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翌日、学校へ行くと、ユカは椅子に座っていて、伏せて眠っているようだった。
昨日、そんなに楽しかったのかな。
もしかして、ついにユカ、委員長に告白して付き合い始めたとか!?
そんでもって、ドキドキして眠れなくて、朝になって眠気が襲ってきたと、そういうわけ?
足音を立てずに、ユカに近づくと、ユカは寝てるのではないことがわかった。
うなだれてる。なんだか落ち込んでいるみたい。
どうしたんだろう。ユカのまわりの空気がどよ~んとよどんでいる。
そして、ユカからブツブツなにかをつぶやいてる声が聞こえる。
そっと、近付き、ユカの方をちょこんと触れてみた。
ちょこん。ちょこん。た、隊長!反応がありません!って小芝居は置いといて。
「ユカ?」
私が耳元でそうつぶやくと、ユカは驚くほど素早く起き上がり、死にそうな目をこちらに向けた。
私の顔を見るやいなや、みるみるうちに、ユカの目には涙がたまっていく。
「どどっどぉしたのユカ!」
あのしっかり者のユカが、私に涙を見せるなんて、初めて。
私がユカの前で泣いたことは散々あるけど、ユカが泣いてるのは人生初!
蝉がどこかしこで大合唱をし始めた、7月の暑い日。
今日は雪が降るかもしれないと、私は本気でそう思った。
オロオロしていると、ユカが、「あれ…見てよ……」と力なく右手を教室の入り口に向ける。
ユカの指さす先には、女子の人だかり。
その中心には、見たこともない男の人が立っていた。
制服を来ているから、同い年か年上だと分かる。
サラサラの艶やかな黒髪、モデル体型並みの身長とルックス。
漆黒の瞳に、インテリジェンスな黒縁めがねをかけていて、究極の日本の美がそこに集結したような、完璧な容姿の男の人がいらっしゃいました。
あそこまで、完璧なイケメンに女子がたからないわけがない。
藤井先輩の陽気で人当たりの良いカッコよさとは、別の違った種類のイケメンだなぁと思った。
ユカが指さしてるってことは、ユカの知り合い?
えっ誰だろう。
転校生にしては夏休み前で不自然な時期だし。
「あの人…かっこいいね。あの人がどうしたの?」
私がそう聞くと、ユカは長いため息をついたのち、
「委員長」と答えた。
私は周りを見渡して、委員長をさがす。
「そういえば、まだ委員長来てないね」
委員長の席は、空席。
マジメな委員長が遅刻するわけがない。
今日は休みかな。
そう思っていたら、「委員長!!!」とユカが、さらに強くその単語を発した。
「え?何?」
「だから、あの人、委員長なのよ」
私は、もう一度女子に囲まれる男の人を見る。
この人が委員長ね。なぁんだ。
この人が……い…委………って
「委員ちょおおおおぉおぉぉぉぉ!!!!!?」
「陽依声大きいから!」
ちょっ…ちょっと…ちょっと待ってよ。
え?あれがこれで、これがあれで……。
「何かの間違いじゃ…?今日から新しく転校生が委員長になってそれでそれで」
ワタワタと頭を抱えてパニクる私。
だって、あの人髪の毛サラサラだよ?
委員長言っちゃ悪いけど、ボサボサヘアーだったじゃない!
流し目なんかしちゃって、あんなに色気ないよ。
委員長影薄かったじゃん。
あの人、モテモテだよ。
委員長は薔薇の花なんかしょってないし!
それが…同一人物?
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムが鳴り、担任が入ってくると、ユカはうつぶせになったまま「昼休みゆっくり話すから」と、そう言った。
まだ、信じられない。
そう思っていた私を、否が応にも納得させるように、あの男の人は自然に委員長の席につき、号令をかけた。
「きっ……起立…」
その声はやはり、気弱な委員長のもので、いつもと違っていたのは、クラスのみんなが委員長の言うことを素直に聞いていたことだった。
昼休み――――
授業終了のチャイムと共に、ユカは私と目を合わせると、目をちらっと左に向けて、さっとカバンを持ち教室から出て行った。
左は校舎裏のベンチがある方向。そこで話そうってことらしい。
私も教科書を机にしまい、お弁当の袋と水筒を手に持つと、ユカの待っている校舎裏へ走った。
急いで校舎裏へ来たはいいが、お弁当の中身がシャッフルされていそうで怖い。
校舎裏を見渡すと、白いベンチに座らずに、その前で体育座りしているユカを発見した。
ちなみに、体育着の短パンはいているから、ユカのパンツは見えません。
「ユカ?」
「遅い」
これでも急いだんだけどな。
「ユカおしり汚れちゃうよ?ベンチ座ろう?」
ユカは返事をせずに無言で腰掛ける。
本当にどうしちゃったの。いつもの覇気のあるユカの面影が微塵も感じられない。
「あの…なんで委員長あんなにかっこいいの?」
恐る恐る聞くと、ユカは頷いてゆっくり話し始めた。
昨日の放課後図書館での出来事を。




