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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第一章 悪魔の潜む街
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悪魔の修羅場

 あれから事が終わるまで傍観していると、ようやくゴードン達の男連中が起き出してきた。

 リョウタが発する悩ましい声に釣られて起きたのかと思うほど、タイミングバッチリだ。

 あいつの声には、目覚まし効果があるかもしれないな。


 いつの間にか野次馬は……減ってるより増えている?

 いや、家族連れや女性は減って、心なしか男性が増えている気がする。

 ……気のせい、だといいな。


 倒れていた男達が目覚めて、男性の比率が高くなっただけ。そう思えば何も問題はない。

 目覚めた男達も、先程の戦場に目が釘付けだ。どうなったか、ではなくて、これからリョウタがどうなっていくか、のほうの興味だろうが。


 あ、広場に放置したままだったハゲ店主も目覚めたみたいだ。


「つぅ……よぉ、あんちゃんじゃないか。無事で何よりだ」

「ようやくお目覚めで。起きたばかりで悪いが、周りの連中に危機は去ったって伝えてくれない?」

「……そうだ! 悪魔はどうした!」


 ゴードンは思い出したかのように飛び起きると、近くにあったハルバードを構える。

 っあぶね! 振り回したときに当たるかと思ったぞ!


「落ち着いてくれ! 悪魔は倒したから!」

「倒しただと! そういやそこにいるお嬢ちゃんは……そうか。はは、シーシア様がいるってことは、勇者はリョウタ様のことだったのか」


 さっきも思ったが、シーシア様って……そこそこ有名なのな。魔王の間までいく勇者パーティとなれば、この街の人が知っていてもおかしくはないか。

 でも待てよ? だとすると……目の前の光景も。


『…………あのシーシア様がっ! あんなにっ! くっ、あと少しで見え!』

『…………あの浮いてる女性も中々……あっ、あんな声をっ』

『…………うわっ、舌がっ! 糸がっ! ……あっ、ああ!』

『………………………………ふぅ』


 ……あいつら、周りに見られていることに気づいているんだろうか?

 メフィはともかく、リョウタのほうはこの街でも顔が広いだろうに。


 俺はできるだけリョウタを傷つけないように、まず周りの野次馬に散ってもらうことにした。

 俺一人では警戒されてしまっていたが、ゴードンの説明により悪魔は倒したとようやく理解してもらえた。

 さすが元Aランク冒険者だ、こういう時だけ頼りになるぜ。


「……よし、無関係な奴らは大体いなくなったな。ところであんちゃん……あれは、どうするんだ?」

「あー……時間切れか。そろそろ止めますかね」


 野次馬を散らすのに数分かかったが、メフィによるリョウタへの愛情表現はいまだ続いていた。

 メフィのほうは何か光っている……というか、ツヤツヤしたオーラが出ている。あいつも固有スキルに目覚めたのかもしれないな。

 逆にリョウタのほうは……目が死んでないか? すでにメフィのされるままになっており、全身に力が入っていないように思える。


「おーいメフィ、住民への説明も済んだし、そろそろ撤収するぞー」

「……おや、ボクとしたことが、どうやら夢中になってしまったようだ」

「ほら、そいつを連れて移動するぞ」

「ボクはマスターへ着いていくだけだが、何処へ行くんだい?」

「それは……えーっと」


 そういや、これからどうするかを考えていなかった。

 なんとなく傍にいたゴードンに助けを求める。


「……さっきの出来事を詳しく聞きたい。とりあえず酒場にでも行こうぜ…………よしお前ら! 今から酒場で祝い酒と行こうじゃないか! なーに、金は俺が出すから安心しな!」

