第6話 定番範囲を試してみよう
遊ぶように確かめながら使った一般的な「魔法」で、使えないものはなかった。とはいっても、やったのはせいぜいが手のひらサイズの水球や光球を使ってのちょっとした実験。
この「魔法」が、ライトノベルなんかでよくあるように「魔力」を使うのなら、遊んでいるうちに魔力切れを起こしてさっきみたいな魔物(?)と接近、遭遇。また命を懸けた鬼ごっこなんかしたくない。というか、次はたぶん逃げられない。私、持久力とか持続力とかないし。
「魔力量とか、『有限』か『無限』かは部屋に戻ってから調べるとして、後はこの魔法が『標準』か『異端』か調べる必要があるかな……よくあるアイテムボックス系とか、移動系も部屋に戻ってから。肉体強化系は……これも後回しでいいか」
ぶつぶつと呟きながら、即座に調べなくてはならない事と、そうでないことをより分ける。魔力残高は調べなくてはならないものの筆頭ではあるが、とりあえず今のところ切れていない。
どういった幸運か、それともこの世界では通常かは分からなくても、とりあえず命がけで魔力量を調べたくはない。今、使えること以上に重要なことはないのだし。
「魔法自体は有効ではあるんだよね……とりあえずモモンガ熊とオオカミ相手には。後は探索系と解析系……魔法が使えるんだから、体を張って食べるもの探したくはない」
呟きながら、うんうんと頷く。魔法で水を出すことはできたので、とりあえず水場の確保は重要度が下がる。食べ物の確保が第一。次に部屋に戻って魔力量の確認。そちらの優先度の方が高い。
とりあえずは――
「『探索』」
イメージしたのは、単純にマップ。ここがどこか、近くにあるコミュニケーションが取れる生命体の反応と、食べれるものの有無。
大雑把に近いが、どれかしらに反応はあるだろうと唱えたのがそれだ。
反応がなければ、言葉を変えて探してみようと特に深く考えないで唱えたはずだったのだけれど……。
「……知的生命体に反応あり? ここから結構近い……あ、途中に食べ物の反応もある」
多大な期待をせずに使った探索に反応があった。知的生命体、ということで人間とも友好的とも限らなかったが、とりあえず近づいてみることにした。
「というか、探索とかも使えるんだ……分類ってどうなってるのかな? 風? 属性無し? それとも日常系の誰でも使えるお手軽魔法とか」
ぐるぐる悩みながら足を進めて、とりあえず食べ物の反応があったところで止まる。辺りを見回して、特に今までと変わったものがなかったので上を見る。
「……また木登り……?」
今まで周りに生えていた木とそれほど変わったように見えなかった木には、まるでペンキで塗装したかのような真っ赤に輝く実がいくつも実っていた。
「……りんご? ……いや、違うよね。なんだろう……『探索』」
迷いつつも探索を使ってみる。けれどやはりというべきか、さっきと同じ知的生命体の反応と、目の前の食べ物の反応しか示さなかった。
「やっぱダメか……うーん、じゃあ『解析』?」
【ポムナ】
食用の木の実。水分を多く含んでいて、シャキシャキとした触感で好まれる。赤いものは糖度も高く、食べごろ。
緑、黄、赤、茶と色を変化させる。茶のものは人体に有害。
「あ、すごい。本当にできた」
疑っていたわけではなかった。でもちゃんと付いた説明に、思わず声に出していた。
「……で、どうやって取ればいいのか……」
部屋に戻るために木登りをしなくてはいけない。……だいぶ走ったから探しながらになるかもだけど。や、探索使えば意外と簡単に見つけられるかもだけど。
とにかく木登りはしたくないので、それ以外の方法……と考えてすぐに浮かんだのはラノベで定番な方法だった。
「……『浮揚』」