表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

第12話:前夜

夜明け前。雨はまだ降り続いている。 ナユタと朱音は、祭壇から少し離れた上流の堤防にいた。


「ここだ」


ナユタが泥をかき分けると、堤防の土台となる杭に、人為的な切り込みが入っていた。 道冬の部下が細工した場所だ。 このまま増水すれば、ここから決壊する。逆に言えば、ここさえ補強すれば、決壊は防げる。


「これを直せば、人柱なんていらないことが証明できる」 「でも、この水圧だよ? 人の手じゃ無理だ」


濁流が杭を揺らしている。 ナユタは懐から、宿で調達した「あるもの」を取り出した。 油紙と、竹筒、そして大量の砂利。


「朱音さん。……君の怪力があれば、あの岩、動かせる?」


ナユタが指差したのは、川岸にある巨大な岩だった。 重さは数トンはあるだろう。


「余裕だけど? 何するの?」 「『水制すいせい』を作る。川の流れを変えて、堤防への圧力を逸らすんだ」


ナユタは現代の治水工法を応用しようとしていた。 ただ杭を直すだけでは、道冬たちにまた壊される。 だが、巨大な岩で川の流れそのものを変えてしまえば、彼らにも手出しできない。


「ナユタくん、さすだがよ」


朱音はふふと笑うと、着物の袖をたすき掛けにした。


「で? あのキザな陰陽師には、どう落とし前をつけさせる?」 「あいつの『予言』を利用する」


ナユタは、雨に濡れた顔を拭った。


「あいつは『人柱を捧げれば雨が止む』と言った。……なら、僕たちは『人柱なしで雨を止め、堤防も守ってみせる』。そうすれば、あいつの神託はただの嘘になる」


それは、神との勝負だった。 いや、神を騙る詐欺師との、知恵比べだ。朱音が岩に手をかける。 ズズズ……ッ。 常人なら数十人でも動かない巨岩が、彼女の細腕一つで浮き上がる。


「さあ、始めようか。夜明けまでの大工事だ」


雨音に紛れて、二人の戦いが始まった。 儀式まで、あと数時間。 少女の命と、町の運命を賭けた夜が明ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