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第68話:夜明

大内裏の外へ出ると、冷たい風がナユタたちの頬を打った。

空は白み始め、長く暗い夜が終わりを告げようとしていた。


都の様子は、昨日までとは全く違っていた。

無気力に歩いていた人々が、結界の消滅と地響きに驚き、家から飛び出して口々に騒いでいる。

そして、路地のあちこちにある鉄格子が外され、暗渠から泥にまみれた人々が恐る恐る地上へと姿を現し始めていた。


「穢れだ……!」と叫んで逃げ惑う者。

生き別れた家族の姿を見つけ、泥だらけのまま抱き合う者。

混乱と怒号、そして涙。

それは決して美しい光景ではなかったが、そこには確かに「人間の営み」が戻っていた。


「……うるさくなったね」


朱音が、遠くの喧騒を聞きながら呟いた。


「ああ。でも、これでいいんだ」


ナユタは大きく深呼吸をした。

冷たく澄み切った無臭の空気ではなく、土と埃、そして人々の生活の匂いが混ざった風が胸を満たす。


「あにさま、あねさま」


スイが、二人の手をそれぞれ引っ張った。

彼女の目は、空の彼方、朝日が昇ろうとしている東の空を見つめていた。


「光の匂いがする。……あたたかい匂い」


「そうだね。行こうか」


ナユタたちは都に背を向け、街道へと歩き出した。

彼らは英雄にはならない。国を救ったなどと名乗り出るつもりもなかった。

右大臣という一つの理不尽を壊しただけで、この時代にはまだ無数の闇が残っている。


だが、彼らの足取りは軽かった。

見えない鎖に縛られ、息を潜めて生きる必要はもうない。

理不尽があれば怒り、悲しむ者がいれば手を差し伸べる。

時空を超えて出会った三人の、泥臭くも果てしない世直しの旅は、この夜明けの光と共に、新たな一歩を踏み出したのだった。

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