10『警察署を脅かす怨念』
『怨念の捜査』
こんにちは。
どうも、私は遠藤です。
この話しは私が仕事で、ある所轄の警察署に行った時の話しである。
仕事といっても捜査とかの行動ではなく、ある事件の調書など書類や遺留品などを調べる用事があった為、その事件の管轄だった警察署に出向いていた。それはあるムシ暑い夏の時期の出来事であった。
その日の夜、署内の一室を借りていて調書を読んで調べていたのだが、その時、廊下で突然、何かの物音がしたので、きっと誰かが通ったのだろうと思い、気にしなかった。
暫くして、その内に、署内のアナウンスが聞こえて、何処かで何かの事件があった事を伝えると、署内では一斉に、
ドドドドドドド…
と大勢の足音が、聞こえてきていた。
だが、私にはあまり関係がない事だったので、気にせずに調書を読み続けて調べていたら、何処からか、いきなり大声で、
『ちくしょー~っ!!』
と誰の声かは解らんが、異常に低い男の叫び声が聞こえてきていた。
私は驚き、ビックリして慌てて、廊下に出て周囲を確認したのだが、やはりそこには、誰もいなかったのだ。
私は再び一室に戻り、作業をしていて調書の書類整理や調査などが終わる頃には、署員の皆が事件現場から戻ってきていて捜査会議を行っていて、どうやら殺人事件のようである。
そして私は全部の作業を終わらせたので、帰ろうとしたら、また突然大声で、
『ちくしょー~っ!!』
とまた誰だか解らんが、異常に低い男の叫び声が聞こえてきていた。
今度は署内にいた全員が驚き慌てて、一斉に廊下を出て周囲を確認したようだ。
しかし、また特に異常はなかったのである。
署内の皆も気のせいだと思い、気にしなかったようだ。
翌日、ある刑事が私がいる警視庁まで訪ねて来ていた。
その刑事は昨日、私が来ていて署内には例の不気味で不可解な男の大声が聞こえていて、丁度同時に殺人事件が起きていた警察署の刑事であった。
その刑事は昨夜の出来事を私に話してきた。
「いやぁ~ 昨夜はうるさくて、仕事になりませんでしたよ~。 遠藤さんも聞きましたよね? ホント、一晩中、うるさかったですよ!《ちくしょー~っ!!》ってね。」
『ああ、まったくだな。』
「なんですかね? あれは・・・?」
殆どが愚痴であった。
なので、私はその刑事に聞いてみた。
『・・・で、あの後で、他に何か起きたのか?』
「はい、その後で何人かが署内で仮眠をとっていたそうですが、何でも金縛りにあったと聞きました。」
『・・・ほう』
「ま、まさか幽霊とかじゃあぁないですよね?」
『・・・』
「じょ、冗談じゃないですよ! け、警察署に幽霊が出るだなんてっ!」
その刑事は明らかに動揺していた。
『・・・』
「バッ、バカバカしいぃ! 失礼します。」
その刑事は私に言いたい事だけ言って帰っていった。
彼のストレスは発散てきたのだろうか。
後日、あの刑事から彼がいる警察署に来てくれ、と私の所に連絡があり、行く事にした。
そして、彼のいる警察署に着くとあの刑事が待っていて、私にこう言ってきたのだ。
「ああ、お待ちしていました。 大変な事になりましたよ。」
『・・・一体どうしたのだ?』
「いやぁ、あの後、高僧住職のお祓いやお寺の御札とかを色々やったんですがっ! まったく効果がなくて・・・」
『・・・?』
「あの薄気味悪い男の大声がまったく消えないですよ!」
『なんだとっ!?』
「いやぁ、捜査や仕事があるのに署員の者たちもまいってしまっていて、体調を崩したり、精神が病んだりして、休む者も多く出ていて、とても仕事にならなくて困りましたよ。」
『なんと!!』
「もう、どうしたらいいですか? 遠藤さん」
その刑事はまた私に言いたい事だけ言ってきていた。
『・・・そうか』
私はその刑事と一緒に署内を見て回り、一つの可能性をその刑事に意見してみた。
『これはもしかして、呪術の一種かもな。』
「え? それは一体?」
『今、殺人事件の捜査をしているよな?』
「はい そうです」
『ふむ、殺された者が殺される以前から、特定の人間だけに呪術を施していて、自分自身が死ぬと死後に発動する仕掛けのようだな。』
「・・・え?」
『ふむ、おそらくは、相当強力な呪術で怨念が強すぎる為に、この署内全体に影響を及ぼしているという事だな。』
「そ、そんな バカな・・・」
『つまり、その特定の人物を探す為に、怨念となって現れたという事だな。』
「え? マジですか?」
『ふむ、こいつは強烈な呪術だぞ。 そして、この呪いの元凶となる人物がこの署内に居るな。』
「・・・?」
『だから、この殺人事件の犯人である、この署内の男性警察官を逮捕する事で、この怨念はおさまって、消えるはずだ。』
「えぇ~~~っ!?」
その刑事は、凄く驚いていた。
『まぁ、試しに調べてみるといいよ。』
「・・・」
私はその刑事に、そう言うと帰っていった。
後日、その殺人事件の犯人はやはり、その警察署の署員である、ある男性警察官である事が捜査で判明して、遂にその彼が自供して、証拠も見つかったので逮捕したと同時に、今まで署内で起きていた不気味で不可解な現象もピタリと止まり、なくなっていたのである。
その刑事は、今までは幽霊や心霊現象など信じなかったようなのだが、今回の事で少しは信じるようになったらしく、時々は私の所に相談に来るようになったのだ。
「すみませんでした。 また宜しくお願いします。」
とその刑事がそう言うと、私は帰っていった。