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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第5章 幻となった親友と四姉妹では得られなかった真実

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第26話 僕が消えても魂は残るから──。

「店長、ちょっといいですか」


 お昼過ぎ、フロア担当の僕は奥の調理場で、忙しく作業をしている美冬みふゆに声をかけた。


「何、だから言ったじゃん、店長は休みだってば」


 ちなみに美冬は店長でも店長代理でもなく、普通のアルバイトである。

 店長よりも、手早くさばける仕事っぷりを見せつけられ、僕が勝手に尊敬の意を込めて、そう呼んでいるだけだ。


「夏休みの課題活動をしてない僕に、ホモサピエンスの観察日誌をつけさせて下さい」


「はあ? そんなんいいから、お客さんのオーダーを!」


 美冬が僕を急かすのも無理はない。

 今、キッチンは戦場となっていて、次々とカウンターに注文の伝票が置かれている。 

 少しでも気を抜くと、伝票の波に飲み込まれそうな緊迫した雰囲気だ。


「そのオーダーは店長に通すよ。僕は今から早退するから」


「はあ? どこ行くのよ。待ちなさいー!!」


 美冬が大きな中華鍋を振るいながら、僕を呼び止めようとしたけど、その程度で怯むチキンな僕じゃないよ。

 というかハンバーガー店で使用する、中華鍋とは一体?


