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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅱ:私と白いベンチ。
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昼休み。

私は白いベンチのある校舎裏に向かっていた。

いつもはユカとお昼ご飯食べるんだけど、ユカが家の用事があるとかで、早退したので今日は一人。

たまにそういう日があるから、そういう日はいつもここにくる。

太陽が真上にあって、あったかくて気持ちいいこの場所に。


白いベンチに腰かけようとすると、


「一年B組の橋宮陽依さん!」

と名前を呼ばれた。

この声には聞きおぼえがある。

弁当をベンチに置いて、私は声のする方へ振り返った。


そこには案の定、楠木江梨香さんかたってた。

その後ろに2人、女の子が立ってる。

あ、この人たちが噂の幹部の人なのかな?


楠木さんは、黒い長い髪をさらっとひるがえし、私をジロッとにらむ。

ユカ…ヘルプミー。

え、3人で私をボッコボコに?ここ校舎裏だし、人気皆無だし、助けを呼んでも誰も来ないかもしれない。ど、どうしよう。


「あの?私になにか?」

そう言うと、私の方にズンズン楠木さんが近づいてくる。

「あのっ…」

わー!ついに殴られる。目を閉じて、頬に衝撃がくるのを待った。

瞼を閉じると、白いベンチが私の鼻血で真っ赤に染まるところを想像できる。

顔から血の気が引いていくのが分かった。


「橋宮さん……一緒にごはん食べましょ」


え?

ごはん?


「ごはん食べるの?食べないの!?」

そう詰め寄られ、私は「は、はいぃ」と答えざるをえなかった。

その答えを聞くや否や、楠木さんの後ろに居た子がバサァッと芝生の上にブルーシートを広げる。

この人たち、私に裁きを下しに来たのではないの?

黙々とランチタイムの準備をする2人をよそに、楠木さんは私の手をつかんでニコニコしていた。

強気で怖い人かなって思ったけど…違うのかな?


ちょこん。

広げられたブルーシートに「さぁさぁ」と流されるように座らされた私。

「私、一度ゆっくり橋宮さんとお話してみたかったの!」

弁当箱を開けながら楠木さんは言う。

「は、はぁ」

「聞きたいことがあるんだけど…いいかしら?」

「ど…どーぞ」


何聞かれるんだろう。

私とゆっくり話してみたかったって、私のこと前から知ってたってこと?

私の方がいっぱい質問したい。

ぼーっとしていると、「じゃあ質問するわね?」と楠木さんがこちらに向き直った。


「今まで付き合った人の数と、失恋数、初恋の相手の見た目と性格、今好きな人の有無、好きな異性の仕草、言葉、好きな恋愛小説のタイトルと内容、好きなタイプを教えてくれるかしら」


マシンガントークならぬ、マシンガン質問。

最初の質問が思い出せない。

「えー…っと」

「時間はいっぱいあるわ、ゆっくりで構わないのよ」


楠木さんの顔は終始笑顔で、逆にそれが恐ろしく感じた。


「え、えっと今まで彼氏ができたことは、ありません。えと…初恋は小学生のときで、相手の顔とかは覚えてないけど、とても優しい人でした…あと…」

私が答え始めると、楠木さんは「サーチ準備!」と隣に座っている女の子たちに言う。

すると、2人ともノートとペンを取り出して、私が話すことをメモし始めた。

一体、何のため?ゆっくりお話って感じじゃないよ…ね?

会話になってないし。質問責めってやつ?


それから、質問されたことを思い出しながらすべて答えたころには、昼休みもあと残りわずかとなっていた。

私のお弁当は、まだ中身がいっぱい詰まってるのに、楠木さんたちはいつのまにか完食していて、シートの上にからの弁当箱が置いてある。

おなかすいた…。


「そう、じゃあ最後に一つだけ聞いていいかしら?」

まだ質問!?


「あなたは、藤井先輩をどう思ってるの」

顔は笑ってるのに、目は笑ってない。

楠木さん、目も笑ってください。


「あなたは、藤井先輩のこと好きなの?」

藤井先輩は、昨日の放課後と今日の朝、少し話したぐらいだ。

今まで会ったことも、話したこともなかった。

どう思ってるの?って聞かれても、なんて答えていいかわからない。

好きなの?って聞かれても、先輩のこと何も知らないし。


「えーと、藤井先輩とは面識も浅いので、好きとかそういうこと考えたことないです」

そう言うと、また後ろの子たちはペンをとり、サラサラとノートに私の言葉を記す。


「分かりました。2人とも結果を教えて」

楠木さんは、後ろを振り返り、2人のノートをチェックした。


「恋愛発展率…15%ね」

ぼそっと楠木さんは呟くと、私の方に振り返り、

「あなたは大丈夫みたい。藤井先輩に近づいてもいいわ、でも近づきすぎはダメよ。私たちは、あなたを監視してることを忘れないで頂戴」

と意味不明な言葉を言って、一瞬でブルーシートを片づけて嵐のごとく去って行った。


残されたのは白いベンチと私と中身の入ったお弁当箱。

「…ぐぎゅるる~」

静かな校舎裏に、私のおなかの音が鳴り響いた。




いいんですか?楠木会長、彼女をほおっておいて」

「いいのよ。彼女は危険分子ではないわ。このお姉様の特製心理テストを疑うつもり?」

「滅相もありません」

前藤井ファンクラブ代表兼監督部長、楠木綾女(くすのき あやめ)

つまり楠木江梨香の姉が、作り上げたものがその心理テスト。

何を根拠に作ってあるのかは不明な代物だが。

このテストで、藤井との相性を占い、その確率が高いものを排除しているらしい。


「藤井様はみんなのもの。このきまりは死んでも守り抜く、お姉様との誓い忘れませんわ」


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