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名も無き世界 VRMMO編  作者: 有加田 慧条
序章、或いは始まりのハジマリ
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雷獣戦 ≪前哨戦≫

調子が良かったので、お詫びも含めて二連投稿!

扉は、俺が一歩踏み出すと自動的に閉まった。

しかし、俺にはそんなことを気にしている余裕などなかった。

なぜなら、広間のような巨大な部屋に入った瞬間、強大なプレッシャーが俺に叩きつけられたからだ。

その部屋のちょうど真ん中にいたのは、身長が目算で二メートルはありそうな、金色に輝く金属鎧をまとった騎士だった。

カーソルを当ててみてみると、それは『騎士エイベルク』というモンスターだった。しかし、俺の目を引いたのは名前の上に並んでいる、ボスという二文字だった。


「ボスモンスターなのか…」


おそらく、このクエストは1Lvのプレイヤーが八人のパーティーか二十四人以上のレイドを組んで戦うことを想定したモンスターだったのだろう。

クエスト『チュートリアル』を受けると少なくとも2Lvにはなると直からきいたことがある。そこでレイドの組み方を教わるか、レベルを上げないとレイドに参加できないと、ネットに書いてあった。

しかし、1Lvクエストであるのなら、俺でもダメージは通るということなのだろう。


ほとんど不可能なことではあるが、俺はボスモンスターをソロ討伐することにした。


「少なくともこいつは雷獣って感じがしないからな。たぶん前哨戦ってことなんだろう」


そういって気を引き締め、一歩踏み出す。

すると渋い中年のおっさんのような声が広場に響いたので、俺はカーソルを合わせ、騎士を見た。

「貴様の名はなんと言う。」

「俺はエデンだ」


俺が言葉を返すと、まるで侵入されたことに喜んでいるかのような響きの声がエイベルクから発せられた。


「そうか。貴様はこの奥にいる雷獣に戦いを挑むつもりか」

「ああ、そうだ。」

「ならば、貴様が奴に挑むにふさわしいか、試させてもらおう!」


騎士が叫び終わった瞬間、目の前にエンカウントの文字が並ぶ。それと同時に俺は詠唱を開始した。とりあえず撃つのは、雷系統の中でも命中率重視の『サンダーランス』。発動し、騎士に叩き込む。

一瞬のノックバックの後、ダッシュしながら距離を縮めてくる騎士を見て次の詠唱は間に合わないと悟った俺は、片手剣を構えた。

その二秒後、さっき戦ったチャラ男とは比べ物にならないほどの速さで両手持ちの大剣が振り下ろされる。

右に体を回転させながら回避、武器の振り終わりの一瞬の隙を突いて、騎士の腰の鎧の隙間に剣を振り下ろす。

リアルでやれば骨折間違いなしの回避法だが、こちらの世界では1Lvでもリアルの体を上回っているようだ。

そのまま剣を振り切り体を地面に投げ出すようにして、騎士の振り向きざまの攻撃を躱す。踏み潰そうとしたのか片足を振り上げてきたので、もう片方の足に蹴りつけ体勢を崩す。

一瞬の隙を、今度は自分で作り出して立ち上がりながら、上から振り下ろされた大剣を躱す。そしてできた隙を突いて、片手剣スキル熟練度15で使えるようになった『トリプルスラッシュ』を発動。

剣を振り切った状態の騎士のヘルムに立て続けにヒットさせる。

さすがの騎士もこれはきつかったらしく、牽制のように下から振り上げられた剣を俺は最低限の動きで右に躱し、後ろに下がろうとしている騎士のヘルムの目の部分の隙間に片手剣初期の突きスキル『スラスト』で剣をねじ込む。どうやらクリティカル判定が出たようで、派手なライトエフェクトを散らしながらお互いにノックバックで距離を開いたが、俺の表情は優れなかった。

これまでの猛攻でも、騎士のHPバーはイエローゾーンの残り4割といったところだ。

確かにこちらのHPは満タンだが、あの大剣の一撃を食らえば半分は吹っ飛ぶだろう。

さらに、ボスはHPが減れば減るほどに全ステータスが強化されるようになっておいて、さらに全てのボスモンスターは、HPがレッドゾーンになると特殊なスキルを発動してくる……とネットで読んだ。

