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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第一章 悪魔の潜む街
15/61

赤と黒、ついでに銀

 

 翌日。


 昨日は飛び込みの客だったにも関わらず、なんとか宿泊できた。

 どうやら俺が使っていた部屋がそのまま空いていたらしい。

 問題は料金だったが、手持ちの銅貨をほとんど使うことでギリギリ足りたようだ。

 リョウタのやつ、そこまで考えて……!


 これで完全に金策からのスタートだぜ! 

 はぁ……先が思いやられる。


 朝食のために部屋から出ると、ちょうどリョウタ達も今から向かうところだったというので、ご一緒することにする。


「……………………」

「……………………」

「昨夜はお楽しみでしたね」

「ば、馬鹿野郎!」


 昨夜はメフィの頼みもあり、向こうで三人揃って川の字で寝たらしい。

 言い争っても、メフィが『一日専有権』を主張すると、今度はリアンが『常時抱きまくら権』を主張する。

 それならいっそのこと三人で寝たらどうかと提案すると、二人とも無事に和解できたようだ。


 リョウタが余計な事をするなと睨みつけていた気がするが、むしろ感謝してほしい。



 というわけで、三人揃って寝ていたらしいが……何も起きないはずはなく……リアンはいつも通りですぐに寝たが、声を出せないことをいい事に、メフィが随分と調子に乗ったそうだ。

