セレアとカレンと翔太 2
慌てて手を振る翔太。
「あっ、そうじゃなくて、その後、と、言うか、これから、と、言うか、その、、、。」
なんて言うべきか考えながらも、理解してもらえた後の二人の答えが気になり、迷うままに踊る翔太を見て、
「わかる?」
セレアがカレンに、
「流石に無理だぞ。」
「ねぇ。」
驚きと迷いと、、訳がわからない、と、二人で翔太を眺めてしまう。
少しの時間。
眺めていても仕方がない、と、セレアが意を決して、翔太に声を掛ける。
「ショウタ、落ち着きなさい。」
「あう。」
「とりあえず深呼吸だ。」
「うう。」
セレアの声に気が付き、カレンに言われて深呼吸した翔太は、はっきりと二人を目に写した。
「その、、、。」
口調は弱気だったが。
「二人とも、忙しいでしょ。だから、、、。その、、、。僕がいると、、、。」
小さくなる声とともに、俯いていく翔太。
「「あーー。」」
「そこね。」
「そこか。」
セレアとカレン、同時に目線を合わせると、カレンが頷いた。
セレアが、それに頷き、翔太を見る。
「ショウタ、確認するけど、私、そんなに薄情に見える?」
「えっ、えっ。それは絶対にないよ、そんな風には絶対に見えないよ。そんなこと、間違いなく思ってないから!」
思い切り否定する。
セレアは、間違いなく見惚れる微笑みを浮かべた。
「なら、信用しなさいよ、ここまで来て、後は知らない、なんて私が言うわけないでしょう。」
主に、セレアの笑みに、頭に血が上って危うくなる翔太だったが、何とか、言うべき一言の為に耐えた。
「あっ、ありがとう。その、よろしくお願いします。」
「どういたしまして、よろしく頼むわね。」
ー ヒールが使える上に、精霊獣フェンリルのブラックを従魔にして、さらに、カレンまであっさり仲間にするような人材、手放せるわけないわ。 ー
セレアは、自分もあっさり仲間になったことは、気が付いていない。
「うん。」
嬉しそうに笑う翔太と、上手く邪心を消して微笑むセレア、そこに、区切りがついたと見たカレンが入った。
見入ってしまうほど整った、女性らしい顔に、力強さのスパイスがかかった笑みで、
「言っておくけど、あたしもついて行くからな。鍛えると言った手前、一緒に行動しないと意味がないだろ。」
カレンの笑顔に、押し落とされそうになりながら、耐えた翔太。
「うっ、うん、ありがとう。えっと、よろしくお願いします。」
「あぁ。任せとけ。よろしくだ。」
ー すぐに死んじまったら、あの時、信用した勘が外れていたことになるし、何より、レベル1のショウタに頼っちまったことになるからな、そこは、プライドとして許せん、しっかり鍛えてやるぜ! ー
ちょっと物騒な思いを、力強さに見せかけて笑うカレン。
俯いて、押し落とされないように必死の翔太は、もちろん気が付いていない。
時は戻って。
ー でも、、、。いいのかな? ー
少し離れ、横を歩いていく人達が、振り返り、二人を二度見していく様子を眺める。
珍しくない程度に歩いていくエルフ達や、獣人達。
エルフ達は普通に、男女に関係なく綺麗で、獣人達は、多少の見た目の差異により、目立っていた。
エルフも獣人も、印象に残ることは間違いなく、その為に、存在を強力に認識できる。
そしてセレアは、そのエルフ達の中においても、一際な存在なのは間違いなく、横に並んでいても、全く違和感がないカレンも、セレアと同じく、一際な存在なのは間違いなかった。
翔太は、あらためて、二人が普通よりあきらかに抜き出た存在だと気が付き、疑問を感じていたのだ。
もちろんそれは、二人を信用していないからではない。
二人の信用度は、翔太の中では、以前に知っている人達を考えても、上位であることは間違いなかった。
問題は、翔太自身の実力。
戦うことは、当然できない。
逃げるのも、難しく。
歩くことでさえ、力のなさがわかる。
知識は、もちろん、ない。
そんな自分が、二人が思っている何かを持っているとは、到底思えなかった。
当然、翔太は、以前の経験から、完全に無償のものは存在しないことを知っている。
それだけに、なおさら、疑問に思えた。
前を歩く二人を眺める翔太。
簡単に答えは出ない。
と。
浮世離れにいたセレアとカレンが、翔太に目を向けた。
「ショウタ、あれが冒険者ギルドよ。」
セレアの声に、顎をしゃくって先を示すカレンに従い、前を見る。
そこには、剣と盾を模した看板を掲げた、他の建物より二回りほど大きい建物がたっていた。
「へえーー。あれがそうなんだ。何だか大きい建物だね。」
「まぁ。組織としては大きいからな。」
「とりあえず、ショウタはここで登録して、冒険者ってことになるわ。頑張ってね。」
「うん。頑張るよ」
「しっかり鍛えてやるからな。」
「うん。よろしくね。」
ー 今は、やるしかないから。 ー
決意とともに、ギルドの扉をくぐる翔太。
「大丈夫かな?」
ぼそりと、本音が漏れた。
読んでいただき、ありがとうございます。
よければ評価をお願いします。
ここで、いったん完結にします。
ありがとうございました。
次回作を、よろしくお願いします。




