表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界より  作者: yoshiaki
7/81

田所修造の場合 5

タバコ芸で気持ち悪くなった口の中を沢の水でゆすぐ。

ちなみに俺とガキは池の水ではなく、池に流れ着く沢の水を飲むようにしている。


腹が減ったので鹿もどきのレバーを串焼きにして食った。

ガキはレバーが苦手のようだが、表面だけやいたレアの状態で無理やり食わせた。

陸で壊血病なんてシャレにならないからな。

レバーだけでは足りなかったので心臓もぶつ切りにし串焼きにして朝食を済ませた。

ガキはあまり食べなかった。どうやら魚のほうが好きらしい。


朝食を済ませるとガキに枯れ木を集めてくるようにジェスチャーで伝える。

ガキは喜んですっ飛んでいった。

子供には適度な仕事を与えたほうが静かで楽なんだなと勉強になった。


俺は焚き火を囲うように石を並べ始める、簡単なかまどみたいにして、その上に真ん中がくぼんだ石をのせた。そしてくぼみの中には水が入っている。くぼみはそれほど深くないのでたいした水の量では無いが十分だろう。

俺はガキのぼろ布とえらいことになってるパンツを池で水洗いした。

想像どおりまったく汚れが落ちない。


ある程度水洗いをしてからかまど(焚き火)のところまでもどり、石の中で沸騰し始めているお湯の中へぼろ布とパンツを放り込む。

洗剤が無いためインドに行ったときに見た、湯だったお湯で強引に汚れを引き剥がす方法で洗濯することにしたのだ。


ある程度茹でてから、石の中のぼろ布とパンツを取り出し、再び池で水洗いをする。

だいぶましになったぼろ布とパンツをかまどの脇の岩に干し、かまどの上の汚水入りくぼんだ石を枯れ木を使用して離れた場所まで持って行き処理した。

ゆだった汚水は信じられない臭さだった。


池で手を洗ってから鹿もどきの皮のはぎとり作業を再開する。

ガキは目の届く範囲で枯れ木を集めているので、ほっといて平気だろう。

慣れない作業と石器に手間取りながら皮を剥いでいく。


途中何度かガキが枯れ木を持ち帰ってきて、また枯れ木を取りに行った。

俺のほうは皮を剥ぎ取り終えて鹿もどきの解体もほとんど終わっていた。解体された鹿もどきは途中から面倒になってきてぶつ切り状態だが。

昼飯用に、少し多めに鶏で言う胸肉を切り出し、釜の火から遠目のところに木の枝でさしてじっくり焼くようにする。ブタで言うバラ肉なので硬くて食えないということは無いだろう。


昼食の準備まで済ますと、かまどの脇に座り一息つくことにした。

今更だがタバコが無いのが非常にきつい。


しばらくするとガキが上機嫌で両手に何かを持って帰って来た。

ガキが持ってきたものを見ると、ブルーベリーのような青々しい実が両手一杯にあった。


食い物取ってきたのかと俺はガキをすこし見直した。

ひょいっとガキが持ってきた実を一つつまみ上げ食ってみた。


…ものすげぇ渋いってか、グガァァア! これはやばい!舌がしびれる!


急いで実を吐き出し、口をゆすぎに沢へダッシュする。

俺の苦しむ姿がつぼに入ったのか、後ろからガキの爆笑する笑い声が聞こえる…


がぁぁ! 口の中が痛いぃ! おのれガキィィィイイ!!!


