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赤い紅

三人称視点です



金属と金属が重くぶつかり合う音が響く。


学校の運動場のように整備された場所で、多くの屈強そうな男たちが集まって剣を振り回している。


剣の先は、尖らされてはいないものの、まともに当たれば危険であろうことが容易にわかる。


ガタイがいい者たちが集まるその中で、一際目立つのがセルヴァ・フェリアスである。

目鼻立ちがよい彼が目立つ理由は見目麗しいからではない。


確かにその顔の造形は並々ならぬ美しさだが、それが主な原因ではない。


燃え盛る炎のように赤く紅い髪の毛。まるで夕陽を切り取ったかのような鮮やかな目。



それは彼の存在感、そして威厳をこれ以上ないほどに表している。



そして赤の彼、セルヴァと剣をぶつけ合っているのが、漆黒の目と髪を持つアキその人である。


力と技術で圧倒しているセルヴァに、速さで対抗しようとするアキ。

力の差は歴然だが、寸でのところでアキは体を翻す。その速さはセルヴァにタイミングをつかませない。


だが、差があるのは力と技術だけではない。セルヴァは体力ですら規格外だ。

その上逃げることばかりに専念せざるを得なかったアキには疲れが見え始める。


アキの一瞬の隙をつき、セルヴァはアキの剣を自分の剣と絡め、アキを力で引きずり倒した。



「う、わあ!!」


ずしゃあ、と引きずり倒されたアキは、剣をそのままはじかれた。


「勝負あり、だな」


セルヴァの顔から厳しさが消え、笑みが浮かぶ。

引きずられたせいで砂だらけになったアキに手をさしだす。


「ててて……ありがとうございます」


セルヴァの手をつかみアキはお礼を言った。

砂だらけのアキの姿はまるで小さな子供だ。


「相変わらず速いな」

「嫌味ですか。隊長の方が何倍も速いですよ」


「そんなわけじゃない。バネはお前の方があるんだから間違ってはいないだろう」


そのバネがあっても隊長には一度も攻撃できませんけどねー、とアキは不満そうに呟く。


セルヴァは本当に惜しい、と思う。行儀見習いとして城に上がってくる彼は、稽古をするたびにどんどん強くなる。


最初こそ、体力も技術も速さも力も、何もなかった彼……アキ・ライアス。


ひ弱そうな見た目も手伝って、ここにいるには不似合いなアキは、2、3日しごけばもうここにはやってこないだろうとだれもが予想していた。

もちろん、セルヴァもそうだ。


だが、周りの予想を裏切り続け一年と半年。アキはほとんど毎日この演習場にやってきた。


持前のセンスと、並みならぬ根性。それだけでアキは一年でセルヴァと稽古するまでになった。



正直、まだまだ到底セルヴァには届かないその手が、半年。たった半年でどれほど近づいたか。

その上達の速度はセルヴァに焦りと、楽しみを生んだ。



「アキ・ライアス。俺の隊に入る気はないか?」


このまま行儀見習いとして終わらせることはもったいなさすぎる。

まだ15歳くらいだろう。こいつは。これからまだまだ伸びる。

ここで手放すには惜しすぎる人材だ。



もう何度目か分からない誘いを、セルヴァはアキにかける。

結局それは光の速さで断られることになったのだけれど。


絶対に手放すものか。セルヴァは心に決めていた。




(そろそろ私死ぬ!!セルヴァ隊長に殺される!!)

セルヴァから及第点をもらえる事ができたらこの修行地獄から抜けられるのに!!


そう思いながら毎日及第点をもらうために死に物狂いで稽古をしているアキの心は届かない。

坊ちゃんのこと以前にこの隊に入ったら私死ぬ!!



年齢とかいろいろと渦巻いた誤解が解けるのはいつの日か……




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