07『恐怖の306号室』
『恐怖の306号室』
どうもです。
僕はNです。遠藤君の友達でもう大人です。
僕は大学を卒業して、某会社に就職しました。妻とは高校から一緒で元いじめられっ子のKさん、その後も同じ大学を卒業と同時に結婚した新婚です。新居として駅前に近い格安のマンションを購入して暮らしてました。僕は会社で仕事をし、妻も駅前のスーパーでパートをしていました。
帰る時間がほぼ同じなので、一緒に駅前のレストランで夜食を食べて、家に帰る頃には、夜中の1時を過ぎていました。
半年くらいして、妻が妊娠をしてパートを休み、僕も会社を休んで、妻の実家で寝泊まりをしていました。マンションの管理人には、事情を説明して暫くの間、部屋を空ける事を告げると、管理人がこう言いました。
「ねぇ、この部屋、少しの間、貸してくれないかな?」
僕達が実家に帰っている間に、若い男女のカップルが部屋を借りたいと言う事なので、僕の部屋【306号室】にカップルが引っ越して来ました。
居間のタンスの上に双子の日本人形(2つの人形)が飾ってあり、【女】が気持ち悪いと言う事なのでその日本人形を箱にしまって、押入れの中に入れてしまったのです。
その日の夜、二人は寝室で寝ていると、午後11時35分頃にベッドの隣の壁から、
ガサガサッ…ガサガサッ…
と音がしました。
「う~ん 五月蝿いな~」
と【男】はそう思いながら眠りました。
次の日の夜も、寝ていると午後11時35分頃に、音がしました。
それが数日間続いて、さすがに【男】は原因が何なのか知る為に、寝室の壁の向こうを見に行きました。その時、【男】はこう思いました。
「ちょっと、待てよ。この部屋の寝室の壁の向こうには何も無い筈だぞ!!」
そう、彼らが住む【306号室】は、3階の一番端で、それ以降は外に出てしまい、各階には部屋が6つまでで、6番目の部屋の寝室の内側の壁はマンションの外壁となり何もない。しかも、ここは3階なので、音をたてる所などもないのです。
「おいっ! マジかよ!」
でも、気のせいだと言い聞かせて、そのまま住み続けました。
ある日の夜、午後11時35分頃に音がしましたが、しかし、以前とは様子が違いました。
ドンドンッ…ドンドンッ…
もう、気のせいとかのレベルではありません。【女】が音のした壁を見て、【男】に言いました。
「ねぇ? な、何アレ・・・」
【男】が壁を見ると、黒い模様のようなモノが浮かび上がっていました。二人は咄嗟に寝室から出て、居間で電気を点けて震えてました。
「おいっ! 本当、ヤベェ~よ。」
と【男】は言い、
「何なの! アレ!」
と【女】は興奮気味に言うと、全ての電気を点けて一夜を明かしました。翌朝、二人は目が覚めると、寝室のベッドで眠っていて、壁の黒い模様ももうありませんでした。(電気は消えていた)【男】は少し強い口調で【女】に言いました。
「ほら、なっ! 夢だよ! 夢!!」
「・・・うん。」
【女】は気の無い返事で返しました。
翌日の夜も二人が寝室で寝ていると、午後11時35分頃に、音がしました。
ドン!ドン!ドン!ドン!
その音に二人が起こされて、身体が動けなくなりました。
「か、金縛りか?」
と【男】は思い、【女】は壁を見たら、
「・・・っ!!」
【女】は絶句していました。
壁に浮かび上がってきた、黒い模様が人影になってきて、黒い人影の手が、ヌウッと出てきて、二人は恐怖のあまり気絶してしまいました。
次の日、二人は管理人に事情を説明してみると、管理人はこう言いました。
「え? あんたらの前に住んでいた夫婦は、何事もなく普通に暮らしてたよ。」
「・・・えっ!? 嘘?」
【男】は大変驚き、管理人に僕の所まで連絡させて、事情を説明しました。
連絡を受けた僕は友達の遠藤君と一緒に【306号室】に行きました。
遠藤君はその時は警察官(刑事で警部補)で、心霊現象研究家や霊能力者などの間でも、大変有名で顔が利きました。
僕達は【306号室】の部屋に入ると、遠藤君がある事に気づき、僕に言いました。
『おや? 私が君に渡したあの日本人形はどうした?』
そういえば確かに、居間に飾ってあった筈のあの双子の日本人形が無いので、僕は【男】に聞きました。
何でも【女】が気持ち悪いと言うので、押入れの中にしまったと言うと、遠藤君が【男】に言いました。
『あの人形には、魔除けの力が施されていて、邪気を払ってくれる。 大変、力のある人形だから寝室に置いておけば、大丈夫だ。 悪魔・悪霊は襲って来ないはずだよ。』
遠藤君は【男】に双子の日本人形の持つ不思議な力を説明して、飾って置くように指示をして、僕達は帰りました。
しかし、その日の夜、【女】がその日本人形をやはり嫌っていた為、出さずにそのまま、眠ってしまいました。
午後11時35分頃に、"それ" は起こりました。壁の音で二人は目が覚めて、金縛りで身体が動きません。
また壁から人影が現れ、黒い手が壁から出てきて、【女】の顔を触り始めました。【男】は遠藤君の言う通りにしなかった事を、後悔しながらも必死に身体を動かそうともがき、ベッドから落ちて這いずって匍匐前進のように進み、押入れに向かいました。壁の人影から女の黒く長い髪の毛のようなモノが、【女】の顔にかかり、【女】は既に失神寸前でした。
「最早、ここまでか!!」
【男】はそう思い、意識が遠退きそうとした時、
「ギィァアアァーーッ!!」
と【女】の凄まじい悲鳴が聞こえ、【男】は意識を取り戻しました。
壁から女の顔が出てきて上半身が出ている状態で、両手で【女】の首を絞め始めました。
【男】は匍匐前進の状態で後ろを振り向き、"それ" を見て、最期の力を振り絞って、押入れを開け、日本人形が入った箱を取り出そうとした瞬間、
ドォーン!!
と壁から出てきた黒い女の人影が【男】の背中に乗り、こう言いました。
『うふふふ、そうはさせないよ。』
翌日、【306号室】で男女二人の死体が発見されました。【女】はベッドの上で仰向けで絞殺、【男】は押入れの中の日本人形が入った箱に手をかけたまま、首が切断されていました。
当然、犯人はいません。何故なら、遠藤君には全てが視えていて僕に説明してくれました。
そして遠藤君は僕に言いました。
『もしかしたら日本人形の持つ力が、悪魔・悪霊の行動を速めたかもしれないな。』
僕達、家族は今、双子の日本人形と一緒にまた別のマンションに引っ越して住んでいます。




