既知
人肌の温もりを感じる人製椅子に座らされ現実逃避しようとした矢先
『では今回の願いについてお話ししましょうか』
黒装束の男から声がかけられた。
(願いはただ一つ、ここで起きた全てを忘れさせて五体満足で脳もたっぷり頭に入って変な虫に寄生させず健常者のまま現世に帰してくださいお願いします)
黒装束の男は朗らかに微笑み首を横に振った。
『貴方がかけた願いはそんなことではないはずですよね、だってココにはちゃんと記録されているのですから』
(いやあのそれよりも現に戻りたいのですが)
肉塊から赤い球形になった元女子高生が持っていたスマホを取り出し、画面を見せてきた。
【異世界でオレ好みの可愛い嫁を沢山見つけて永久的にニャンニャンしたい #もしも願いが叶うなら】
『本当に叶えなくてよろしいんですか?』
黒装束の男は微笑みを絶やさず問いかけてくる。恐らく男にはそれが出来るだけの力を持っているだろう。
『【異界渡り】は私の同輩が行いますよ』
心配のタネが増えました。
『そう言えば自己紹介がまだでしたね、大変失礼致しました』
スッと立ち上がろり一礼をする黒装束。
(大丈夫です名乗らなくても知ってるのでおウチに帰してください)
誰もが安心できるような微笑みをされ、願いは聞き届けられず、名乗られた。
『白痴の魔王、絶対なる上位存在の従者にして代弁者、ナイアラトテップで御座います。少し長いのでナイアとお呼びください』
画して邪神との対話が始まりを告げた。