学校3
良いことであれ、悪いことであれ、予想外のことというのは、精神に負担がかかるのだ、とアキは思った。
今の状況は、自分の望んだことではあったが、こんなに早くに起こってほしいとは思っていなかった。
ていうか、まだなにも行動してはいないので、一応、不可抗力だ。
目の前にいる現実(少年)とどう相対すればいいのか……
もう少し時間をくれたら考えれたのに!!
「聞いてんのか!?お前!」
「はい」
聞かずとも、少年の言葉は、この学校に来てから、陰でコソコソと言われていた言葉を、
真正面から、言われているようなものだったので、何となく話はわかっていた。
簡単にいえば、難癖をつけらてれている感じだ。
「ふん、ならいい。わかったなら、もう二度と、あの落ちこぼれには近づくな!」
だが、この言葉だけ、意味が判らなかった。
「……はい?」
「なんだ!?聞いてなかったのか!?」
いやいやいや!
心の中で、アキが少年に激しくツッコミをする。
「ちょ、待って下さい!」
「何だよ!?呪われたものが俺に意見するなんて無礼な!」
「いやもういいですから!謝りますから待って下さい!」
「うるさいな!早く言え!」
なんかこの少年と話がかみ合ってる気がしない!!
たぶん、他国の言葉を覚えたての外国人と話すと、こんな感じに違いない。と思うほどにかみ合わない。
「話を要約させて下さい」
「東の民は頭が悪いんだな。いいだろう、言ってみろ」
否定も面倒だよ。てか偉そうだな。絶対口にはしないけど!
「あなたは坊ちゃんが気に入らないのですよね」
「そりゃあな!落ちこぼれのくせに、生意気だ!」
ちょっと言い返しそうになるが堪える。機会があれば報復しよう。
「で、私のことも気に入らないのですよね?」
「当たり前だ!呪われた姿の癖に、あいつに仕えるなんて生意気なんだよ!」
なんだかわからなくなってきた。
話を整理しよう。
少年は、坊ちゃんが気に入らない。だが、呪われた姿の私が坊ちゃんに仕えているのも気に入らない。
だから結論が二度と坊ちゃんに近づくな、と。
……なるほど、わからん。
「……私が坊ちゃんに仕えているとあなたに何か不都合が……?」
アキがそう聞いて、初めて少年がつまった。
というか、固まった。聞かれた言葉の意味が理解できていないのかもしれない。
「…………」
坊ちゃんのことを気にしてるとは思ってたけど、それすらも本気の無意識か!自分で行動の理由を考えてないのかよ!
本日二回目のツッコミを少年に入れる。想像だけでは飽き足らず、手がピクリと動いてしまった。
「……………」
少年は、口を開けてひたすら固まっている。虫が入りそうだ。
気にしていると思ってはいたけれど、それは嫌い、気に食わない、という方向でだと思っていた。
でも、それだと私に近づくなという言葉にはつながらないし……
ということは、
「……実は坊ちゃんのこと、大好きですか?」
「……………は!?……っば、馬鹿じゃねっ!」
あ、噛んだ。
少年の顔が、沸騰したように赤く染まった。
そういうことか。その時のアキは、よく時代劇のテレビでみるような、悪代官なんかよりも、遙かに悪い顔をした。
「へー、そうなんですねー、ふーん」
ふふふ。あ、そう言えば坊ちゃんはどこに行ったのだろうか。
おそいなあ……でも学校内には入れないし。
急激に気分がほのぼのとしてきた。なんだこの少年、ただ坊ちゃんが好きなだけじゃないか。
「んなわけねえだろっ!!待て!納得すんな!!」
顔を真っ赤にして言っても、説得力がないぞ少年!
微笑ましいなあ。
「あーはいはいはい。すいません。チガウンデスネ」
「棒読みでいうんじゃねえよ!!違うっつってんだろ!」
この少年口悪いなあ。まあ元気な証拠だ!
……やばい、この少年、喋ってて楽しいかもしれない。話が通じるようになったし。
「……何をさわいでるんだ」
「お帰りなさいませ、坊ちゃん」
「っっ!!」
これ以上ないほどのグッドタイミングだ。
学校からゆっくりと出てきたジーンは、アキと、少年をたっぷり5秒見た。
やけにキラキラしているアキ。
そして顔が赤く、取り乱していることが、見て取れる少年。
「……何をさわいでるんだ」
見ても、他の情報がなにも入ってこなかったため、ジーンはもう一度同じ言葉を言い直した。




