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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第5章 幻となった親友と四姉妹では得られなかった真実

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第22話 それをこの男は、やすやすと手に入れてしまったのだ

 毎日のように日光が照りつけ、うだるような暑さで夏真っ盛りの午前。

 アスファルトからは蒸気が出ていて、遠くからでは蜃気楼にもなる異常気象。


「さあ、今日はどの服を買おうかしら」


「母さん、マジで勘弁してよ……」


 その熱に溶かされそうな道路を、二人の親子を乗せた、黒い軽自動車が突っ切っていく。

 助手席の子供は苦々しい顔をしながらも、時折、運転手の母親に話しかけられ、それなりに楽しい表情もしていた……ように見て取れたが……。


****


 ──13歳になっても、子供扱いな俺は夏休みを迎え、母さんと共に冷房がガンガンに効いた、都会のデパートを訪れていた。

 何だよ、そんくらいの歳なら、まだガキじゃねーかと思ってるか?


 アラサーで俺という子持ちがいるのに、母さんは派手で、露出度の高めなヒラヒラな服で、俺を惑わすんだぜ。

 セクシーなボディーラインで、出るとこは出てるモデル体型だから、俺みたいな子供でも簡単に落ちてしまうのさ。

 おまけに美人だし、足はスラリとして長いし、俺の理性が持たないつーの。


「こんなイベントが、月に一回あるんだぜ。あの日じゃあるまいし……」


「んっ? 何を一人で呟いてるの、賢司けんじ?」


「かっ、母さん!? 何てカッコしてんだよ!?」


 白を強調とし、サイズがぎちぎちのエロい服装で、こっちに寄ってくる母さん。


 確か、ワンピースの種類に入るヤツだ。

 色白で華奢な鎖骨が見え、胸のラインは極端に出てるし、スカートの丈は短いし、男を誘惑する服に見えなくもないが……。


 こういう危ない服を好むから、同じ立場の男としては、いい加減に落ち着いてほしいというか……。


「どう? 似合うかしら。白馬の王子くん?」


「母さん、周りの男も見てるから!!」


「見てるって誰が?」


 母さんが周囲に目を向けた途端、服選びをしていた野獣たちは、そのイヤらしい目線を逸らし、あくまでも知らないフリを突き通す。


 おい、お前ら。俺の目は誤魔化せないぞ。

 すぐそばに恋人がいるのに、ギラついた瞳で母さんを見ていただろ?


「おいっ、お前ら、そんなにスカスカに飢えてるんだったら、頭ん中に鉢植えの培養土でも植えてな!」


「コラッ、そんな悪口を叩かないの!!」


 母さんが『そのような悪い子に育てたつもりはない』と呟き、俺の頭を子猫のようにそっと撫でる。


 ああ、そうだ。

 母さんが俺を叱る時はいつもこうだ。

 決して怒鳴ったり、ましてや暴力を奮ったり、意地が悪いようにののしることもない。


 俺という子供を大切な品物のように扱う、心から優しい母さんだった。


「──フフッ。君は相変わらず変わってないね」


「いえいえ。先輩の包容力には及びません」 


 ふと、この洋服売り場から先輩と呼ばれた、長身の冴えない眼鏡の男が、母さんの前に現れる。

 だけど、俺と母さんは警戒心を抱くことはなかった。

 俺も承知済みだったし、自然体な対応の母さんも初対面の相手じゃないからだ。


「包容力って、そんな淫らな格好で言うのかい。いくら紳士な僕でも、間違って押し倒しそうなんだけどね……」


「ああー、すみません、先輩!!」


「謝るくらいなら、さっさと着替えてくれるかな」


「あっ、はいっ!!」


 あの落ち着きのある母さんが、急に冷静さを失い、耳まで真っ赤な顔になって、ウサギが跳ねるように試着室へと飛び込む。 

 俺はおじさんに連れられ、近くの休憩所へと移動した──。


****


「──毎度ながらごめんね。子供ながらでも感じちゃうでしょ」


「俺、漢字の読み書きなら、誰にも負けねえ」


「フフッ。その言い草。ますます、あの人に似てきたねえ(苦笑)」


 この眼鏡をかけた銀色の短髪なおじさんは計ったかのように、いつも俺らの前に音も気配もなく現れる。

 まるで父さんを亡くした母さんを、我がモノにするかのように……。


「ねえ、賢司君はアイスクリームは好きかい? おじさんが奢るよ」


「いえ、間に合ってますんで」


「あはははっ。君は本当に面白い子だねー」


 おじさんが、ズボンのポケットから煙草の箱を出し『あちゃー、ここ禁煙になったんだー』と、箱を握りしめ、心底悔しそうな顔をする。

 ちょっと昔まで、自由に深い味わいを楽しめる嗜好なアイテムだったのに、喫煙者も肩身が狭い時代になったものだ。


「……あの、神楽坂かぐらざか先輩」


「おおっ? ちゃんと着替えてきたんだ。お利口さんだねー」


「かっ、からかわないで下さい」


 いつものシャツと短パンというラフな姿の母さんが、おじさんの目の前で凄む。

 何か、今にも甘い行為をしそうだし、二人との顔と顔との距離が近過ぎないか!?


