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一章……舞台設定


・【黒百愛(クロヒャクアイ)町/(旧)黒百合淵(クロユリフチ)

 

面積、64.49k㎡

総人口、約13000人


鎮守(ちんじゅ)天遣恵比(てんけんけいひ)啓灯慈(けいとうじ)


 町のフレーズは、

【――歴史と共に歩み、古の伝承を重んじる望郷の土地、黒百愛(クロヒャクアイ)


【――深い百の愛が溢れる、自然と伝統と安らぎの土地、黒百愛(クロヒャクアイ)


 (旧名)黒百合淵(クロユリフチ)。黒ユリ、ユリ科の高山植物。黒ユリは花言葉の1つに“呪い”という意味が有り、その見た目や、虫を惹き付ける独特の匂い等の理由もあってあまり良いイメージを持たれない花。(ふち)、淵とは水が深く淀む場所のことであり、辛く苦しい境遇のたとえとしても利用される言葉。……黒百愛町の旧名は、そんな少々縁起の悪い印象を受ける地名であった。近年になり“土地の開発”や“地域おこし”に伴うイメージアップの目的から、黒ユリのもう一つの花言葉である“恋”そこから転じて“愛”を元々の地名の“合”の字に当て、黒百愛(クロヒャクアイ)と改名される。

(※改名後も昔ながらの名前を変えずに残そうという住民からの意見や新しい町名への反対も多く、地図等では改名後の黒百愛町と表記されるものの、未だに地元では元の黒百合淵という地名の方が広く利用されているようだ)


 ――黒色からイメージされる、深く包み込むような安らぎと穏やかさ。それが幾百の愛情を(つちか)い、人の(いと)みは、(いにしえ)の時代から次世代へと受け継がれて行く。黒百愛。そんな人々の思いがつまった優しい町。


 観光、移住。交通の利便性さえ気にしなれば自然豊かで景観良し、地域のイベント多し、古の伝説残る名所、数々の国の登録有形文化財や登録記念物といった見所のスポットも点在し、宿泊施設も十分に有るので観光的なポイントが非常に高いのが魅力。近年は住民の高齢化等による過疎化や人口の流失対策、移住を促す事を目的とした行政と自治体の取り組みである地域サービスの充実や、公共施設の無償化、特別給付金制度、特定指定地域における一部の“納税の免除”等といった政策の指定範囲内であることもあり、この土地で暮らす事での旨みも多く有り、田舎といえば田舎なのだが“住めば都”を体現した町だと言える。


 土地開発。上記、交通の利便性が問題として上げられるのだが、現在進められているプロジェクトにより、数年後には黒百愛から隣街までをトンネルで結ぶという大規模な計画が有る。この計画だが、元登録文化財の候補であり、地元民から霊的な神秘が信じられてきた“祈津畏(キツイ)山”という霊峰の中心部を“大きくくり貫いてしまう”という事で国や住民からの強い反対、関係者やその周りでの不吉な事故の多発、更に計画の当初よりプロジェクトに力を入れていた町長の不祥事及び汚職疑惑による解任、といった立て続けの障害やトラブルも存在したのだが、様々な努力と調整や決議の結果、概ね計画は実現可能な段階まで来ており。将来的には交通の利便性は改善されて、より黒百愛の発展に繋がる事だろう。


 黒百愛の名産品は山葵、蓴菜、燕尾草等地味なものから、黒百愛特有の信仰と密接に関わり独自に発展した工芸品の数々のような色物まである。お土産には、“黒百合淵山葵饅頭”がオススメ。


 ……さて、最後に。この黒百愛を語る上で欠かせないのが、上記でも触れた“古の伝説”である。最も有名であり、()つ土地神信仰の要となっている【天女伝説】その“伝説の天女”が鎮守(ちんじゅ)となったという【天遣恵比(てんけんけいひ)啓灯慈(けいとうじ)命】に関わる更なる伝説や“黒百合淵”という土地の旧名の所以であると(うた)われる、地に溜まった厄と人々の浅はかさに(まつ)わる数々の物語を(つづ)った【黒百合淵伝説/変災百伝奇潭】等、それらは多すぎて語るに事欠かない。今回は文字数の関係から省くものの、要望が多ければ次週以降にコーナーで紹介したいもの。



『――というわけで、突然ですがッ!!

この“黒百愛”のコラムを次週からこのコーナーで紹介していくこととなりました!! いや、本当に突然……(汗) とにもかくにも私、直接、この黒百愛に行って、体験して書きますのでッ。読者の皆々様、どうぞお楽しみに!! (……クソ編集長め、こんなド田舎に取材の名目で数ヵ月も飛ばすなんて、酷すぎる。横暴だ。有り得ないでしょ、普通に苛めでしょ。私が使えないからってあんまりじゃないのっ? コラムが読者の皆々様に評価して頂ければ、私も評価されて、東京の部署にさっさと帰れるんです。どうか、どうか、どうか何卒、宜しくお願い致しますっぅ!!!』


    執筆――但野(ただの)貴沙(きさ)


※都市週刊誌のコラムより引用。


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