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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第二章 ヤシロ様の村
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再びのヤシロ様

 何かがおかしい。いや、予想はついている。


「レ、レイナ? お前はラルフに襲われて気を失ったんじゃないのか?」

「いえ……何度か噛みつかれたことは覚えていますが……ラルフさんは私を守ってくださりました。あの獣は、ラルフさんが倒したのでは?」

「いや……え? だとすると……」


 レイナが気を失った。その直前まで、ラルフという人物はレイナを守りながら戦っていたらしい。

 しかし、結果は怪我人として二人運ばれてきた。


 レイナが重傷、ラルフも重傷……というほどでもないが、手負いだ。

 暗殺獣アサシンビーストが擬態したとしても、本物が近くにいてもおかしくはない。


「あたしらがラルフだと思っていた人物は、魔物が擬態した姿だったらしいよ……ついさっき襲われた」

「そ、そんな! じゃあ、本物のラルフさんは……」

「襲われた場所にまだいるか、或いは……」


 レイナ以外の全員は、暗殺獣アサシンビーストの本来の姿を見ている。

 あの巨体であれば、人を丸々食べるのも容易なことだろう。

 俺達の顔を見て、レイナも察したらしい。

 相当ショックだったみたいで、両手で顔を覆い隠してしまった。

 ……誰も何も言うことが出来ずに、レイナの泣き声だけが部屋に響く。


 しかし、悪魔には関係なかったらしい。


「ところで、腕はきちんと動くかい? ボクも腕を接続するのは初めてだったからね。何か違和感があれば教えて欲しい」

「っ……っっ! ……腕、ですか?」

「てっきり戦闘で切断されたものだと思っていたが、違うのかい?」

「そんな記憶は……それに、武器も……あれ? そういえば、私の武器は何処にありますか?」

「そういや、腕は一緒に運ばれてきたが、レイナの武器はなかったな」

「おかしいですね……最後まで離さなかったはずですけど」


 だとすると、武器を奪うために腕ごと切ったのか?

 奪うだけなら、手首のみでも問題ないと思うが。


「ちなみに、どんな武器を?」

「大鎌です」

「え?」

「レイナは大鎌を振り回すんだよ」


 何それ怖い。

 いや、いま重要なのはそこじゃない。

 大鎌……何処かで見たような気がする。


「そういや、この二人を運んできたのは誰なんだ?」

「ああ、お前らも見ただろ? 入り口にいるトミーとイリーだ。あいつらはCランク冒険者なんだぜ? 強そうだったろ」

「そうだな。そこにいるメフィを見ても驚かなく…………あ」


 そうか。

 入り口に立てかけてあった武器が、たしか大きい鎌だった。

 ハルバートみたいな武器かと思ったので、なんとなく印象に残っている。

 すると、あいつらがレイナの腕を切り落としたり、火の魔法を使ったのだろうか?


「ちなみにそいつらって、火の魔法とか使える?」

「いや、トミーのほうは魔法に長けている術士だが、二人とも火の魔法は使えなかったはずだ。どうしてそんなことを聞くんだ?」


 となると、また別の誰かか?

