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夜に 2

 「それとなんだけど、、、。」

 翔太の言葉に、続きがあるとは思っていなかった為、既に、手に持った干し肉に集中していたセレアは、慌てて取り繕う。

 「なっ、なに?」

 ー 変な顔してなかったかしら。 ー

 ちょっと大きく開けていた口を、急いで閉じて、手の甲で隠す。

 驚きの為か朱に染まった頬に、見開かれた目と、手に持った干し肉がもたらす残念感が混じり、天然なかわいらしさを放つセレア。

 翔太は、自分の目線がセレアに釘付けになっていることに気が付き、急いで手を振って、見ていないとアピール。

 「あっ。ちょっと気になって聞いてみたかっただけで、そんなに驚くとは思わなくって、で、、、。ごめんなさい。」

 翔太の慌て具合に、少し、取り戻したセレアは、干し肉を持った手を下して、頬を染めたまま、可愛く横を向いて見せる。

 「もぅ。いいわよ。それで、何が聞きたいの?」

 翔太も、顔を赤くして横を向いている。

 「ん。その、ブラックって、何を食べるのかなーーって。」

 セレアは、干し肉を持っていない腕で抱いている、ブラックに目を向けた。

 「そこね。」

 ブラックは、いつの間にか寝込んでいる。

 セレアは、ポンポン、と、優しくブラックを撫でた。

 「それは大丈夫なはずよ。精霊獣は、基本的に魔素を吸収して存在しているから。」

 「へぇーー。えーっ、じぁあ、何も食べれないの?」

 セレアは、軽く肩をすぼめた。

 「それはないわ。普通に私たちが食べるものなら、何でも食べれるはずよ。もちろん、狼が食べるものも食べれるばす。」

 「そっか。口があるのに食べれないなんて、可哀そうかなって思ったけど、いいんだ。」

 納得したのか、うなずく翔太を見て、セレアは、少し微笑んだ。

 「面白い考え方するのね。食べれないのが可哀そうなんて。」

 「そっ。そう?」

 セレアの微笑む、大人っぽい姿を直視できない翔太は、うつむき加減に答える。

 「そうよ。まぁ、でも、この子、ブラック、ちょっと不思議なところがあるけど、大丈夫だと思うわ。」

 ブラックに、頬ずりするセレア。

 「不思議なとこ?」

 翔太も、寝入っているブラックに目を向けた。

 「そっ。体型よ。」

 「えっ?」

 セレアが、あきれたようなため息で、翔太を見た。

 「気が付かなかった?ブラック、体に対して、頭がだいぶ大きいのよね。」

 「そう言えば、、、、。」

 翔太は、走ったり、抱き上げたりしたときのブラックを思い起こし、呟いた。

 確かに、ブラックは、頭と体の比率が、スーパーデフォルメまではなくても、近いぐらいの比率になっていた。

 「おかしいと思ったのよね。フェンリルだったら、幼体でも犬には絶対負けないわ。ゴブリンでも勝てると思うわ。ホブゴブリンは、わからないけど。」

 「え、えーっと。」

 「まぁ。幼体でも、普通は、だいぶ強力だ、ってことよ。」

 わからない翔太に、セレアは、もう一つ、あきれたようなため息をつき、要約する。

 「でも、幼体なんでしょ?」

 「あのね。」

 セレアの口調が、小さい子供に諭すような言い方になった。

 「私たちが、普段の行動をしている範囲でフェンリルの幼体が見つかるなら、もっと、発見例があるはずよ。でも、そんな話は聞いたことがないわ。私の知っている範囲の人でも、見た人はいないわ。事実として伝わる伝説の物語に出てくるぐらいしか発見例はないのよ。そんな存在が、普通に行けるところで見つかると思う?逆に言えば、普通では絶対に行けないような、強力な魔物や、魔獣がいるところで、実体化していることになるわ。そんな存在が、犬に負けると思う?」

 「そうかも、、、。」

 「でしょう?でも、ブラックは、勝てなかった。体型を見れば、納得だけどね。」

 「わかるの?」

 驚く翔太に、またもや、あきれたようなため息をつくセレア。

 「あのね。体が小さいってことは、足も短いってことよ。足が短いってことは、走るのが遅いってことよ。さっき、私の方に来るときに、走るところ見たでしょう。」

 「あーーっ、あれ。」

 ー 走ってたんだ。ごめん、ブラック。歩いてると思った。 ー

 翔太は、心の中で、ブラックに謝る。

 「そ。身体能力はかなり高そうなのに、勿体無いけどね。」

 セレアは、苦笑すると、また、ブラックに頬ずりをする。

 またもや、首を傾げる翔太。

 「足が遅いのに、身体能力は高いの?」

 セレアは、もはや、顔も向けずに答えた。

 「言ったでしょ。捕まえられなかった、って。持ち上げた、っと思っても、何故かすり抜けられちゃって。」

 ー ドジョウみたい。 ー

 「とにかく、ブラックは、身体能力は高いけど、活かせる体を持ってない、ってことになるわね。」

 「そうなんだ。」

 「そ。言うなれば、ブラックは、完全な幼体になれなかった、半幼体のフェンリル、ってことになるわね。」

 そこまで言って、後、特上の笑みで、ブラックに頬ずりするセレア。

 「まぁ。可愛いから、どうでもいいけどね。」

 ブラックは、起きる様子もなく、ぐっすりだった。

読んでいただき、ありがとうございます。


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