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名も無き世界 VRMMO編  作者: 有加田 慧条
序章、或いは始まりのハジマリ
11/26

現実

急展開です!!


え、どこかで見たことあるって?

…………………。

 辺りを見回すと、そこはどうやら【始まりの町】の中央の広場のようだ。

 ほんの三時間ほど前にこの町から出発したのに、今では一週間くらい出ていたような気がする。

 

どうやらさっきの光は転移の時のフラッシュだったようだ。

ほかのプレイヤーたちもここに転移したらしい。

しかし、このゲームに今参加しているのはゲームが始まって五時間でも、合計二万五千人は下らないと思われる。その割にはやけに人が少ない気がする。だいたい三千人くらいではないのだろうか。

とりあえずみんなと合流すべきだと判断した俺は、頭の中でメニューを開く。

まさかと思ってログアウトの項目を見てみたが、しっかりとそこにあった。少なくとも今は大丈夫なようだ。

とりあえずフレンドリストを開いて直、フィーネ、ミルシェと連絡を取る。

少なくとも今は周りのプレイヤーにはたいした動きがないから、合流するならチャンスだろう。

メールで広場の中央にある塔のそばに集まろうというと、すぐにメールが帰ってきた。

フィーネとミルシェはどうやら同じパーティにはいったままのようだ。

三人はみんなこの広場にいるらしく、すぐに集まるという反応が返ってきた。

あたりのプレイヤーを押しのけながら塔へと進んでいく。


塔についてからすぐに直が来た。

ごつい鉛色の鎧に170cmくらいある戦盾を背負っていた。


「おい、直これが何なのか知ってるか」

「いや。イベントかなんかなのかなあ」

「それはないだろう。周りの人数が多くても三千五百人くらいと思うぞ。この時間帯ならもっといるはずだ」

「たしかに。正式サービス公開から五時間でこれはないだろうな。」


推測を話し合っているうちに、フィーネとミルシェが来た。

パーティーメンバーも連れてきたらしく、俺の知らない三人の美少女たちが辺りを不安そうに周りを見回している。


「おーい!フィーネ、ミルシェ!」

「あ、お兄ちゃん!これが何なのか知ってるの?」

「いいや、俺も直も知らないぞ。ところで後ろの人たちは?」

「ギルト『ワルキューレ』のメンバーです。私はギルト代表のヒルドです。」


ケットシーらしき、金色の目をした女性が話しかけてきたので言葉を返す。


「俺はエデンだ。よろしくな」

「それからこの獣人族はミストです」

「よろしくー」

「よろしく頼む。後、俺は男だ」


少しぼんやりしているミスト。たしかそのまま霧って意味だったと思う。


「それから、こっちのエルフがアルヴィトです。」

 

「……よろしく」


賢そうな雰囲気のエルフがアルヴィトのようだ。まあそれも、全知って意味だから納得だ。


「というか全部北欧神話で通しているのか。あれ?フィーネとミルシェは違うよな」

「ええ。しかし、私たちにとっては大切な仲間なのです。その程度で追い出したりはしませんよ」

「それはよかった。よろしく頼む」

「分かりました。ところで、ミルシェがモンスターの群れに勝手に突っ込んでいくのを止められますか?」

「やっぱりか……!!」


などのやり取りをしているうちに、あたりのプレイヤーたちがざわついてきた。

どうやら状況は把握仕切れてはいないようだが、クエストの途中で強制転移された人もいるのだろう。運営出てこい!どうなってんだ!!といった怒りの声も上がっている。


再び会話を再開しようとした瞬間、あたりが急に揺れだした。


「地震!?」

「いいえ、そんなはずは――」

「いや、クエストの開始って言う可能性もあるぞ。エデンとりあえずその塔から離れろ。倒れるとマズイ。」


直に言われて寄りかかっていた塔から背中を離した、直後に塔が急にせりあがった。

あたりの地面が揺れているのはこういうことだったのか。と考える間も無く、もとは四メートルあるかないかくらいの大きさだった塔がいきなり目算一キロくらいに大成長を遂げた。

さらに天辺近くにある(つまりは地面の表面ぎりぎりにあったということ)部分に鐘がついていて、それが急に鳴り出した。

ゴゴゴゴーーン!という音を聞きながら砂埃から脱出した俺が見たのは、塔の天辺のさらに上に浮かんでいる白いローブを着ている巨大なアバターだった。

そして、俺はその姿に見覚えがあった。


「まさか、野崎伸也!?」


「やあ、二千九百五十二人のプレイヤーたち。何人かは気づいてくれていると思うけど、僕は野崎伸也だ。君たちにはあるグランドクエストを受けてもらおうと思う」

 

