プロローグ
初投稿です
ようやくここまで来ました。
長かった戦いも、眼の前にいる魔王を倒せば終わるはずです。
「リアン! 俺とシーシアに回復と能力補助を!」
「はい! ミミちゃん、追い風を!」
「キェェーーー!」
「シーシアは俺に合わせて魔法を! 隙を見逃すな!」
「わかったわッ!」
「魔王を倒せば戦いは終わるんだ! ケインのためにも、ここで倒すぞ!」
「「はい!」」
ケインさん……。
彼もこの戦いに参加できていれば、ここまで苦戦することもなかったでしょう。
ケインさんがいない分、私とミミちゃんで二人を守らなければ。
「くっ……僕をここまで追い詰めるとはね」
「よし、あともう少しだ! 防御を捨てて、一気に畳みかけるぞ!」
その言葉に、シーシアさんは詠唱を開始することで、私は攻撃補助を重ねがけすることで反応します。
でも……なんでしょうか、何か違和感が。
「シ、シーシアさんっ! 何か感じませんか!?」
近くのミミちゃんも、何かに怯えて警戒しています。
でも、私にできるのは魔法を唱え続けるのみ――
しかし、何かに気づいたシーシアさんが、詠唱を中断しました。
「……っ!! ユウマ! 魔王の周辺に魔力が集まって……」
「今気づいても……遅いよ! ――パルプント!」
「しまっ……リアン、防御――!」
その途端、周りが霧につつまれました。
パルプント。
文献によれば、何が起きるのかわからないランダムな呪文のようです。
大昔の、勇者のみが使えた呪文とも言われますが、そのような言い伝えの残る呪文を使えるなんて……!
長い時間に渡る戦いにより、消耗していた私達は、避ける間もなく、その霧の中へ取り込まれてしまいました……。
……どれくらい気を失っていたのでしょう。
意識が戻ったときには、辺り一面はまるで戦いがなかったかのように静まり返っています。
近くには、ミミちゃんの依代である勾玉が転がっていました。
この場にいないことを考えると、私の代わりに攻撃を受けて消えてしまったのでしょう。
ミミちゃんありがとう……今度呼び出せたときは、存分に甘やかしてあげましょう。
今は、ゆっくり休んでください。
私は勾玉を大事に仕舞いつつ、今の状況を見てみます。
「……どうなっているのでしょう?」
壁が抉られていたり、床が不自然に陥没していたり。ここで戦闘したと思われる爪痕はありますが、周りには私以外、姿が見えません。
「たしか魔王が呪文を唱えて……それから……」
いったい何が起きたのか、検討もつかないです。
もしかして、私以外どこかへ飛ばされてしまったのかもしれません。
「とりあえず、私一人だけでも先へ進まなければ……」
ここは、魔王がいた玉座の間。
ご丁寧に、魔王の私室かと思えるような扉が後ろにあります。
私達が来ない間は、この部屋で休んでいたのでしょうか?
もしかしたら、この先に魔王がいるかもしれません。
それに今は、仲間がいません。
……怖い。
けど、みんなのために決着を。
この扉を開けなければ……戦いも終わったのかわかりません。
もしここで逃げ帰って、魔王が存命していたら……それこそ、勇者一行の名が廃るというものです。
魔王がこのまま倒されていたら……いえ、そんな甘い考えではダメですね。
補助魔法もかけ、体力も魔力も回復しました。
私一人でも、魔王を倒してみせます!
「魔王! たとえ仲間がいなくても、勇者一行の私が相手です!」
「リ、リアン! 生きていたのか!」
「あれ……そういえば、もう一人いたんだね」
「……え?」
そこには、石になった勇者様と、床に倒れている男性。
そして、彼らを守りながら戦っているシーシアさんがいました。
「――――ッ」
勇者様が、負けた。
いえ、石化なら解除できるかもしれません。私の魔法で……魔法で……私の魔法に……石化解除は、ありません。
「ゆ、ゆうしゃ……さま……」
「リアン! 呆けているヒマはないぞ! 魔法補助だ!」
「シ、シーシアさん。でも、ゆうしゃさまが……」
「俺も泣きたいが、泣くのはあとだ! この状況をなんとかしろ!」
「……はいっ!」
よく見ると、シーシアさんは魔法ではなく、苦手なはずの剣術で戦っています。
本来なら、魔法主軸の戦い方だったはずですが、ここでは攻撃魔法が使えないのでしょうか?
「魔法補助ですね! ――リフレクト! ――ツヴァイオーラ!」
「……よし、これなら!」
「あはははは! 勇者の剣ならともかく、君みたいな素人の剣になんて、当たらないんだよ!」
「くっ、やはりダメか……」
「シーシアさん離れて! ――ライトニングボルト! えっ、打てました!」
てっきり攻撃魔法が使えない空間かと思っていましたが、そうでもないようです。
これなら私も戦闘に……!
「そっか、乱入者がいたんだったね。こっちはさっさと終わらせよ」
「何!? …………ぐっ、う」
「シーシアさん!」
先程まで手を抜いていたのか、私が攻撃をした途端、魔王が何か呪文を唱えた……ような気がします。
そして一瞬。
シーシアさんが動きを止めたと思った矢先、次の瞬間には腹部へ魔王の打撃が決まっていました。
そのままシーシアさんは倒れてしまいますが、それよりも攻撃が……見えませんでした。
「さて、君は何秒持つかな?」
「……くも、……よくも、勇者様とシーシアさんを!」
「ふぅ、小細工をするまでもないか。これで終わりかな」
「――リフレクションガード!」
「悪いね! 今の僕には、防御さえ意味ないんだよ!」
「えっ、きゃぁぁぁ!!」
相手の攻撃を吸収し、そのエネルギーを反射させるはずの盾が……壊れました。
盾が破壊される寸前、回避には間に合いましたが、圧倒的な力の差です。
――敗北。
頭の中にその二文字が浮かびましたが、私にはもう、どうすることもできません。
仲間がいなけば、魔法を唱える暇もなく、防御をしても突破される。
それでもなんとか防御をして……時間を稼いで……魔王の攻撃を待って……待って……あれ?
「……待たせたな!」
見ると、先程まで倒れていた男性が、魔導書のような分厚い本? で私を守ってくれています。
突然の乱入に、魔王のほうも面を食らったようで、私と意見が一致しました。
「「……誰?」」
それが、彼……大宮 陽平との出会いでした。




