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第22話:商魂

山を越え、三人はようやく賑やかな宿場町・大津おおつにたどり着いた。 ここは琵琶湖の水運と、都への陸路が交わる物流の要所だ。 だが、三人の足取りは重かった。


「……腹減った」


ナユタが腹をさする。 厳鉄のアジトから食料や金目の物を持ち出したが、道中で出会った難民や、家族の元へ帰る手下たちに分け与えてしまい、手元にはほとんど残っていなかった。


「ナユタくんは、お人好しが過ぎるよ」


朱音は呆れ顔だが、スイの手を引くその手は優しい。 スイも疲労の色が見える。まずは宿と飯を確保しなければならない。


「これを売ろう」


ナユタは、厳鉄のアジトから持ってきた数本の太刀と、漆塗りの小箱(文箱ではない別のもの)を取り出した。 質屋の暖簾のれんをくぐる。 店番をしていたのは、**五兵衛ごへい**という、揉み手をした愛想のいい男だった。


「へぇ、こりゃまた……」


五兵衛は太刀を受け取ると、じっくりと検分し、残念そうに溜息をついた。


「お客さん、こりゃダメだ。刃こぼれがひどいし、錆も浮いてる。戦場で拾ってきたナマクラでしょう? こんなの、鉄屑の値段にしかなりませんよ」


「え、でも……」


「それにこの箱も、塗りが剥げてる。……ま、若い人たちの旅の助けだ。特別に銭百文(約数千円)で引き取りましょう」


安すぎる。現代人の感覚でも分かる。 だが、ナユタには相場が分からない。それに、背に腹は代えられない。


「……分かりました。お願いします」


ナユタが渋々頷くと、五兵衛はニタリと笑い、銭を放り投げた。 店を出たあと、スイがナユタの袖を引いた。


「あにさま。あの太刀……『備前びぜん』の銘があったよ」


「え?」


「錆びてたけど、研げば名刀になる。……あの商人、嘘つき」


スイの言葉にナユタは振り返った。 店の奥で、五兵衛がせしめた太刀を愛おしそうに磨き、「カモがネギ背負ってきやがった」と高笑いしているのが、透視できたような気がした。

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