 リョウタ必死の我慢も虚しく、リアンはぐっすりと寝ていたみたいだが。


 まあその詳細は追々、メフィ本人から聞くとするか。




 いつも通りなリアンと、いかにも寝不足といった顔のリョウタと、朝からすこぶる元気なメフィと共にテーブルへ着く。

 ……ちょっと待て。


「おいメフィさんよ。君はメシを食べるのか?」

「食べても食べなくても支障はないさ。ただ、昨日マスター達が美味しそうに食べるものだから、食事がどんなものか気になってね」

「いやでも、メフィの宿代は払っていないから、メシは出ない……」

「じゃあ、マスターの分を貰おうかな」


 そう言うと、メフィは俺に運ばれてきたばかりの料理をヒョイっと摘む。

 そのまま自分の小さい口へ持っていくと……食べてしまった。


「うおおおおお! 俺の肉が!」

「うるさいぞ。食事くらい静かに食べろよ」

「じゃあ、リョウタのを貰うか」

「っ! 絶対に渡さないぞ!」

「あ、あの……勇者さまもお静かに……」


 あまりにも騒ぎすぎて、周りの客からも変な注目をされているからな。少し自重するか。

 とりあえずメフィにはこれ以上食べないようにお願いし、食事を終えるまでは無言の時間が続く。

 途中、リアンの追加注文にメフィが茶々を入れるなどのトラブルがあったが、三人ともデザートまで食べ終えた段階で本題に入る。


 ……俺の分のデザートはメフィに強奪されたので、女性連中が食べ終わるまで暇だったが。


「さて、これからの行動についてだが……リョウタ達は、石化解除の魔法を探すことで合っているか?」

「ああ。その本に載っているんだろ? 早く教えてくれ」

「慌てるなよ……まずその魔法についてだが、そこにいるメフィが使える」

「ほ、本当ですか!」

「ボクが使えない魔法なんて、君達の感覚で言うと存在しないね。そもそも……」

「それは置いといて、ここを見て貰いたい」


 何か一人で語っているメフィは無視して、重要なのはこの本に記載されている内容だ。

 方法は複数あったほうがいい。


「と言われても、読めないですけど……」

「あっ、そうだった。説明するとだ、魔法以外でも石化解除できる道具があるらしい」

「本当かっ! それはどこだ! どこにある!」


「あのー、お客様、失礼ですが……」

「「「すみませんでした」」」




 つい盛り上がってしまい、店員の方から怒られてしまった。

 むしろ、今までよく怒られなかったと思うよ。


 俺達が怒られている際に、ふとメフィの姿が見当たらないことに気づいたが……あいつ、姿を消していたのか。

 部屋に戻る途中で出てきたので、そういうところはちゃっかりとしているな。これから旅を共にする相棒としては心強いが。


 いつかと同じように、リアン達の部屋……ではなく、昨日買った荷物しか置いていない俺の部屋へと集まる。

 この部屋には昨日までいたはずだが、既に懐かしい思い出だな。


「で、その道具というのは何処にあるんだ?」

「まあまあ、まずは座ろうぜ」


 全く、せっかちな幼女だ。

 最悪魔法でもどうにかなるから、そっちを頼ってもいいのにな。

 ……まあ、メフィに頼りたくない気持ちはわかる。とんでもない対価を請求されそうだしな。


「まず、必要な道具は二つだ。月光葉と身代わり地蔵という道具があれば、石化状態を解除できるらしい」

「月光葉は聞いたことがあるが……身代わり地蔵だと?」

「入手場所はランゼルト王国と書いてあるが……行った事ないか?」

「うっ……あの国か……いや、知ってはいるが」

「な、なにか別の方法はないんですか!」


 国の名前を出した途端、二人が急に慌てだしたのは気になるが……他の方法か。

 ないわけじゃ、ないけど。


「魔法以外で、その二つを使わないとなると……巻物という手もあるぞ」

「それだ! それはどこにあるんだ!」

「まあ落ち着けって……何でも全ての状態異常を治せるというスグレモノでな、入手難易度も最大レベルで高い」

「それはどこにあるんだ! 早く教えろ!」

「魔王の間」

「え?」

「魔王の間のどこかだってさ」

「ということは、結局あの場所まで行かないとダメか……」


 別に巻物じゃないと治せない……ということでもないが、そんなにランゼルト王国っていう場所が嫌なのか。

 まあこれで三つの選択肢が出たわけだ。つくづく三つに縁があるな。


「……じゃあ、整理するぞ。石化解除する方法は三つある。一つ目は……」

「このボクがマスターと共に、君達と魔王の間まで行くこと、だね」

「ああ。でもリョウタ達は反対なんだろ?」


 話を振ると、二人共『絶対に嫌!』というくらいに不機嫌な顔をされた。

 リアンにとってはライバル(?)が増えるようなものだし、リョウタに至っては、裏切りの心配というよりも、いつ捕食されるかが心配なのだろう。


 仕方ない。リアンとの旅は諦めるか。


「二つ目だ。月光葉と身代わり地蔵……」

「じゃあ、魔王の間に行くしかないわけだな! どうせ俺の身体に会う必要があるんだ。一石二鳥じゃないか!」

「おいおい、二つ目は無視かよ」


 いや、どうしても嫌というなら無理強いしないけど。

 俺が関わることでもないんだ。確かにそのほうが効率が良いかもしれない。


「ちなみに、ランゼルト王国がダメな理由はあるのか?」


 その言葉にリアンとリョウタは顔を見合わせると、隠す必要もないと感じたのか、ポツポツと話し始めた。


「そこはな……シーシアの出身国なんだよ」

「何か問題が?」

「いや、そのシーシア自体がな……第二王女という肩書で、ほぼ家出みたいに出てきたものだから」

「連れ出したのかい。君も中々男らしいね……可愛いところもあるけど」

「っ!! いや、まあいい。それがな……」

「勇者さまが、シーシア様を攫ったと勘違いをされていて」


 なんでも、シーシアが前々から旅に出ると言って修行も行っていたが、いざ勇者と旅立つ! となったときに王様と一悶着あったらしい。

 そうして王様の怒りを買った勇者に、娘を任せるわけには行かないとかで、そのときの勇者は諦めたそうだが……ちょっと待て。


「え、勇者ってリョウタのことじゃないの?」

「勇者が俺だけだなんて、いつ言った」

「シーシアさんに聞いた話では、別の勇者さまが、何か問題を起こしたそうですよ? もっとも、私は新参者ですので詳しくは聞いていませんが……」

「全く、そいつのおかげでいい迷惑だぜ。その国に着いたら、勇者は何処にいても外道扱いさ。シーシアからの頼みで、王妃にも許可を取って連れ出したと言うのに、いつの間にか俺が攫ったことになってやがる」


 リョウタも苦労しているんだな。

 しかし、そうか。ただでさえ迫害され気味な勇者なのに、大事な娘が身代わりになって石となり、国へ戻ってきたのが勇者となると……いや、家族相手に演じるのか?

 リョウタのことだ、すぐにバレるだろう。


「そりゃあ……戻ると気まずいな。家族相手に一日中演じ続けるのか?」

「俺だってわかっているさ! だから選択肢に入れたくはないんだ。その国に行くくらいなら、そこにいる悪魔とでも契約するね」

「お、ようやくボクのモノになるかい? それは今から楽しみだね」

「ひぃっ……!」


 メフィはリョウタが許可を出したと勘違いしたのか、また昨日の定位置へと移動している。

 今はまだ、まるで人形を愛でるかのように頬を撫でたり、息を吹きかけているだけのようだか……主に真横から、どす黒いオーラのようなものを感じる。

 あれー、おかしいな。リアンの髪は栗色だったはずなのに、いつ黒髪に染めたんだろうか。


 片方はだんだんと赤く、片方はますます黒くなっているが、またリョウタが意識を手放したら困る。今のうちに話しをまとめておくか。


「じゃあ、リョウタのほうは、相変わらず魔王にリベンジか」

「んっ……で、お前はどうするんだ? 仲間に入れる気はないが、どうしても石化解除の方法が見当たらなかったら最後に泣きつくかもしれない……ひぁっ! 耳はやめろっ!」


 ……真面目な話をさせろよ。

 今のはいたずらするメフィが悪いが、直視できないくらい怖い顔をする隣の少女も、頼むから修羅場に巻き込まないでくれよ。


「まあ俺は気ままに旅をするさ。この世界の街も知らないから、とりあえず金稼ぎかね」

「ならここから近い場所だと……ローリアの街へ行くといい。この街ではギルド登録を行っていないが、ローリアの街でなら登録できる。登録さえすれば、どの街のギルドも使用できるさ」