****


「はあはあ……。どうやら見失ったようだね……」


 例の親子がレジで支払いをした後をこっそりと追いかけて、店を飛び出し、悟られないよう、十分な距離をとっていたけど、その姿が途中から途切れ、行方知らずとなっていた。


「──ねえ、どこまで行くつもりですか。動物園なら、とっくに過ぎたんですが?」


「おっかしいーなー、おじさん、初めての場所で迷ったかも」


「だったらどうして昼間から、こんな飲み屋街を歩いてるんですか?」


 ひょんなことから、後ろ側から話し声が聞こえてきて、僕は条件反射で振り向いた。

 ちょうど、銀の短髪の男がアラサーの女性を、飲みに誘っている様子だった。


 何だ、見失ったと焦っていたら、僕の身近に居たのか……。


麻里亜まりあ、君とは、酔って話がしたいのさ」


「あのねえ、賢司けんじもいるでしょ。それに今の私の名前は烈火れっかですよー!!」


「まあまあ、そう堅いことを言わないでさ、賢司君にはオレンジジュースを飲ませて、のんびりと昔のことを語り合おうじゃないか。ハッハッハッ!!」


 くっ、さっきから見ていれば、とんでもない大人だな。

 そうそう、賢司の母さんって、真理亜とも言うんだったね。

 理由はどうあれ、僕の知らぬ間に、名前がコロコロ変わるんだから。

 まさにゲームの主人公プレイヤーみたいだよ。


「どうやら冷ややっこさん(やっこでは?)は重症みたいだね。シキノン」


「あれで本当に自称、愛を施す、お父さんだとか、信じ難いですね」


「ねえ、志貴野しきのくん、あの現場に殴り込みは必要?」


「ああ、僕としては、賢司の芽が青いうちにって……、おわっ!?」


 そう、料理に例えたら、フライドポテトを作る時、芽が付いたじゃがいもは取り除かないと毒になる。

 だから、すぐに切り取る算段だったんだけど……。


「何でここに君たちがいるんだよ!?」


「何でって、美冬にLI○Aで頼まれたんだよ。真面目なイメージの君が、勝手にバイト先を抜けるなんて、考えが普通じゃないって」


「要するに、監査役なのだ」


 それを言うなら、監視じゃないかな。

 ヤベエ、夏希なつきのお馬鹿加減も、ここまでくると参っちゃうね。


「……夏希、監査の意味、分かってる?」


「まあ、シキノンの経過観察ということだよね。感無量」


「はあー、脳天気なのは、相変わらずね」


 脳天気なのは夏希を含めて、君ら姉妹の方ではと、ツッコミを入れたくなる。


「そんなことより、ターゲットが動き出したみたい」


「じゃあ、行こうか。シキノン」


「じゃあ、じゃないよ!」


 僕だけならまだしも、四人で尾行なんかしたら一瞬でバレるでしょ。

 こんな怪しげなところにまで来て、どうしてくれるんだよ。

 僕は賢司たちに気づかれないように、無言の圧で三重咲みえさき姉妹を睨みつける。


「いやん♪」


「何もしてないでしょ!!」


 春子はるここと、ハルが顔を両手で塞いで、クネクネと踊り出す。

 中学生とは思えない、そのセクシーな腰のくねり、もうフラガール目指したらどうかな。


「いや、その鋭い目つきは黙って脱げよな、カワイコちゃんみたいな感じだよ」


「なるほど。秋星あきほお姉、勉強になりやす」


「違うでしょ!!」


 いつから僕は、そんな変質者になったのさ。

 まあ、踊りに心を奪われたのは事実だけど、純粋に踊りに魅入っただけで、怪しい者ではない……と、心から信じたい。


「そんなことより、賢司くんたちがいなくなったよ」


「くっ、早くもドロロンと消えたか」


「誰のせいだよ!!」


 僕は完全にキレて、姉妹たちに怒りの声をぶつけていた。

 だけど姉妹は何ともない素振り。

 年長者の僕もなめられたものだよ。


「お兄ちゃん、この繁華街じゃあ、愛の巣に行ったっぽいよ」


「でも賢司がいるから、そんな場所には?」


「あれれ、志貴野くん知らないの。最近の愛を囁く場所では、託児所も完備してるんだよ」


「シキノンおくれてるぅーw」


 夏希が何もかも分かったかのように、悪戯げにニタリと笑う。


「賢司は中学生なのにか!!」


「はうっ、イタイイタイ!?」


 そんな天然娘に『おくれてるのはお前の頭か』と、無言の悟りにて、グリグリ攻撃でお返しをする。


 はあ、こんなコソコソするよりも、やっぱり賢司に直接会って、話をした方がいいよね。

 僕は覚悟を決めて、ピンクのネオン街を突き進む。


「──なあ、あんたら、俺らをつけて、何がやりたいんだ?」


「なっ!?」


 だが、曲がり角を抜けた途端、逆に鉢合わせになり、賢司グループ三人組に囲まれてしまう。


「ねえ、何が目的か知らないけど、時と場合によっては、警察に通報するよ?」


「そいつかい。賢司君が言ってた、怪しい奴らって?」


 おじさんが口にくわえた煙草を一服しながら、僕の顔を覗き込む。

 ツーンとくる煙の刺激臭につられて、思わず咳き込みそうになる。


「まだ、お尻に殻が付いた子供じゃない。とても悪さをするようには見えないわよ?」


「いや、母さん。この男からは危険な香りがするよ。まるで俺のことを知ってるかのように」


 さっきから賢司は、僕を敵とみなしているのか。

 違うよ、僕は唯一の理解者であり、君のことを親友だと思っている……その想いを言葉にするんだけど……。


「賢司、ちょっと待ってよ。何かの間違いでしょ?」


「初対面で、何で俺の名前を知ってるんだよ!」


「ゴフッ!?」


 その答え方が悪かったらしく、不機嫌な賢司のボディブローがお腹に当たり、苦痛で脂汗を垂らした僕は、そのまま両ひざをついて、しゃがみ込む。


「賢司君、何だか分からないけど、君の言いたいことは理解できるよ」


「フフフッ。要するに邪魔者は消せでしょ?」


 二人の大人たちも突然含み笑いをし、さっきから何か様子がおかしい。


「あなた、他所の人間のようね。スパイか、それとも浮気調査かしら?」


 その賢司の母さんの手には、黒く輝く筒のような物が握られてる。


 それから発砲されて気付いた。

 僕は拳銃のような物で、右肩を撃たれたのだと。


「……ぐああああっ!?」


 痛い。

 歯医者さんで、虫歯を治療するような痛みじゃすまない。

 あまりの痛みに、体中の神経をもっていかれそうだ。


「志貴野くんー!?」


「シキノン!?」


「お兄ちゃん!?」


 秋星たちが心配して、僕の安否を気遣ってくれる。


 やっぱ姉妹だけあって、優しいな。

 彼女たちとは血縁関係はないけど、これが兄妹愛というものかな。


「もっ、もう立たないでいいから……」


「いや、秋星。僕は……何があっても逃げないから……」


「だったら、この場で消えな!」


 賢司の母さんが銃口を僕の額に付ける。

 気のせいか、先端から生温い液体が溢れたような気が……僕自身の血液なのかな。


「志貴野くんっー!?」


 ああ、秋星、そんな表情しないでよ。

 僕が消えても魂は残るから──。



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