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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第二章 ヤシロ様の村
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作戦会議

 メフィの先導するままに逃げているが、さっきの生き残りはピッタリと俺の後ろをくっついてきている。

 普通の犬ならすぐに追いついてもよさそうなものだが。


「メフィ! あの犬はっ! なんだ!」

「少なくとも、擬態できる点で強敵なのは間違いないさ」


 魔物にも生態系というものがあるとするなら、あいつはファントムドッグの群れに混ざって狩りを行なっていたらしい。

 スライムなどにも擬態できる個体はいるが、あそこまで完璧に擬態できるのは手慣れた魔物しかいないんだとか。


 魔物も仲間だと思うほどの擬態力とか、もしそれが人間に擬態できたりするなら恐ろしいな。


「はぁ……はぁ……ちょっと、まって……」

「もう息が上ったのかい? 今度のマスターは意外と体力がないんだね」

「ぐっ!」


 やめろ。その発言は俺に効く。

 元の世界での運動不足が、ここに来て影響してきているのかもしれない。


「なら、迎え撃つ必要があるね……ちょうどいい、あの洞窟に逃げ込もうか」

「ようやく……やす、めるっ!」




 いつの間にか岩壁の近くまで逃げていたらしい。

 あれからずっと走りっぱなしだったので、息も切れ切れだ。

 洞窟に逃げ込む際、チラっと後ろを見たが、奴の姿は見当たらなかった。


 だが、見失ったからって諦めるほど、あいつは甘くないだろう。

 ただの予想だが、そんな気がしてならない。


「ふぅ……はぁ……とりあえず水……」

「ほら、水だよ。どうぞ」


 コップを出して、水を何処にしまったか探していると、親切にもメフィが入れてくれたらしい。

 なんだ、悪魔と名乗る割には、意外と優しいところもあるじゃないか。


「おかわり」

「はい、どうぞ……マスターも太っ腹だね」


 ……ん? どういう意味だ?


 二杯目の水を飲み干した後、ふとメフィの言葉が気になった。

 さっきまでは余裕がなかったので気づかなかったが、よく見ると近くにはコップしかない。

 てっきりメフィが水を注いでくれたかと思ったんだが。


「……水は、どこにある?」

「またおかわりかい? ほら……どうぞ」


 そうメフィが言うと、空になったコップにどんどんと水が満たされていく。

 何だろう。光が集まって、何か魔法を使っているような光景だな。


「……ちなみに、代金は?」

「安心しなよ、一杯あたり銀貨1枚分しか貰ってないよ」

「こっんの悪魔がっ!」


 俺から要求したこととは言え、まさか魔法を使って水を出すとは。

 お金があればなんでもできる。昔の人はよくいったものだ……この悪魔のために作られた言葉ではないかと疑うほどに。


「さて、マスターも落ち着いたところで本題に入ろうか。まず、あの獣だけど……確実にこの場所へ来るだろうね」

「見逃してくれるとかは?」

「今までバレないように擬態していたんだ。目撃者は消すんじゃないかな」


 ですよねー。

 しかし、メフィもわからないのか。

 ちょっと攻略本で探してみるか。特技……擬態、変化といったところか。


「そういや、スライムで擬態する個体って、名前はついているのか?」

「それはミミクリースライムだね。もっとも、スライムの場合は擬態化しても数分しか維持できないよ」

「だとするとミミクリースライムから辿って……あった。特技、擬態化。なんというか、そのまんまだな」


 まあスライムのことはいい。

 今は同じ特技を持った魔物がいないか調べることだ。

 特技、擬態化……擬態化……おかしいな、結構ページを捲っているのに見当たらないな。

 そのままページをめくり続けていると、普通の魔物データのほうは終わってしまった。


 まさか、攻略本に載っていない存在?