おそらくこのペースだと俺の最高に一撃でも、レッドゾーンぎりぎりのこの騎士のHPでも、削り取るのは相当厳しいどころではない。

今のボスとは、1Lvの相手のためなのかスキルを使ってこないのと、俺のスキル熟練度、恐らく発動しているであろう『下克上』の三つによってどうにかやりあえているが、レッドゾーンに入って騎士が万が一にでもスキルを発動できるようになれば、この差はあっけなく覆されるだろう。


「しょうがない。一度は避けるか」


こちらには一応『スキルドッジ』があるから何とかなると思う。

モンスターやプレイヤーの総HPは二割半をきったところでHPバーが赤に染まる。

それならいったん離れて魔法を打ち込みたいところだが、おそらく一回魔法をうてても最初とは違い、その隙に接近されて魔法を打った直後に大ダメージを食らうだろう。


ならば、接近戦で斬りつけるしかない!


「せやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


覚悟を決めて、全速力で騎士に向かって走り出し、直後に振り下ろされた大剣の一撃を武器防御で受け止める。

どうにかダメージゼロで真上に大剣を跳ね返し、がら空きの胴をスキルなしで十字に斬りつけ、蹴り飛ばす。

大したダメージは与えられなかったが、助走つきの蹴りでAGIも反映されたらしく騎士がよろめく。

その隙に残り二割七分ほどの騎士のHPがぎりぎりレッドゾーンに入らない程度に軽く斬りつけ、今度は右上から左下へと振り下ろされる剣を後ろに宙返りしながら避ける。

そして一瞬のお互いの硬直の後、俺は勝負に出た。


「『ランスラスト』」


体が一気に前に押し出され、お互いの間の二メートルを瞬く間に走り抜け、胴にAGIも乗せた全力の突きを食らわせる。このスキルはSTRが威力、AGIがスキルの距離に反映されるために俺にとってはかなり強力なものだ。

騎士は大剣で防ごうとしたらしいがあと少しのところで間に合わず、胴に思いっきりスキルを食らう。そのまま騎士を一メートルほど後退させてスキルがとまった。


「ヴオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ」

騎士のHPが赤に染まり残り一割ジャストになるのを確認したスキル後の硬直状態の俺は、騎士が叫びながら剣を振り上げ、そこに真っ赤なライトエフェクトが集まっていくのを見た。

この世界のスキルには、どんなものでも下位スキルではライトエフェクトは弱い。

逆に上位であればあるほどに強力なライトエフェクトが発生するということになる。

光の強さから見るに間違いなく中級以上であろうスキルに対し、俺は至近距離で回避することを選択した。


スキル硬直が解け体勢を元に戻した俺に向かって真っ直ぐに振り下ろされる大剣を、左への軽いステップでかわす。

その一瞬後に右から左へと地面と平行に振られる剣を俺はかがむことで回避し、さらに左から打ち出される突きを真上に飛んで回避する。

さらに空中で身動きの取れない状態の俺に向かって右から打ち出された突きを、迫りくる剣にわざと武器防御を発動させつつ右手に握っていた剣を当てることでノックバックを発生させて、スキルドッジの効果が切れたせいか髪を何本か持っていかれながらも回避。

今のだけでHPが三割減ったことで、おそらく次の一撃には武器防御でも耐え切れないと悟った俺は、これまでで最大の速度で真正面から振り下ろされた大剣をかわしきることすらできないと気づき、そして騎士とヘルム越しに目があった。

まるで笑うように目を細めた騎士に対し、俺も笑い返した。

俺は剣を自分の前に掲げた。

一瞬の後、お互いの剣が接触し、大剣に込められた恐ろしいほどの威力が伝わってきた。

加速された意識の中、俺は剣の威力に逆らわず、ゆっくりと自分の剣を右にずらしていく。その流れに巻き込まれた騎士の剣がゆっくりとそれていくのを感じながら、唐突に意識の加速が途切れた。

騎士の大剣は俺を傷つけることなく右側の地面を大きく抉った。

剣が纏っていた赤いオーラは消え、スキル後硬直状態の騎士に向かって、俺の中で最大威力の三連撃スキル『トリプルスラッシュ』を胴に打ち込む。

一撃目でHPが六分になり

二撃目でHPが三分五厘残り、俺の頬に汗が流れた。

足りない。

このままでは騎士のHPが何ドットか残ってしまう。

そうなればスキル硬直状態の俺にあの大剣の一撃が打ち込まれるだろう。そしておそらく俺の残りのHPでは耐え切れない。

残りのHPを削りきるにはクリティカルヒットを当てるしかないが、胴の部分ではクリティカルは発生しない。

どうする………!?

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