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異界より  作者: yoshiaki
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田所修造の場合 3

食事も終わりようやく一息つけた。

焚き火を囲み暖をとる。

さっきの魚捕獲のため俺は全身濡れすずめとなってしまっていたので、今はスラックスを脱ぎボクサーパンツと白いVネックのTシャツという姿になっている。

焚き火の脇に岩を運んできて、その上にスラックスとシャツを広げ乾かしており、革靴と靴下は焚き火の脇においている。


うすうす気が付いていた。

食事を優先し無視していたが試しに岩を運んでみて確信した。

力がすごいことになってる。


今スラックスとシャツを干している岩だって、一抱え以上あるのだ。重量も何百キロとあるだろう。

それを俺は持ち上げて運んできたのだ。

岩が軽かったということは無いだろう。岩を運んだ後を確認したら地面に足跡がついていた。


あまりに現実離れした展開に理解が追いつかなく、またゆっくり考えている暇もなかったので放置していたが、地震のあと森で目覚めてからずっとおかしい点が多すぎる。


まず森、木がすべて馬鹿でかい。ここの池の周りの森も、最初に目覚めた森と同じように木が馬鹿でかい。俺は確かにトレッキングや山登りやアウトドアの趣味は無い。山や木に対して造詣が深いとはとても言えない。しかしこの木の大きさはどうだ?大人4・5人手を伸ばしようやく周囲を囲えるかといった代物だ。中にはそれ以上、もはや小屋くらいの太さの木さえ普通にある。探せばもっと太い木もあるだろう。


そして次はあの黒いもの、人間には見えなかった。

俺を追ってきた様子や、川の中から対峙した時の様子から、あいつらは高い可能性で人間の味を知っているように思う。俺の逃げる先に仲間が回りこんでいたことや武器をそれも弓を使っていたことなどから知能も高いのだろう。そんな存在聞いたことも無い。


黒いものの他にも人型ゼリー、あれは明らかにこれまで人類が遭遇したことが無いであろう未確認生物だ。黒いものはどっかの奥地で異常な進化を遂げた人食い族だと言われれば、まだ納得できる。しかし人型ゼリー、あれは駄目だ。完全に異常だ。


そして人型ゼリーと遭遇後におぼれて、なぜか池にいる現状。池は小さな沢などが流れ着いているようだが、川には繋がってない。

ガキと話が出来れば、俺がどうしてここに居るのか確認できるだろうけど、それも出来ない。

ガキと言えば、こいつ指から火を出していた。

手に何か持っていたということは無い。俺はそばで見ていたのだ。

それになぜこんな小さいガキがこんな所に一人で居るんだ?俺の姪っ子と同じくらいの背丈だから5歳くらいか?

ガキ本人は満腹になり、焚き火で暖もとれることから、食事が終わるとそのまま眠ってしまっている。


俺の馬鹿力を含め分からないことばかりだ。

まるで地獄にでも迷い込んだようだ………


実は俺は地震ですでに死んでいて、今は地獄にいる。そう考えるとすべて辻褄が合う気がする…


焚き火の火のゆらめきを見る。

そばで寝てるガキを見る。


馬鹿馬鹿しい。

分からないことはどれだけ考えてもやはり分からないだろう。


俺はそっと立ち上がり焚き火のそばから離れた。


焚き火からある程度はなれると、近くの岩を持ち上げた。

胴回りが3~4mくらいの岩だ。かなりの重量だろう。

確かに重いが、書類が入ったダンボールくらいに感じる。

ゆっくりと岩を元に戻す。


次に手ごろなサイズの石ころを拾い木に投げつけてみる。

派手な音がして石が木にめり込んだ。


ガキが起きるヒヤッとしたが、寝たまんまのようだ。


石を投げた木まで歩いていく。

石を投げた木までの距離は24歩あった。20mくらいか?


木にめり込んだ石はかなり深くまでめり込んでいる。


残念なことに野球の経験は無い。だが、この投石は使える。


俺は森をにらみつけ、焚き火へと戻った。




焚き火の火をいじっているとガキが目を覚ました。


空を見ると太陽が中天にさしかかっている。

どうやら俺が池で目覚めたのが朝方で、今昼くらいか。


何もしなくても腹は減るらしい。

また魚を獲って来て焼いて食った。

ガキは朝にも増して食欲があるらしく5本も焼き魚を食べたので、俺は魚をまた獲りに行く羽目になった。


ゆっくりと食事をし枯れ木を焚き火に足しながらまた休憩をとる。

ガキは相当疲れていたのか、またすぐ横になった。


俺はタバコを一本取り出した。残りは3本。

焚き火で火を付けゆっくり煙を吐き出す。


今は体力を回復することが先決だ。

ガキも俺も相当まいっている。一日絶食し、深い森を歩き黒いものから逃げ、川を泳いぎ、危うく死に掛ける目に遭ったためか、全身疲れのためかなりだるい。


手元に小石の山を作り、森から黒いものが襲ってきた際に備える。

焚き火を消すことも考えたが、寒さで体力が奪われるのが厳しい。


乾いたシャツをまといじっと森を見張り続けた。


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