あたりを沈黙が包み込む。その中で話し続ける野崎。


「さて、僕がこの世界を作った理由を話そう。面倒くさいことを言うのも疲れるので、さっさとリアルのもう(・・)ひとつ(・・・)の(・)現実(・・)について話そう」

「君たちの中にはこれから言うことが信じられないと言う人たちがいると思う。しかし、悲しいかな、これは紛れもない事実だ」


あたりを、この広場を、得体の知れない何かが覆いつくす。


「現実世界には、『裏の世界』がある。そこでは、『化け物』と呼ばれる寿命を喰らう者たちと、それと戦い、倒す『異能力者(いのうりょくしゃ)』たちとの戦いが起きている」

しかし、彼は説明を止めない。

「『化け物』たちは、さっきも言ったが人類の寿命を喰らう。そうして『裏の世界』で生きている」

「それに対抗するのが『異能力者』。まあ読んで字の如くだけど、様々な異能の力を使える人間たちのことだ。彼らによって構成された組織が世界に散らばり、『化け物』たちを倒している」


半信半疑のものが多いであろう状況の中、それでも彼は説明する。


「しかし、ここ最近『異能力者』たちが絶滅の危機に立たされている。理由は簡単。あまりにも『裏の世界』に入ってくる人の数が少ない。

このままでは危険だと判断した異能力者の上層部は、強引な方法でもいいからとにかく異能力者の数を増やすことにした。

その時に目をつけたのがこの仮想世界のゲームである、VRMMOだ。そこで上層部は、君たち異能の素質のある人たちを選び、検査を受けさせようとした。

しかし、その動きに僕は気づいた。そして先ほどの話を聞かされた僕は、実行しようとしていたうちのいくつかの行為をやめさせることを条件に、彼らに協力することにした」


この世界の管理者は、説明をやめない。


「このままでは人類は滅びてしまう。『化け物』に喰われても、一度に減少する寿命はせいぜい数時間分だ。しかしそれが何十回、何百回と繰り返されたら?

そこで君たちに協力を願いたい。ここにいるのはすべて、異能の力をもったプレイヤーだけだ。リタイヤしたいのなら、それでもかまわない。この世界はデスゲームではない。すべてのプレイヤーにこの世界で生きていくだけの最低限のフルは与えるつもりだ。この町にとどまっていればいいだろう」


何人かが、安堵のため息を漏らした。それを聞きながらも、説明は続く。


「グランドクエストの内容を伝えよう。この(・・)世界(・・・)にも裏があり、そこに魔王が存在する

その魔王が軍勢を率いてこの世界にやってくるのは三年後だ。奴とその軍勢から、この世界を救ってほしい。とはいえ、たとえ失敗しても成功してもこの世界からは開放する。記憶を消したいという人がいれば消してあげよう。

後、注意をひとつ。この世界には、痛みが『裏の世界』と同じくらいに設定してある。気をつけるように。

そして、この後からはログアウトボタンは無くなり、その場所に掲示板システムが出てくる。最大限活用してくれ」


 この言葉を聞き、とっさに何人かがメニューを開いたようだ。彼らから聞こえてきたつぶやきで、周りのプレイヤーたちもログアウトボタンの消失に気が付いたようだ。しかし、説明は止まらない。


「この後に君たちは解放され、新たなる、そして元から持っていた異能が開放される。異能の能力は人によってさまざまだ。その能力を使ってこの世界で生き抜いてほしい。

話は以上で終わりだ。そして、異能の力については、長年秘匿されてきた歴史を破って現在上層部が『表の世界』の人間に公開している。

君たちがどのように生きるのかは自分で決めるべきことだ。分からないことがあったらGMコールをしてくれ。可能な範疇で、できる限りのことをする。

最後に、この世界での三年は、現実世界でのたった二時間でしかない。つまり、現実に帰ったら年寄りになっていたということはない」


 「そして、この世界をだれよりも知り、だからこそ誰より無知なGMからの助言だ。

グランドクエストをはじめとするすべての物語が、君たちの動きで変わってくるだろう。君たちが感じ、考えた通りに行動することを勧めるよ」

 

 助言と言えるのかも定かではない言葉を残し、


「君たちの健闘を祈る。」

巨大なアバター(ゲームマスター)は姿を消した。


あたりがしんと静まり返る。誰もが動きを止める。

 まるで、物音ひとつ立てずにいたらこれは現実となるというような、しかし、そう考えることがすでにさっきの話を認めているということになる。


やがて俺の体を青い光が包み、もといた神殿の奥へと転移させた。

そこは、天井が吹き飛んだせいか初めて入った時よりも肌寒く、そして宿主を失ったせいか、どこか悲しげにも感じられた。


心の底からごめんなさい!!

これ以外に宣言が思い浮かばなかったんですよー!!

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