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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第11章 四人の切なる想いと一つの望み

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第58話 僕が仕返しとばかりに、お前から大事なものを奪ってやる(あきら過去編②)

「さあ、ここで地獄に堕ちなよ!」


「ふっ、あきらごときにできるもんならな」


「何だと!」


 僕は催眠術を解いて、龍郷たつごうの頬を何度も殴る。

 術を外したのも、そんなものを使わずとも余裕で屈服できると思っていたからだ。


 だが、彼は特に抵抗もせず、薄気味悪い笑いを続けていた。

 僕に罪をなすりつけるため、ハルを誘拐し、ここから徒歩で行ける近辺のアパートに住まわせたのだと……。


「おい、貴様。そこで何をしてる!」


 ──龍郷との暴行を、駆けつけた近隣の警察官に押さえられ、未遂といえども、数年の独房行きとなった神楽坂かぐらざか

 一方で龍郷は、本人の話により被害者となり、数ヶ月のメンタルケアを受けることになった⋯⋯。


◇◆◇◆


 ──その後、神楽坂が刑務所から釈放された時には、龍郷と決別してから、数年もの年月が過ぎていた。


 彼は誰とも結婚はせずに、この日を迎えた。

 あの女性と再び逢うまでは──。


「──あっ、君はもしや、烈火れっかちゃん?」


「えっ、あなたは神楽坂さん?」


 白いワンピースの露出を減らすため、チェックの黒いロングスカートという清楚な雰囲気を漂わす女性。

 多少、年齢を重ねていてもスタイルはよく、美人に変わりはない。


「お久しぶりですね。高校卒業以来でしょううか」


「君は相変わらず綺麗だね」


「もう、会ったと思いきや、いきなりナンパですか。奥さんがヤキモチを焼きますよ」


 烈火が、あの頃を思い出したのか、学生に戻った気分のように、和気あいあいと話を繋げてくる。

 ふと、左手のくすり指に光るものが見え、僕のムショ行きも気にせず、無事に幸せになったんだなと安堵した。


「僕に奥さんなんていないさ。ずっとあの子のことだけを……」


「はい? すみません。トラックの音がうるさくて。何でしょう?」


「ああ。じゃあ、近くの喫茶店でお茶でもしようか。積もる話も沢山あるし」


 気晴らしに散歩でもしようと、偶然出会ったのが、まっ昼間で街中の交差点。

 バイクや車などの通りも多く、世間話に向いてる環境とも言えない。


「えっと、困ります。今は買い物の途中ですし、私には旦那がいますから……同級生の龍郷という方ですが」


「知ってるよ。まあ、細かいことは言わないでさ。別に龍郷なら気にしないと思うし、今日は僕がおごるからさ」


「だったら、そこの自販機でいいですよ」


 烈火が大通りの片隅にある赤い自販機を指さして、優しく笑ってみせる。


 その笑顔は心を惑わす罪だ。

 男は単純な生き物だから、本当に好きな人だけに向けてほしい。


「全く、相変わらず烈火ちゃんはつれないね」


「人の目がありますし、下手に誤解されたら、後々面倒ですから」


「やれやれ、君はお固いなあ」


「神楽坂さんの考えが、ちょっと変わってるんですよ」


 そうだよな、好きな女一人を巡って、あのような乱闘騒ぎを起こしたんだ。

 新聞やTVなどのメディアにも大きく取り上げられたとも言うし、烈火も一人の女として身の危険を感じてるだろう。


「あははっ、僕も変質者扱いか」


「大丈夫ですよ。私の旦那も少し変わってますから」


 烈火の言うことにも納得できる。

 友人だった僕からしても、龍郷は多少、手を焼く相手だったなと……。


「まあ、そこが付き合うことになった理由ですけどね」


「確かに龍郷は変だよね。考えが凝り固まってるというか」


「そこは一途と言ってもらわないと」


「はあ? 笑わせてくれるよ。別の女と浮気をしていた男なのにな」


 龍郷の女癖の悪さは、僕の耳にも良く届いていた。

 高校を卒業したらデザイナーの専門学校に通うからと勉強がてら、女子の衣服を脱がせて、ファッションデザインの研究をしていたとか、そんな服を片手に白昼堂々、衣装相手に遊び呆けたとか、色んな怪しい説がある。


「結局、春子は助からなかったのにさ……」


 あれから春子は救急病院に搬送されたが、想像以上の出血で脳をやられ、意識のない寝たきり状態となり、延命治療で命を繋いでいる。


 喋りもせず、感情もなく、食べることも忘れ、胃袋に直接送る栄養チューブや点滴により、栄養補給はしてはいるが、あれはもう人間といえる代物じゃない。

 もう何年も意識がない春子は、死んだも同然だった……。


「それなのにアイツは今日まで、のうのうと生きて……」


 あの時、刺し違えでも、キッチンバサミで龍郷を葬っておけば良かった。

 例え、犯罪行為で刑務所に長々と居たとしても、今回のように出所すれば、春子、そう大好きなハルに逢えた。

 そうすれば、独り身の君と永遠に結ばれることもできたのに……。


「烈火ちゃん、僕と一緒に駆け落ちしよう。僕なら君を幸せにできる」


「ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど、私には小さな子供がいるから」


 だったらその償いで、烈火を幸せにすればいい。

 どうせ仕事が忙しくて、妻との愛も育んでいないんだろう。

 子供の面倒を、こうやって妻に押しつけているからに……。


賢司けんじには辛い思いはさせないと誓ったの。息子だけは何不自由なく育てたい」


「烈火ちゃん、だったら僕が……」


「なに?」


「いや、何でもないよ。それより時間は大丈夫かい?」


 思わず、賢司君の育て親になろうかと言いかけて、僕は缶コーヒーを飲み干す。

 無糖のブラックだけに頭がよく冴える。


「あっ、そうでしたね」


 あきらの優しい気遣いに時間を気にして、スマホを見る烈火。


「コーヒー。ごちそうさまでした」


 烈火がカフェオレの空き缶をごみ捨て場に捨てて、律儀にお礼を述べる。

 春子のようにはいかないが、こんないい女、アイツなんかには勿体もったいない。


「うん、いいってことよ。今度、子供さんも連れておいでよ。美味しいケーキ屋さんがあるんだ」


「はい。お持ち帰りなら喜んで」


「あははっ、ほんとにガードが固いねえ」


「いえ、それが普通の反応かと。それでは」


「ああ、賢司君にもよろしくね」


 さり気なく息子とも仲良くなりたいアピールを出し、ケーキという甘い言葉で釣ってみたが、結局はスルー。


 でもこれでいいんだ。

 僕の計算通りに、盤上の駒は動き出したのだから。


「さてと、これで状況証拠は揃った。後は龍郷をハメるだけだ」


 僕は北風が冷たい冬空を気にも止めずに、ゆっくりと歩み出す。


 行き先は近所のホームセンター。

 そのために、家からバッグを持参してきた。   

 計画を実行するための下準備だ。


「今度は僕がお前の家庭環境を壊してやる」


 お前が僕から春子を奪ったように、僕が仕返しとばかりに、お前から大事なものを奪ってやる。


 思い知らせてやるさ。

 真の絶望と、孤独というものが何かと──。



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