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家出魔王娘がダンジョン背負って嫁にきた ~勇者引退後は魔王の娘とダンジョン経営しよう~  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!


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二十一話 地下三十階はリゾート地がきた


「やったのだエスティ! もうバンバン魔力が入ってきているのだ!」



 俺は異世界に来て一年間勇者として活躍。


 それなりに地位と名声とお金が手に入ったので、ちょっと引退してスローライフでも、と街外れに大きな庭と倉庫付きの家を購入。


 広大な庭では家庭菜園でもして新鮮な野菜を育てようと目論んでいたのだが、気が付けば魔王の娘を名乗る見た目十四歳ぐらいの女の子が押しかけてきて、庭にドカンとダンジョンを作ってしまった。


 女の子はルシィと言い、お父さんと喧嘩して家出してきたらしいが、そのお父さんとやらがいわゆる魔王ってやつらしい。


 出会った日に俺はルシィと戦ったが、彼女の放つ魔力は膨大で、俺はあっさり負けてしまった。その実力は本物で、魔王の娘というのはウソではなさそう。


 彼女曰く、暗くてじめじめしたのは嫌で、明るくてかわいいダンジョンが作りたいのだ! だと。


 まぁ暗くて湿気ったダンジョンより、明るくてかわいいダンジョンのほうが入りやすいけどさ。



 畑は分かったとして、倉庫付きの理由? 


 それはアレだ、その、俺は勇者として世界を巡り、戦利品としてとても貴重な武具や秘宝を手に入れている。それらを保管するのに、どうしても巨大な倉庫が必要だったんだ。


 歴史的に貴重な物はさすがに国に預けたり、武具はパーティーを解散するときに仲間に譲ったりしたがね。


 なんとなく俺が気に入った物は残してある。


 見た目綺麗なクリスタルの剣とか、弱い魔法攻撃なら反射出来るミラーシールドとか……うん以上だ。他は俺の趣味の物だ。それは言わなくてもいいだろう? 個人の趣味であって、世間に公開するつもりもない。なぜって、全部俺のコレクションだから。


 ダンジョンオープンの日に客寄せで一部そのコレクションをオークション形式で販売しようとしたが、なぜかパーティー解散後もずっと俺のそばにいる毒舌女レオリングに鬼の形相で中止させられたけど。


 意味わかんねーよな。ちょっとお美人様であるレオリングの過去の装備品を販売しようとしただけだってのに。一週間ぐらい着用していたスカートとか。


 ほら、欲しいと思ったろ? あのレオリングが着ていたスカートで、彼女が破れたとかでゴミ箱に入れたものをこっそり回収。


 俺が丁寧に袋に密封して保存。とても大事にとっておいた物を、身を削る思いでオークションに出したんだ。全てはルシィズダンジョン成功の為。


 やましい気持ちなんて一切ない。なにせ俺は勇者だしな。


 結局激怒したレオリングに回収され、妙な誓いをさせられたなぁ。なんだったんだ、アレ。



 長くなったが、簡単に言うと冒険の一年間でレオリングが壊れた汚れたとかで捨てた装備品を回収したものを保管しておく巨大な倉庫が必要だったんだ。マストで。


 さすがに下着は回収出来なかったなぁ……それだけがいまだに心残り。それさえ手に入れば、俺のコレクションは完成を見るのではないだろうか。ああ欲しい。好きな女の下着が欲しい。ぜひ欲しい。とても欲しい。


 ──これは果てしない旅になるだろうが、いつか俺は完成したコレクションを綺麗に並べ眺め、満足気な顔で紅茶の一杯でも傾けたいものだ。


 レオリングは俺を便利な金づると思っているらしく、しばらくは側にいると思われる。チャンスはある。やってやる、俺はやってやるぞ!


 


 おっと、もうちょっとで勇者のラインを超え変態さんになるところだった。危ない。


 話を戻すが、どうにもルシィはとても話が分かる子で、敵対する人間である俺の話を普通に聞いてくれた。


 そこで俺はただのダンジョンではなく、カフェや温泉などの商業施設を併設したものを作ろうと提案。何度も来たくなるようなものを作り、継続的に稼げるダンジョン施設にすれば俺の今後の収入も安定する。