「この間、約束しましたよね。私の子供が居る前では会わないって」


「あー、そんなこと言ったっけなー?」


「子供の教育上、愛人を連れての行為は良くないと、先輩から言ってきたんでしょ。まあ、愛人じゃないですけど」


 珍しく穏やかな母さんが、このおじさん相手だと子供のようにムキになって、反論をする。


 こんな母さんの影のない態度、いつぶりだろう⋯⋯。

 あの日から、闇に埋まっていた過去の光をほじくるように⋯⋯。


「うーん、だったら僕と再婚でもする?」


「いえ、子供が立派に巣立つまで、そんな気はありませんので」


「つれないな。それじゃあ、シワシワのおばあちゃんになっちゃうよ?」


「息子の将来がありますから」


「あの人と一緒で真面目だね、君も」


「先輩ぃぃぃー!!」


 母さんが柄にもなく照れている。

 一度は父さんを亡くして、心も身体もやつれていた、あの母さんがだ。


「そうだ、烈火れっかちゃん。今度のお昼に、賢司君と一緒にランチでも行かないかい?」


「でも……」


「お昼だったら安心して、その子も連れて来れるでしょ」


 そうおじさんが陽気に言った後、今度は俺の傍にしゃがみこみ、耳元でボソボソと話しかけてくる。


『……これなら君も問題ないだろ』


『何で俺が関係あるんだよ』


『何でって? お母さんのことが好きなんでしょ?』


「ななあああっー!?」


 赤の他人のおじさんに見抜かれた恋心に反し、思わず声を張り上げる。

 母さんはあまりの叫びに驚いて、俺の心配をして頭を撫でてくる。


「どうしたの、賢司。そんなに大声出して顔を赤くして? 神楽坂さんに怖いイタズラでもされた?」


「はははっ、烈火ちゃん。この子も思春期を迎えた立派な男の子というわけさ」


 おじさんの言うことは、いつもハズレがない。

 少々、早熟だが、今の俺には男と女が行き着く先すらも分かる。


「ちょっと、あんた……」


「あんたはないだろ。僕には秋蘭あきらっていう、立派な名前があるんだからさ」


 口では笑っていても、秋蘭おじさんの目は真剣そのものだった。


「そんな口の聞き方がなってない悪い子には……執行モードオンー!!」


「ちょっ、ちょっとめろ!」


 俺が嫌がっていても、秋蘭おじさんの攻撃の手は緩まない。

 次は俺の両腕を掴んで後ろに回し、抵抗できない体に、正義のお仕置きを仕掛けてきた。


「ちょ、ガチでくすぐったいって!?」


「フフーン。抵抗しても、無駄でちゅよー」


「だから止めろおおおおおー!!」


 秋蘭おじさんの攻撃、聖なるくすぐりは最高にくすぐったい。

 周りのギャラリーが、スマホを片手にワイワイと熱い騒ぎを立てても、俺のハートはブルーのままだった。


「あははっw」


「ほんと、おかしいったら、ありゃしないw」


「母さん……」


 そんな光景に母さんが、あんなに大笑いしたのは久しぶりだ。


 俺の知る限りでは、まだ幼い頃、幼稚園の年長だった時にあった笑顔。

 家族水入らずで食卓に響いていた、あの楽しそうな表情は、もう二度と手に入らないと思っていた。


 それをこの男は、やすやすと手に入れてしまったのだ。


 この男は何者なんだ。

 母さんと昔、何かあったのか?


 学生時代の知り合いにしては歳が離れすぎだし、大学のサークル時代の友人?

 このフランク感なら、元恋人というのもあり得る。

 それに何で二人とも、そんなに嬉しそうに会話を楽しんでるんだよ。


「──もうしょうがないわね。そのデート付き合ってあげるわ」


「ホントかい?」


「ええ。先輩が全部奢るんでしょ。ホントの本当よ」


「ははっ。ちゃっかりしてるねえ……」


 こうして、母さんは父さん以外の男と食事に行くことになった。

 なぜか、この思春期真っ只中な中学生の俺も引き連れて……。



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