 いや……まだ開いていないページがある。


「さっき、擬態できる点で強敵とか言っていたよな?」

「そうだね。少なくとも、ボクが知る魔物ではないよ」

「だとすると、こっちか……」


 魔物データのほうで擬態化を持つ魔物はいなかった。

 ただ……このデータには後半がある。


 危険度大の要注意データ。

 あの魔王を名乗る中二病だって、このページの最後に載っていたんだ。

 まさしく魔王といった感じだろう。

 もしかしたらメフィが吸収した悪魔も、このページに載っているかもしれない。


 載っていてほしくないが、特技……擬態化……擬態化。

 おう……ヒットしたが、嬉しくない。


「あいつの正体が判ったぞ。暗殺獣アサシンビーストというらしい」

「特性からしてもそのままだね。獣には変わりないようだ」


 たしかにメフィの言うとおり、弱点も獣と一緒らしい。

 動きが素早く、毒などの状態異常に弱い。

 危険度大といえども、ページの序盤でヒットしたのが救いかな。


「ただまあ……これが危険度大に分類される理由だろうが」

「危険な理由?」

「目撃例が極端に少ない。あとは、理性を持った魔物並に頭が良い」

「それは……まずいね」


 目撃例が少ない。

 ということは、擬態の特技も合わせて発見しづらいんだなと思ったが……頭が良いとなると話は別だ。

 例え見つかっても、もし発見したのがパーティであれば、メンバーに擬態するなどして相手を消していける。


 もし人間の子供に化けられたとしたら、場所にもよるが、大抵の人は無警戒で近づいてしまうだろう。

 全く、事前に情報がなければ騙されるところだった。


「だとすると、もしここに人間がやってきても油断しないほうがいい。なんなら、ボクが対応しよう」

「メフィは大丈夫なのか?」

「このボクを見て、驚かない人間がいると思うかい? もしいたら、それは奴の擬態した姿だよ」


 そう決めるのは早計な気もするが……ここはメフィに任せたほうがいいな。

 暗殺獣アサシンビーストは勝てない相手と判断すると、すぐに逃げるらしい。


 俺らをここまで追ってくるということは、相当ナメられているみたいだな。


「よし、じゃあ確認するぞ。もしアイツがさっきの姿のままなら、まず障壁を張って逃げられなくする。そのあとは……そうだな、あいつの弱点である火系統の魔法で倒してくれ」

「もし違う姿なら?」

「人間だったらまず話を聞くんだ。場合によっては、本当に一般人かもしれないからな」

「まあ、万が一の可能性として、頭には入れておくよ」


 方針としてはこのくらいだろうか。

 入り口のほうの見張りはメフィに任せて、洞窟に差し込んでくる僅かな灯りで攻略本を捲る。

 どうやらだんだんと日が暮れてきたみたいだ。


 俺が獣だとすると、やはり獲物を狙うのは寝静まった夜だろう。




 日が完全に暮れ、あたりも真っ暗になってきた頃……メフィのほうを見てふと、思い出したことがあった。


「……なんだかんだで遅くなったが、メフィに聞きたいことがあったんだ」

「何かなマスター、ボクが答えられる範囲で良ければ、何でも聞くといいよ。もっとも、ボクにも拒否権があるから込み入ったことは…………」

「そうじゃねぇよ。ちょっと落ち着け」


 元はといえば、この魔物について聞こうと思い、昼飯や襲撃や、逃走劇などが始まったんだが。

 そういや、結局昼メシ食べ損ねたな……考えたら腹が減ってきた。


「色々と遅くなったが、シルバースライムという魔物を知っているか?」

「シルバースライム? 聞いたことがあるね。何でも逃げ足が速く、見つけるのは困難だが……倒した後には純度の高い銀に変わると……そうか」

「対価というのが銀貨じゃなくてもいいっていうなら、こいつのドロップで賄えないか?」


 あのとき対価で要求されたのは、何も金貨銀貨に限ったものではない。

 ただ、それくらいしか所持する対価がないだけだ。


「確かにボクが求める対価は『金か銀が含まれたモノ』さ。別に金貨や銀貨に限定しているわけじゃない。そうか、その手があるんだね」

「だろ? こいつさえ山ほど倒せば、俺のお金が減ることもないはずだ!」

「しかし、そのシルバースライム……何処にでも現れる分、冒険者に大人気で絶滅気味ではないかい?」

「え、そうなの?」

「この銀貨だってそうさ。これを量産するため、どれだけのシルバースライムが犠牲になったのか検討もつかないね」


 何もシルバースライムを倒さないと銀が手に入らない……なんてことはない。

 しかし、銀を手に入れる方法が色々ある中でも、魔物を倒すだけで手に入るというのは相当手軽な部類だろう。

 討伐依頼もバンバン出ていそうだな。


「そうか……いい考えだと思ったんだけどな」

「安心しなよマスター、あの暗殺獣アサシンビーストを倒せば、それなりの報酬にはなるんじゃないかい?」

「メフィの使う魔法と、プラマイゼロにならなければな」


 危険度大の魔物か。

 魔法を使うからには、絶対に仕留めてもらわないとな。

 でないとマイナスというか、俺が大損するだけじゃないか。


 俺がコスパとは何ぞや、お金の大切さなどをメフィに説いていると、いきなり柔らかい何かによって口を塞がれた。

 ……どうやらメフィが手を当ててきたらしいな。

 視線を送ると、柔らかそうな唇に人差し指一本を軽く当てるジェスチャーをされた。


「シッ……誰かこっちへ向かってくるね」


 その声に、俺も外の暗闇へと目を凝らす。

 ……遠くに見えたのは、こちらへ向かってくる子供の姿だった。

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