 ルシィとしてはダンジョンを成長させ、より大きな物にしていきたいそうだ。


 そのためには魔力が必要で、例えば魔法が込められた武器防具。そういうものを人間から回収したいとか。


 もちろん人間もその魔力回収の対象で、ダンジョン内で力尽きれば、その人間が持つ魔力がルシィのダンジョンに補給される。


 まぁそのへんはシビアな話だが、冒険者なんてやってる人種にはそれなりの覚悟はとうに持っているだろう。


 ルシィは自分のダンジョンに人間を招き入れ魔力を奪いたい。俺はそのダンジョンに商業施設を作って儲けたい。


 見事魔王の娘ルシィと人間の勇者である俺の利害が一致。二人は固く握手をし、先日ついに商業施設を伴ったダンジョン「ルシィズダンジョン」が完成。


 俺の勇者としての知名度を活かし宣伝。初日からかなりの混雑となり、商業施設の売上も相当なものになっている。



 そしてダンジョン開店から一週間後、家出魔王娘であるちびっ子ルシィがニッコニコで俺の腰に抱きついてきた。


「もう入れ食い状態なのだ! エスティの言う通りにやれば、餌の付いていない針にもバンバン人間がかかってくるのだ! 笑いが止まらないのだ! 父上のやり方では全然だめだったのに、ケタが違うのだー!」


 ダンジョンは今の所地下三十階を突破されていない状態。


 この辺りの冒険者のレベルは三十ぐらいなので、予想通りの結果になっているだろうか。


「やはり三十階で止まるか」


「はい~、エスティ様の予想通り、この辺りの冒険者さんのレベルではこれが限界でしょうね~。しかも場所が特殊なこともありまして、攻略にはさらに時間がかかりそうです~」


 俺の言葉にお椀に乗ったぬいぐるみ、ことサーチルが答えてくれた。


 三十階に何があるのかというと、この地下一階に出来た商業施設の水源がそこにある。いわゆる地下湖につながっていて、地下三十階のフロアはほとんど水で覆われている状態なのだ。


 いかに手練れの冒険者であろうと、足場が陸と水では話が違ってくる。


 水に入ると水棲系モンスターに地の利があり、基本陸戦向きの人間には不利となる。重い鎧や武器は水中では沈むための重りにしかならないしな。


「水場での戦いか。懐かしいな、以前面倒だったから魔剣の力で湖の水全部ふっとばして巨大亀とか倒したっけ」


 勇者として世界を回っているとき、ちょっとした山みたいな巨大亀が湖の生き物全部食い尽くす勢いで暴れていて困っているって住民の依頼で行って倒したなぁ。


 潜って逃げようとしたもんだから、湖の水全部ふっとばしてやった。ああ、去年の俺は若かった。



「今度は水を吹き飛ばすやりかたはやめろよクソ勇者。生態系を崩していた亀と、湖を消し去ったお前は同レベルだ。あのあとの事後処理にどれだけ私が手を回したと思っているんだ」


 ルシィズバル、本日のおすすめメニュー「たっぷり生クリームとフルーツのふわふわケーキ」を持ってきたレオリングが俺の隣にドカっと座る。


 いや、たしかに湖で漁とかをしていた住民が亀のせいで漁が出来なくなって困っていたのに、俺が湖ごとふっとばして地形変えたのはやりすぎたけどさ。


 あのあと激怒したレオリングに土木作業を命じられ、埋まった水源掘り返して魚とかの稚魚も放流したろ。その水源近くに過去に誰かが湖に放り込んだ金塊とかみっけて住民に還元したんだからいいだろ。


「今度って、別に地下の薄暗い湖なんて興味な……」


「あ、エスティ様~。地下三十階の地下湖エリアは魔力を源とした光源がありまして~太陽のように照らしていますよ~」


 どうせ薄暗い底の見えない地下湖で、湿度すごくてじめっとしていて……と考えていたら、お椀に乗ったサーチルが手を器用に動かしお得意の光の線で立体地図を作ってくれ解説をしてくれた。


「そうですね~簡単に言うと地上のリゾート地のような場所でしょうか。暑い魔法光が降り注ぎ、気温は常に三十度近く。エリア全体が白い砂浜に青い湖となっていまして~上を見上げると空はなく洞窟なのは残念ですが、ちょっとしたリゾート気分は味わえると思いますよ~」


「行こう。すぐ行こう。ああ、皆が苦労しているという三十階エリアを管理者として見に行かねばならない。暑いのか、仕方ないが水着を用意しなければな。暑いんだし、うん」


 俺がサーチルの話の途中でガタンと立ち上がり、攻略に苦労している冒険者達の指針にならねば、と勇者オーラを見せつける。


「リゾート! やったのだ、エスティと新婚旅行なのだ! サーチル、すぐに用意をしろー! 」


「はは~お任せを~」


 ちびっこルシィとサーチルがすぐにどこぞへと走り出して行った。準備ってなんだろうか。


 まぁいいか。俺は勇者として困っている冒険者を救いたい、それだけだ。



「なぁレオリング。新しい水着買ってやるからそれ着てくれ……」


「あ? エリア攻略に行くのになぜ水着が必要なんだクソ勇者」



 善意百%の笑顔でレオリングに微笑みかけるが、突きつけられた返事はデザートナイフが首元に、だった。







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