青
海だと思った。
「……青」
視界一杯に青い花が咲き誇っている。それが風になびき、まるで波のようにさざめいている。空を見上げると雲一つない快晴で、目の冴えるような景色が広がっていた。
この草原は俺のお気に入りの場所だった。もっと言えばこの青い花が咲く時期、加えてこんな青空の日のこの場所が。
「綺麗だなぁ……」
世界にはこんな美しいものがあるのだと忘れないように、俺は目に焼き付ける。
ふと、側にそびえ立つ木々が目に入った。この時期は葉が繁っており、少しでも陽の光を浴びようと腕を伸ばしている。俺は空を仰ぎ見ると時たま目につくそれが嫌いだ。世間が言うような緑色など見えやしないからだ。
俺の世界は青だけが見えている。
もしも自分が色盲だったら、もっとつまらない人生を送っていたはずです。でもそうじゃないので、今の自分は十分幸せなのだと思います。きっと。