣アサシンビーストを運んだのは、こいつで間違いない。

 しかし、目的がわからない。


「おいトミー……お前がラルフをやったのか?」

「そいつは偽名なんだがな……お前もこんな顔の奴、見たことねぇだろ?」


 そう言うと、トミーを名乗る人物は兜を外す。

 俺とは初対面なのでわからないが、人間のコイツは顔の輪郭と髪型を隠すことによって潜り込んでいたのだろう。

 暗殺獣アサシンビーストのように擬態せずとも、門番のように、普段から鎧に包まれている人種に成りすますのは容易だったのだろう。


「……トミーじゃ、ない? 誰だお前!」

「遅いな。まずイリーが化けた時点で気づけよ……そうだな、とりあえずトミーでいい。わざわざ名を明かすまでもねぇからな」

「てめぇぇぇ! お前がラルフもやったのか!」

「ああ、正確にはこのポチがな。あいつはちょっと手ごわかったな」


 今にも襲いかかろうとする村長に反応してか、目の前の暗殺獣アサシンビーストが威嚇する。

 村長も少しは冷静になってもらいたいところだが、心情を察するに怒りで煮えたぎっていることだろう。


「本物のラルフや……トミー、イリーはどうした?」

「ハハッ、知らねぇのか。いいぜ、教えてやろうか……普通なら、暗殺獣アサシンビーストというのは他の魔物と群れて行動する。しかし、うちの暗殺獣アサシンビーストは特別でな。どうやら、それじゃ満足できないみたいなんだわ」

「習性が違う……亜種か?」

「こいつは人にしか擬態しない。そして、ある程度集落に溶け込んだとき……牙をむく。そうやっていくつもの集落を疑心暗鬼に落としてきた」

「お、おい…まさか」

「つまり、仲間同士の殺し合いをさせるのが好きってことさ」


 一言で言うと、サークルクラッシャーだろうか。

 しかも、よりタチが悪い。

 人に化けて、殺人を誘発させるのか。

 自分で手を下さない分、より厄介な存在だ。

 そうなると、ラルフはレイナに。トミーかイリーはどちらかに殺されたことになる。それは、目の前のコイツに仕組まれて。


「で、でも死体は……」

「俺が残しておくわけないだろ? こいつは雑食だからな」

「食わせたのか!」

「……俺は何も命令していないさ。ただ、飛び散った肉片は燃やさせてもらったけどな。全く、周りが濡れたもんだから苦労したぜ」


 となると、あの無理やり燃やしたような跡は……そういうことか。

 こいつがトミーではないというなら、火の魔法が使えてもおかしくない。

 ただ、まだ不可解な点はある。




「どうして腕を切断した?」

「答える義理はねぇだろ」

「じゃあ、今から話すことはただの予想だ。あれをやったのはお前じゃないな?」

「なっ! どうしてわかった!」


 なんだ。

 適当に言ったのに、どうやら図星だったらしい。

 ここはそれっぽい理由をつけて丸め込むか。


「まず、人に擬態した暗殺獣アサシンビーストは動きが鈍くなっていた。ということは、動物としての力も全体的に低下した状態と予想できる」

「くっ、そういえばお前がアレを倒したんだったな」

「次に、あの切断面だ。戦闘中に負傷したとは思えないほど、綺麗に肩から先がなくなっていた。武器だけ外すなら手首だ」


 俺もそれが一番不思議だった。

 武器が重かっただけならば、単純に手首を落とせばいい。


「しかし、それをやったのはお前じゃない。お前はただ命令しただけさ」

「命令したって……誰にだよ」

暗殺獣アサシンビーストに、だよ。そもそも、お前は剣を持っていないだろ?」


 村長の話では、トミーは術士と言っていた。

 もし普段から剣を持っていなかったとなると、成りすましたトミーが急に剣を持ち出すのもおかしな話だ。

 少しの違和感があれば全ての行動が怪しく思えるように、バレるリスクは少なくしたほうがいい。

 その点、イリーは普段から剣を持ち歩いていたようなので、命令してやらせたのだろう。

 しかし、ここまで予想通りだと逆に気持ちがいいな。


「腕をそのまま持って帰ったのは……一緒に運ばれたラルフから、気をそらすのが目的だったんだろう」

「はあ? 何いってんだ?」


 あれ、違ったのか。

 重傷者がいるなら、そっちにかかりっきりの村人を排除できる。

 そんな考えで潜入したと思ったんだがな。


「あの暗殺獣アサシンビーストのやろうは、ただ目撃者を消したかっただけだ。あそこにいれば、そこのリューってやつも合流するだろ? 何気ない顔で自身も治療してもらってから、お前ら全員に襲いかかるつもりだったらしいぞ? あいつもラルフってやつにこっぴどくやられたあとだったからな」

「あのラルフの骨折は、そのままアイツの怪我だったのか……」

「二人を運ぶのは苦労したんだぜ? まあそのおかげで、俺らもこの場所にたどり着くことができたがな」


 そうだ。

 さっきから話しているが、こいつの目的が不明なんだ。

 散々聞いたあとだが、今から交渉といきますか。






「お前に三つほど質問がある」

「嫌だね。てめぇらはさっさとそのオーブをよこせ」


 今日の三つは却下されました。

 いや、俺も欲しい情報はあるが、こいつにもあるはずだ。


「お前の質問に三つ答える。それなら悪い話でもないだろ?」

「ほう……ちょうどいい、俺もお前に興味があったんだ」


 ぞわわわわっ! 

 背筋を何か寒いものが駆け上がったが、こいつまさか……そっちの気が!

 俺が途端に青ざめたのを見て、トミーのほうも理解したらしい。


「ちげぇよ! お前の連れている奴のことや、なんでその文字が読めるかとかの純粋な興味だ!」

「純粋な子を、何人その毒牙に……」

「ああ、くそっ! ポチ、面倒だからもう全員やっちまえ!」


 いかんな、少し遊びすぎた。

 しかし、情報は引き出せた。こいつの興味はメフィのことだろう。

 ぶっちゃけ、俺に聞かれてもよくわからないが。

 そう思っているうちにも、奴の暗殺獣アサシンビーストは目の前に迫ってきている。

 保険として自動防御オートガードは発動しているが、メフィさん頼みますよ。


 暗殺獣アサシンビーストの足が俺に向けて振りかぶられ、爪で斬られる……というところで、自動防御オートガードが発動するよりも早く、何かの壁で遮られた。


「お待たせマスター……勝利への方程式は、今完成したよ」


 方程式て。

 しかし、待っていたぞ。ここからは俺らのターンだ!

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