沢の水で何度も口をゆすぐが、何時までたっても口から吐く水が真っ青だ。

歯に挟まっているカスを指で処理し、しばらく口をゆすいでいると、何とか吐いた水が透明な色にもどった。


かまどの所へもどり無言で対峙する俺とガキ


なぜか余裕そうなふてぶてしい態度をとるガキがムカついたので、頭をはたいた。

怒ったガキが俺に攻撃を加えてくるが、ガキが必死に腕を伸ばしてもせいぜい俺の腰に届くかといったところ。力も弱い。

所詮ガキだなと思いながら、ガキの攻撃を無視し、かまどで焼いている鹿の串焼きを手に取り食べる。

中のほうはまだ火が通ってなかったが、表面はちゃんと焼けてるからまあいいか、出来れば塩がほしいな。などと考えながら鹿肉を食い続ける。


ガキも俺を攻撃することにあきたのか、ふて腐れながら鹿肉を食い始める。


しばらく無言で、なぜか二人並んで立ったまま鹿肉を食い続けた。




食後満腹になり俺とガキはボケッと休憩を取っている。


さっきのニセブルーベリーをボーと見ていた俺は、染物を思いつき立ち上がった。

さっき汚水を入れていたくぼんだ石を取ってきて池で丹念に洗う。

ガキが「何してるの?」といった感じでまとわり付いてきたので、ガキを連れて洗い終わったくぼんだ石に水を入れてかまどの所へ戻る。

そのままくぼんだ石にニセブルーベリーをじゃぶじゃぶ入れ、手ごろなサイズの石でガシガシ潰す。すぐにくぼんだ石の中の水は真っ青になった。


さっき俺の口の中はこんな状態だったのか…

再びガキへの怒りがよみがえるが何とか抑え、ガキのぼろ布とパンツを放り込む。


ガキが騒ぎ出すかと思ったが、俺がやろうとしていることがわかるのか、興味深そうに窪んだ石の中を見ている。


しばらく煮込んでぼろ布とパンツを取り出す。池で丁寧に水洗いをすると良い感じに染まった。

藍染とかだと何回か染め直したりするんだろうが、別に色落ちしても構わない、もともと汚れが目立たなくなればいいのだから。


青くなったぼろ布とパンツを岩の上に干す。

ガキは嬉しいのかぼろ布とパンツをかじりつくように見ていた。


俺はくぼんだ石の中の青い液体を捨て、池で石を洗い水を汲みなおして、石をかまどの火にかけた。

しばらくして水が熱めの湯ぐらいの温度になってから、かまどから石を下ろしガキを呼んだ。

あきずにぼろ布とパンツを見ていたガキがちょこちょことこっちに来る。

俺はガキが着ている俺のシャツを脱がせハンカチをお湯にひたしてからガキの体を拭いた。


昼過ぎくらいだろうか、かまどの脇だし裸になって俺に体を拭かれているガキも寒そうじゃ無い。体を拭き終わってからお湯の入った石の上に頭を突き出させガキの頭を洗う。


どんだけ頭洗ってなかったんだこいつ?


ガキのヘドロ色の髪を洗うと、くぼんだ石の中にあったお湯はすぐに真っ黒になった。

それでも黒くなったお湯を手ですくいガキの頭を洗ったが、綺麗になっている気配が無い。

面倒になってきたのでガキをだっこし頭を窪んだ石の中に突っ込んだ。

熱された石の中のお湯のため保温効果が高いのだろう。お湯はまだあったかい。

ガキは気持ちよさそうにしている。


しばらくしてからガキをお湯から引っこ抜き、池まで行って水で頭を洗いなおした。

お湯にしばらく漬け込んだので汚れが浮いて見る見る綺麗になる…


ガキの髪の色が青い…


洗い終えたガキを担いでかまどの所まで戻りハンカチで髪を拭く。何度かハンカチを絞り拭き終わった後、かまどのそばに居るようジェスチャーで指示し、くぼんだ石の中の汚水を離れた場所へ捨てに行く。


青い髪の人類はいないはずだが、ここは不思議の国のような場所だからと、深く考えるのをやめた。


かまどのところまで戻るとガキは久しぶりの洗髪が気持ちよかったのだろう。

かまどの脇でくつろいでいた。


俺もかまどのそばに腰をおろした。


かまどを眺めながら明日からのことを考える。

昨日と今日ゆっくり休むのだ、体力は問題ないだろう。

もし最悪おれがすぐに帰ってくることが出来なくても、食料は運よく鹿が確保できたので3・4日なら十分もつ。


手の中の小石を見る。


こんな所に何時までもいたらジリ貧だ。雨さえもしのげない。


「明日俺は黒いものを殺しに行く」


声にだしてつぶやく。


ガキが「何?」といった感じで首をかしげた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