 冒険者ギルドってやっぱりあるのね。

 でないと討伐依頼も素材集めも出来ないか。

 そもそも、冒険者という職業が食べていけない可能性もあったな。


「なんでここでは登録できないんだ?」

「それはここが初心者の集まる街じゃないからさ。ゴードンをみただろ?少なくともCランク以上の冒険者しかこの街にはいないぞ。この街の周辺には中々の強さを持った魔物も多いからな」


 要するにここにいれば安全。しかも、そこそこの稼ぎが手に入るってことか。

 それにしては、悪魔の襲撃でほぼ壊滅しそうだったが……まあいい。

 ギルドに登録さえすれば、拠点を持たずに気まま旅もいいかもしれないな。


「ところで、リョウタは何ランクだ?」

「勇者は全員Sランクさ」

「でも今はシーシアだろ?」

「うっ……それでも、リアンとシーシアもAランク冒険者だ、なっ!」

「……あの悪魔……私のシーシアさんをあんなに…………ブツブツ」

「っ! ……と、とにかく! 俺たちも一応Aランクだ!」


 一人ダークサイドに堕ちている気がしたが、さすが勇者パーティとでもいうべきか。逆に言えば、Aランクほどの実力者でないと、魔王に挑むのは無謀といったところか。

 まあAランクといっても、四天王に瞬殺される奴もいれば、一人で倒す奴もいたりピンからキリだろうな。


「Aランクもそんなに珍しくないんだな」

「街に一人は在住しているだろうが、Aランクの冒険者が三人以上集まる街というのは珍しいだろうな」

「にしては、この街はAランクがいてもピンチだった気がするけどな」

「あれは特別だ。四天王が相手なら仕方ないさ」


 あのおっさんが現役を引退してどのくらいかわからないが、あのヤラレっぷりを見るにBランクに降格したのだろうか。

 あいつの強さを考えるに、Aランクがいても勝てないというのも納得できる。


 さて、得るものは得た。あとは旅立つに向けて必要なものは……


「リョウタさん。情報料といっては何ですが、お金ください」

「あれだけ分けたのに、もう使い切ったのか!」

「あの悪魔を倒すのに、ちょっとお金の力を使ったもので」

「ボクは悪魔だからね。例えマスターだろうと、働きに見合った対価は頂戴するよ……もっとも、リョウタの場合の対価は…………ぺろり」

「……っ!! わかった、わかったから離れ……んひゃぁ!!」


 文字通りお金の力だが、そこまで説明する必要はない。

 現に、この宿泊費でほとんどの有り金がなくなっている。せめて、ギルド登録するまでのお金は欲しい。

 いざという時、メフィの魔法に頼る可能性もあるからな。


 ……さっきからお隣が静かなのが気になりますが、あともう少しそのままでいてくれよ? 


「んぅ……ふぁ……仕方ないな……本当はギルドを通さないと受け取れないモノだが、討伐報酬はまとめてやるよ。街の人を救ったのはお前だしな」

「ありがとうございます!」


 人には見せられないような蕩けた顔をして、真面目な話をするリョウタ。

 ……無心になれ。あいつは男だ。今重要なのは報酬だ。


 あの悪魔の討伐報酬……幹部と言うからには、さぞ大金なんだろう。

 渡された皮袋の重さに期待して、中身を見ると……全て銀貨?


「あ、ちなみにゴードンとかいう奴が、昨日の酒場代で金貨は全て使ったとか言っていたな」

「あんっのハゲ親父っー!!」


 ようやくこの街から出発……の前に、あの店主にはガツンと言っておくか。

 そうじゃなきゃ俺の気が済まない。


「さあ、まずは金銀の素材集めか! 荷物もこれだけだし……忘れ物は大丈夫か。メフィ、そろそろ行くぞ」

「名残惜しいけど、仕方ないね。また君に会えることを楽しみにしているよ」

「俺はもう会いたくないよ……」

「じゃあなリョウタ。また何処かで会うかもしれないが」

「あ、ああ……死ぬなよ?」

「…………リョウタは今から、死ぬなよ?」

「え? …………うわっ!」


 俺は無言で隣を指差す。

 そこには、いつからか呪詛を吐き続けるだけになった機械が存在したが、俺とメフィが立ち去るときになって、ようやく再起動したらしい。

 扉が閉まる寸前に見えた光景は、リョウタが押し倒されているところだったが……あいつと別れる最後だ。物言わぬ扉に敬礼をする。


 さて、今から俺はお金のためにお金を稼ぐ。

 この攻略本と悪魔と共に、守銭奴にでもなろうじゃないの。


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