表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/69

第64話:矛盾

「朱音さん、スイを守って!」


ナユタは叫び、落ちていた近衛兵の刀を拾い上げた。

襲い来る槍を刀で弾き、体術で躱す。現代の総合格闘技の動きに、この時代で生き抜くための野生的な勘が混ざり合う。

だが、兵士の数は圧倒的だ。切りがない。


「蘇芳! あんたの術で、なんとかして!」


ナユタが叫ぶが、蘇芳は壁際で煙管を咥えたまま、動こうとしない。

ただの観客のような、冷ややかな目。


「彼らは右大臣の権威に絶対服従している。私の幻術で心を揺さぶるには、少し時間がかかる」


「根性なしめ……ッ!」


ナユタは毒づきながら、近衛兵の波を凌いだ。

朱音は、スイを背中に庇いながら、近衛兵を次々と殴り飛ばしていた。しかし、都の霊力が右大臣に集まっているせいか、彼女の鬼としての身体能力も、以前ほどの圧倒的な威力を持っていなかった。


ナユタは、刀を構え直しながら、玉座に座る右大臣を見た。

青白い光に守られた、完璧な存在。


「……あんたの言う秩序は、ただの恐怖だ」


ナユタは声を絞り出した。


「誰もが息を潜めて、誰かが排除されるのを黙って見ている。それが完璧な世界か? あんた自身が、その恐怖を作り出している最大の穢れだ!」


右大臣は、書簡に向かっていた筆を止めた。

その目には、初めてナユタに対する不快感が浮かんでいた。


「愚かな。穢れとは、秩序を乱す不確定要素のことだ。貴様のような、理屈を捏ねる浮浪者こそが、排除されるべき穢れなのだ」


「あにさま!」


スイの声が、ナユタの脳裏に響いた。


「あの人の光……床下から来てるんじゃない。天井! あの大きな黄金の飾りの奥から、すごく強い力の匂いがする!」


ナユタは天井を見上げた。

広間の中央、右大臣の真上にある、巨大な葵の紋の黄金細工。

都の霊力は、そこから右大臣へ供給されていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