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家出魔王娘がダンジョン背負って嫁にきた ~勇者引退後は魔王の娘とダンジョン経営しよう~  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!


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十一話 レオリングさん料理が出来ない疑惑がきた


「あー疲れた……マジで。あと、頭蓋骨がいてぇ」



 俺の家の三十畳はあろうかという広いリビングのソファーに、各自ぐったりと座り込む。


 この家は広大な畑と、一階の広いリビングが気に入って買った。あと隣に建っている倉庫な。俺、コレクターだから。



 結局ケーキ食って、その後にルシィの服買って、強烈なアイアンクローを食らっておしまいとなった。レオリングが泊まっている高級ホテルのオープンカフェはまた今度な。



「やったのだサーチル! 新しい服なのだ、かわいいのだ!」


「やりましたねぇ~ルシフォルオーダ様~」


 俺とレオリングがソファーでぐったりしていると、家出魔王娘ルシィとお供のお椀に乗ったぬいぐるみ、ことサーチルがまだまだ元気いっぱいに騒いでいる。


 カフェでマスコットになってもらおうと買った可愛らしい服と、さすがに元々着ていた服はボロボロだったので、普段着用にも何着か服を買ってあげた。


「人間の服はとっても可愛いのだ! 父上の用意してくれるダッサイ服とはレベルが違うのだ! 店員さんに、色の組み合わせで印象が違うとかいっぱい面白いこと聞けたのだ!」


 ソファーの側の壁が一面鏡になっているのだが、そこの前でルシィが今日買った服のお披露目会をやっている。


 そういや最初に着ていた服はお世辞にも可愛いとは言えなかったか。出来は良かったのだが、それは戦闘を想定した作りで、見た目や可愛さは二の次のデザイン。


 まぁ、父が娘の安全を思って与える服としては間違ってはいないんだが。でもそれは普段着る服では……ないわな。



 買った服を取っ替え引っ替え着て、自分なりの組み合わせを考えているルシィを暖かい気持ちで見ていたら、横にいるレオリングも優しい表情でルシィを見ている。


 なんだよ、レオリングもこういう可愛い顔出来るんじゃねーか。


 いっつもムスっとした顔で怒っているからなぁ。これは貴重な表情だぜ。



「おい、帰った途端エロい妄想で私を見るのをやめろ。その半開きの口の緩んだ顔がキモいんだよ、クソ勇者」


 おっと、ぼーっとレオリングを眺めていたら気付かれてしまった。キッと怒った顔で俺を睨んでくる。


「ちぇっ、いいだろ別に。手は出していないんだしさ。お前みたいなクラスの美人は滅多に見れないんだから、目の保養ぐらいさせてくれよ」


 レオリングのきつい視線を軽くかわし、俺はソファーから起き上がりキッチンへ向かう。


「お、お前は勇者だろう! 人に憧れを抱かれる存在なんだと自覚を持てと言っているんだ! 確かにお前は有名になった。だが、ただ強いだけではお父様を説得しにく……ゴホン……」


 キッチンの冷蔵庫……ああ、この異世界にも冷蔵庫はあるんだ。氷の魔力が込められた石を使って冷やす仕組みになっている。その石の魔力が無くなったら入れ替えで石を買ってくれば、継続で冷蔵庫が機能する。


 その冷蔵庫から冷やしておいた紅茶を取り出そうとしたが、レオリングが不自然に咳をしている。なんだ? 後半のセリフ聞こえなかったんだが。



「勇者の自覚ってなんだよ。俺は別に絵本の主人公みたいな勇者を目指したわけじゃねーよ。手の届く範囲の人を守りたかったのと、お金が欲しかっただけだっての」


 異世界に来た俺には金が無い。


 ならもうこのチートクラスの魔剣使って稼ぐしかないだろ。生きるには金が必要だったんだよ。



 俺は人数分のコップを出し、ソファーの前に置かれているテーブルに並べる。


「ほらよ、紅茶だ。なんにせよ、今日は付き合ってもらって助かったよ。ルシィ、サーチル、ほら紅茶だぞ」


 レオリングの前のコップに冷えた紅茶を注ぎ、お礼を言う。ブツブツ言いながらも最後まで付き合ってくれたしな。


「ふんっ……強くてもそうやって気取らず、増長しないところは褒めておこう。クソ勇者である最低なお前の、唯一評価出来る点だ」


 そらどーも。


 俺はこの異世界でのんびり暮らせればそれでいいんでね、高望みはしないんだよ。勇者として活動してそこそこ金も稼いだし、こうやって家も買えた。結構満足している。


 まぁ、さすがに貯めたお金は減っていくし、たまには活動しなきゃな……と思っていたが、ルシィのダンジョン計画に乗っかれば結構稼げそうだしな。カフェとか色んなお店を手広く仕掛けて、長く稼げる仕組みを作ってやるのさ。



 レオリングは俺のこと金ヅルと考えているらしいが、ダンジョン経営がうまく行けば、しばらく俺の側にいてくれるんだろ。


 正直こいつがいないと俺の弱点である、素早い相手に対処出来ない、をカバー出来ないからな。出来たらパートナーとして長く側にいて欲しいものだ。


 あとこいつ、すっげー美人だから、カフェのいい客寄せになるんだよな。なんだか街ではこいつのファンクラブなんかもあるみたいだし。

 レオリングは俺を金ヅルとして利用しているんだし、じゃあ俺だってレオリングをダンジョン、カフェ経営に利用したっていいだろ。



「うはー! 美味しいのだー! エスティこれ美味いのだ! お店のと変わらない味の飲み物なのだ!」


「ですねぇ、結構お高い茶葉ですね~これ。さすがエスティ様です~」


 ルシィとサーチルが紅茶をガッポガッポと飲み干し、おかわり、とコップを差し出してくる。

 ああ、この紅茶は街の結構いいお店から買ったお高い奴なのさ。俺、紅茶にはうるさいんだ。



「さーて、もうすぐ夕食だが……お腹はすいていないな。でもまぁ、軽く何か作るか」


 俺は再びキッチンに向かい、冷蔵庫を漁る。葉野菜に根菜、昆布みたいなダシが出る海藻を水に入れてあるダシの元があるか。


 適当に煮て塩振って味付けすりゃいいか。あとは街で買っておいたハムが結構残っているな。これも切って焼こう。買い置きのパンもあるし、簡単に出来そうだぞ。



「どうするレオリング。お前の分も作るか? 時間は十八時過ぎだが、ホテル帰るか?」


 一応人数分はいけそうだが、レオリングは高級ホテルで豪華にいくんかね。


「クソ勇者、お前料理出来るのか。そ、そうか、お前はここで一人暮らしだものな。ふ、ふーん、な、なかなかやるじゃないか」


 振り返ってレオリングに聞いてみたが、驚きの顔で見られた。


 そりゃー料理ぐらいするっての。一人暮らしなんだぞ。外食もするが、基本自分で作っている。まぁ、煮る焼く程度の簡単なものだがね。



 なんでレオリングは俺を見て、負けを認めたくない感じで震えているんだ? そういやこいつ、料理しているところ見たことないな。勇者として一年一緒に活動したが、お店で食べるか俺か他のメンバーが用意した物食べていたな、レオリング。



 今だって高級ホテルで暮らしているみたいだし……もしかしてこいつ料理出来ないんじゃ?






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