「「「「「おおおおおおおお!!!」」」」」


「うるせぇ……」

「もちろん、あんちゃんもいくだろ? そこのお嬢ちゃん方も一緒にな」

「ああ! なんだ、ハゲてる割には気前がいいじゃないか!」

「誰がハゲだコラ」


 当初の目的から思わぬ遠回りをしてしまったが、ようやく酒場に行けるらしい。

 服が乱れたまま虚ろな表情をするリョウタを拾い、そのままおんぶする。

 抵抗もせず、なすがままになっているが……さすがにこれ以上何かするのはまずいだろう。


 隣りにいる加害者はというと、まだリョウタを触りたそうにうずうずとしている。いや、ワキワキとかもしれない。

 ……まあ約束では、今日一日だからな。リョウタの自業自得かもしれない。


 酒場へ向かう途中、何か忘れている気がしたが……多分気のせいだろう。






「ひどいですっ! どうして私だけ仲間外れなんですかっ!」

「まあまあ落ち着いて……」

「しかもっ! なんで勇……シーシアさんの服がこんなに乱れているんですか!」

「それは戦闘が激しくてだな……」

「さっきの説明と違いますよ! もうっ! それにヨーヘイさん!」

「はいっ!」

「……さっきから、妙に馴れ馴れしくシーシアさんに抱きついているこの女性は……どちら様ですか?」

「「――――っ」」


 その言葉を聞いた途端、背筋に何か冷たいものが走った。

 隣を見ると、どうやらゴードンも同じものを感じたらしい。

 リョウタはというと……まだ意識を手放したままだ。

 正確には、リアンが来たときに意識を取り戻したが、メフィが纏わりつくと同時に何処かへ旅立ってしまった。




 ……俺は今、この世界に来て初めて、人間に対する恐怖というものを感じている。


 同じテーブルには俺、ゴードン、リョウタ、リアンが座っている。

 そして、メフィはリョウタの真後ろだ。後ろから抱きつく感じでリョウタにひっついている。


 俺達が酒場に着くと同時に待っていたのは、リョウタの仲間であるリアンだった。

 どうやら悪魔が現れたという知らせを受けて、リアンは酒場で手続きやら仲間を募ったりしていたらしい。

 そして、いざ出撃……しようとしたところで、討伐完了の知らせが入り、そのまま酒場で待機をしていたと。

 いわく、全て終わったならこの酒場に集まると見込んで……とのことだったが、この世界ではそれが常識なのかもしれない。


 ただ、リョウタがぐったりとした上に、女連れとは予想外だったみたいだが。




「ボクは悪魔さ。それも、この娘に取り憑く、ね」

「っっ!! 浄化の光よ、我の元へ集え――――」

「まてまてまて! メフィもややこしくするなっ!」


 こんな状況で冗談を言うなんて、まさしくこいつは悪魔だな。

 今の詠唱によって、酒場の雰囲気が一段と悪くなった気がするぞ。


「……なあ、酒場って普段からこんなに静かなのか?」

「いや、ここまで静かなのは珍しいな……食器の音だけが響く日なんて、何ヶ月ぶりか」


 それでも何ヶ月ぶりなのか。

 思った以上にこの街の治安は悪いのかもしれない。主に痴情のもつれで。


「――質問に答えてくださいよ? ヨーヘイさん」

「……っ!! ああ、こいつはメフィストといってだな。自称・悪魔だ」


 ――ドン!


 いきなり響いた音に、俺やゴードンだけではなく、酒場中の人間がビクッと反応する。


 ……机の上に置かれた皿には、何も変化はない。

 あれー、おかしいな。さっきは何センチか浮いていた気がするんだけどな。


「――そうじゃないですよね?」

「……はい。すみません」


 誰かと聞かれたので正直に答えたが、求めている回答は違いますよね。

 心情を察するに『この、泥棒猫が!』といった感じだろう。


 メフィのやつも自称・悪魔だからって、そこまで悪魔らしくする必要もないのにな。いや、あれはただ楽しんでいるだけか。



 まあいい。今は何と答えるか、だ。

 奴の攻撃を食らいそうになったときは、自動防御オートガードさえ発動すれば助かるという確信があったが……今回は間違えると――確実に殺られる。

 こんなとき選択肢があれば、


 1『リョウタの恋人』

 2『俺の能力』

 3『知らない人』


 といった感じで表示されるんだろうか。

 これで一番を選んだならバッドエンドまっしぐらだな。

 三番を選んだ場合も気になるが、セーブ機能がない状態で試す気にはなれない。


「こいつは俺の能力の一部らしい。あの『本』を覚えているだろ? それの精霊みたいな存在だとさ」

「あの『本』ですか? 私達を守ってくださった?」

「……ああ。つまり、俺達の恩人だ」


 そう言って、リアンと共にメフィのほうへと視線を向ける。

 ちょうどメフィは、さっきまでリョウタの髪で遊んでいたようで、目線が合うと「フフーン」といった感じで勝ち誇った顔をしてきた。


「!! この人が恩人だなんて信じられません!! 勇……シーシアさんも早く目を覚ましてください!!」

「まあまあ、落ち着けって。それとメフィ、約束だから仕方ないにしても、少しやり過ぎだぞ」

「そうだね。あまり遊びすぎて、壊しても面白くないね。理解ったよマスター」


 ……こいつは悪魔だ。間違いない。

 今の発言でゴードンもリアンもそのことは理解できただろう。

 リアンなんか、言葉を失って固まっている。


 しかし、メフィもリアンも落ち着いた今がチャンスだ!


「さて、じゃあ今日はゴードンの奢りなんだよな! 腹いっぱい食うぜ!」

「お、おう……そうだな。よし、お前ら! 今のうちに注文しておけ!」

「「「「「おおおおおおおお!!!」」」」」


「うるせぇ……」


 せっかくの祝杯なんだ。

 タダ飯が食えるなら、重い空気で台無しにするなんてもったいない。

 これから2億貯める日々も待っていることだしな!


 俺は次々と来る注文に慌てるウエイトレスを眺めつつ、目の前で固まったままのリアンと、意識がないままのリョウタのことを忘れることにする。


 ……せめて、食事が終わるまではそのままでいてくれよ。

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