 門番はただ武器を預かっていただけかもしれない。

 ……悩んでいても仕方ないな。


「まあまあ、これで暗殺獣アサシンビーストは倒したんだ。約束通り、報酬を貰おうか」

「ああ、そうだったな。今準備するから待ってな」


 ……さっきから村長を働かせてばかりだな。

 まあ報酬を貰ったらここからオサラバできるんだ。

 御神体の中身だけ見せてもらって、あとはさっさとローリアの街にでもいくか。




「そういや、ここからローリアの街への道までって、誰かわかるか?」

「それならここから東へ行ったところに、街まで続く道があるが……あんた、歩いて向かう気かい?」

「そんな遠いのか?」

「この村からでも、馬車で三日といったところだね。あんたの足だと十日はかかるんじゃないか?」


 おう……ある程度予想はしていたが、どんだけ遠いんだよ。

 まあ歩いても十日くらいで着くということは、行けない距離ではないんだろうけどさ。


「……ちなみに、馬車を借りることは」

「この村にある馬車は、今は全て出払っています。いつ戻ってくるかは、私にもわかりません……」


 最初は歩いて向かう予定だったんだ。

 当初の予定通りに向かうか。


「……待たせたな。どうした? そんな絶望したような顔をして」

「いや何、ちょっと自分の運動不足と、情報不足を後悔してな。まあいい、早くヤシロ様のところへ行こうぜ」


 これからのことはまた後で考えよう。

 暗殺獣アサシンビーストも片付いたことだ。今はヤシロ様の中身が気になる。


 ついてこようとするレイナを説得し、村長とリューを引き連れ外へ出る。

 なんでも、村長は光魔法が使えないようだ。村長のくせに。

 もう夜も遅いので明日にしようとも提案されたが、ヤシロ様の中身が気になって眠れそうもない。

 暗殺獣アサシンビーストの報酬として、不足分を村長に護衛してもらうことで説得した。



 灯り役と、襲われた現場への案内役も兼ねて、二人と共に来た道を戻る。

 ……村の入り口に差し掛かった時、行きとは違うあることに気づいた。


「……門番の二人は何処に行ったんだ?」

「ありゃ、ちょうど巡回の時間だったかもしれないな。あいつらにはたまに村の周辺を見回りしてもらってんだよ」

「……にしては、誰もいないなんて不用心だろ。二人いるんだから交代で行けばいいのに」

「細かいこと気にすんなって! あいつらには後で言っておくからよ!」


 門番の意味がなくなるほど致命的な行為だと思うんですけど。

 まあ、聞いたところによると、二人は火の魔法は使えないんだ。

 第三者じゃなければ、別に気にすることでもないか。




 森への道は、行きとは違いスムーズに進むことが出来た。

 現場を見たいと行った村長さんに気を使ったのか、リューも走ることはせず、村の脅威も去ったということで落ち着いた足取りだ。

 とくに躓くことも、転がりまわることもなく順調に進んでいく。

 傍の悪魔は何やらつまらないといった表情をしていたが、思いつたように村長へ纏わりつく。


 ……あいつ、ターゲットを変えたな。村長を驚かすことによって転がしたり反応を楽しんでいる。

 常に誰かで遊んでないと気がすまない性格なのだろうか。


 そうこうしているうちに、リューやレイナ達が襲われた場所へたどり着いた。俺達が見たときと変わらず、不自然に燃やされたような跡や、戦闘の爪痕といった感じの荒らされ方がそのままだ。

 ……いや、本当にそのままか?

 何か、さっきと変わった点は……


「そんな森の奥ってほどでもないのに、ここでお前らは襲われたのか」

「そうですね。いつもは安全な場所なんですが……」

「そういや、採取していた薬草はどうした?」

「あれ? おかしいですね……僕はここら辺に投げ捨てたはずですけど。トミーとイリーさんが回収してくれたのでしょうか?」

「いや、あいつらは何も持っていなかった。となると、また集めてもらわないとな……」

「そんなに重要なものなのか?」

「ああ、集めてもらっていたのは、薬の材料でな。他にも、安らぎ草やフレッシュハーブなどを集めてもらっていたんだ」

「マスター、一応今言われた名前を調べてもらえるかい? ボクの予想だと、不可解な行動の手がかりはそこにありそうだ」


 こいつ探偵気取りか。

 俺も頼るしかないんだ。大人しく従おう。


 一覧から該当する名前を探していると、後半に載っているということは中々のレア素材らしい。

 何の材料になるかを見ると……なるほど、そういうことか。これは用心しておいたほうがいいな。

 どうやら、まだ事件は終わっていないらしい。




「まさか森の中を通るとは思わなかったが、今日はやけに森が静かだな。深夜は魔物にとって絶好の狩りだというのに」

「ボクの魔法も効いているのかもね。そんなに珍しい魔法でもないから、今回は報酬分からしか貰っていないよ」


 俺の頼みだから仕方ないとはいえ、村長から貰った銀食器類が次々と消滅していっている。

 何もしていないのに、リュックがどんどん軽くなっていくという感覚も不思議なものだ。

 これもある意味で魔法なのは間違っていない。




 ようやく森を抜け、ヤシロ様の洞窟が見えてきたところで……予想通りの展開になっているかをメフィに確認する。


「悟られないように頼むが……追手はいるか?」

「……いるね。どうやらボクの想像通りだ」

「向こうが隠れているなら、まだ仕掛けてこないだろう。このまま中へ入るか? あいつらの目的も気になる」

「そうだね。ここは逃げられないように布石を打っておこう。マスターはそのまま中へ入ってよ。ボクは姿を消すけど、彼らより先には追いつくさ」

「わかった。信用しようじゃないか」


 俺はリューと村長に続き、後ろを振り向くこともなく洞窟の中へ入る。

 奴らが着いてきていることは確定なんだ。こちらが気づいていると悟らせる必要はない。

 追手は門番の二人。

 トミーとイリーと呼ばれる人物だが、不意打ちする予定ならかかってきやがれ。

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