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始まりの一歩2


いつの間にか立ち上がったジーンと私が見つめあって数分がたった。



この二年間ジーンに信じられていなかったのだと思うと、悔しい。


それはジーンのせいではなく、信じてもらえる努力が足りていないことにも気付かなかった自分の情けなさからくるものだった。



それなのに、まるでジーンが悪いかの様に一方的に怒鳴ってしまった。

冷静になると自分の言葉がどれだけ身勝手かわかってしまう。



信じさせることができなかったのは、私のせいじゃないか。

すべてを。私の罪を話すこともできないのに。


ジーンがそんな私を信じてくれてるなんて。

そんな身勝手なこと、よく思えていたものだ。



ジーンの傍にいてもいいんだと。

そう思いあがっていた自分が恥ずかしい。



「ジーン……ごめん、ね」

「……」


ジーンは俯いていて、どんな表情をしているのか私にはわからない。

感情に任せて言うだけ言ってしまった自分が恥ずかしい。


「ジーンが悪いわけじゃないのに、まるで責めるみたいに……

本当に責められるのは、私なのに。本当は、私が責められるべきなのに」


最近の態度に気付かなかったのは誰だ。

いつも坊ちゃん坊ちゃん言ってるくせに、坊ちゃんが思い悩んでるのにも気づかずに。


そんなやつ、信じられるわけないじゃないか。



「違う!アキは悪くないんだ!」


「私は、」


ジーンのそばに、いられない?


「アキ!」


「ウゴフッ!!」


腹にまるで猪が突進してきたかのような衝撃が来る。

雰囲気台無しの声が出た。……人として、今の声はどうだろうか。


タックルしてきたのは、言わずもがな、ジーンである。


「じ、ジーン?」

「離れないで!僕から離れるなんて許さない!」


ジーンを見ると、うっすらと涙が溜まった青い目と目が合う。

……鼻血でてない、かな?


「二年前、ずっとアキが僕のそばにいてくれるって言ってたの、信じたんだよ。

アキだけは、僕を裏切らないって思ってた。……でも、それでも!」


私の服を握りしめ、言葉を紡いでいくジーン。



他人行儀になっていくアキを見てると不安になる。


澄ました顔してるアキを見てると不安になる。


どれだけ僕がひどいこと言っても何も言わないアキに不安になる。



私の行動がどれだけジーンを苦しめていたのか、そこで初めて分かった。

自分の鈍さに呆れかえる思いだ。



「アキも――あいつらみたいに、僕のそばを離れるんじゃないかって。

信じてるはずなのに!信じてるつもりなのに!」


まるで血を吐くような悲痛な顔で思いを吐露するジーン。


ジーンが簡単に人を信じられたら、そんな子供だったら。

この子にこんな悲痛な顔をさせているのが自分だと思うと胸が痛む。


私は、知っていたはずなのに。


「僕はアキに、アキの人生を台無しにしてるんだ。

最初は僕と一緒にいるって言ったことに半信半疑で、男の真似までさせられてるし、どうせ逃げ出すんだと思ってて。そうとしか思ってなくて。


でもアキを信じようと思わされた。でも、やっぱり不安で。」


私をつかんでいる手が、震えていた。


「アキが逃げたいって思っても、仕方ないと思った。

一緒にいたいけど、僕はアキにたくさんひどいことしてる」


「ね、ジーン」


私は二年間、自分のことに必死だった。だから、何も気付けなかった。

ジーンのこと、大切にしてると思ってたけど、全然だったんだね。

だって、こんなに背が伸びたことも知らなかった。


「私もね、一緒にいたいよ。私もジーンにたくさんひどいことした」


たくさん不安にさせてごめんね。

ちゃんと大事にする。ちゃんとジーンと向き合うよ。


ジーンの目から、カセが外れたかのように涙があふれた。


「馬鹿!なんで謝るの。馬鹿!なにも言えないじゃないか!」


ぎゅう、とジーンを抱きしめる。後二年もすれば、追い越されるだろうなあ、身長。

楽しみであり、さみしくもある。


「ジーン。私が男として生きることに何の負い目も感じなくていいんだよ。

異世界からこっちにきた瞬間から、私は女であることなんてどうでもよかったんだよ。


それで、ジーンのそばにいるのに、女を捨てればいいだけなんて、私にとっては都合がいいだけだったんだよ」


意味を解りかねているジーン。

でも、意味をまだ言うことができない。


ジーンを信じてないからじゃなくて、私自身が弱すぎて整理できてないんだ。でも、いつか絶対に言うから。



「坊ちゃん。私をお傍に使わせて下さいますか?」


「……当たり前。今更どっか行くなんて、許さないから。

でも……人がいないとこでは敬語つかわないでよね」


泣きはらした目が赤い。後で冷やすものをもってこなければ。


「うん。了解、ジーン。ジーンも、私の名前、ちゃんと呼んでね」



目と同じように赤くなった頬で小さく「アキ」と呼ばれ、

私は笑顔で「なあに?」と答えた。


やっとぎこちなく笑った顔は、私の大切な宝物だ。




――歯車は二つ、やっと噛み合った――

これから、また歯車は増え、すべてのことが動き出す。






第一章 了

とりあえず第一章が終わりました。

過去を書いてないせいで本当に読みにくいですね……

こんな小説をわざわざよんでくださることが本当にうれしいです。

本当にありがとうございます。


誠心誠意続きを頑張らせていただきますので、

良ければ暇つぶしにでも、どうぞお付き合いよろしくお願いいたします。

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