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セレアとカレンと翔太 1

 王都、ハーメストの城壁を越え、通りを歩いて行く。

 それなりの広さの通りは、最初は誰もいない状態だったが、歩いていくうちに人が増えていき、今は、賑わいを感じるぐらいに人が歩いていた。

 広場らしいところには、屋台などが出ていて、それぞれに何かを売っていて、歩いていく人々には、珍しくない程度に、エルフや、獣人が混じって普通にしている。

 翔太は、石造りの街や屋台、歩いていく人達を、物珍しそうに眺めながら歩いていく。

 「ショウタ。」

 セレアの声。

 その声の遠さに、翔太は、意外と二人から離れていたことに気が付き、小走りになった。

 「今は珍しいかもしれないけど、これから、嫌というほど見ることになるんだ、急いで見なくてもいいぞ。だから、今は離れないように確実についてきてくれ。」

 「うん。」

 カレンに頷く。

 二人が向き直ると、カレンの肩に前足をのせたブラックと目が合う。

 翔太が思わず手を振ると、

 「あん。」

 呼ばれた、と、思ったのか、ブラックが声を上げた。

 「ん?どうした?代わるか?」

 ブラックを見たカレンが、後ろで手を振っている翔太に気が付く。

 「あっ、大丈夫だから、思わず手を振っちゃっただけだから。」

 「ん、そっか。じゃあ、代わらなくても。」

 「いいよ。」

 「ん。」

 翔太は、歩き出した二人から、わざと少し距離を置くと、歩き出す。

 ー 何だか、二人、目立ってる気がするんだよね。 ー

 確かに、二人は目立っていた。

 本人達は慣れているのか、全く気にする様子はないが、横をぬけていく人々は、大半が振り向く。

 鈍い翔太でも、流石に気が付いた。

 ブラックを、代わって抱くのを断ったのも、それが絡んでいた。

 カレンは、気にしていないせいで、気が付いていないが、ブラックは、丁度、前後を逆に着けている翔太の背負い袋の上に抱かれていて、その前後ろを逆に着けている違和感を、かなり軽減していた。

 もし、翔太がブラックを代わって抱くことになれば、その違和感で、普通にしていても目立つカレンが、さらに目立つことになるが、それだけではない。

 加えられるものがあった。

 それは。

 前後を逆にして着けた背負い袋によって強調された、カレンの、もとより目立つ女性のふくらみだ。

 ー 流石に不味いよね。 ー

 王都に来るまでのあいだ、カレンが振り向くたびに気になっていた為、横を抜けていく誰それたちも、気にすることは間違いないと。

 同時に、翔太は、そんな二人の近くに自分がることに気が引けてしまっていた。

 その為、目立たないよう少し離れて、他人行儀を装ってみていたのだ。

 ー でも、、、。 ー




 少し前。


 城壁に開けられた門を通り抜けようとした時、意を決した翔太が足を止めた。

 「あっ。そのーー。ええっと。そのーー。」

 前を行く二人に、声を掛けているつもりらしい。

 その声に気が付いた、セレアとカレンが立ち止まる。

 「どうしたの?」

 「ん?どうした?」

 俯いた状態で、その、あの、と、繰り返す翔太。

 二人は、少し目線を合わせると、首を捻った。

 幸いにも、通りには、三人以外、誰も他にいない為、誰かの邪魔になることはない。


 ちょっとして。


 思い切った様子で、翔太が、顔を上げ、

 「あのっ、ここまで一緒に来てくれて、ありがとう、て。その。」

 赤くなりながら、必死にお礼を。

 それに、セレアが、少し目を丸くし、カレンが、少し感心した表情に。

 「驚いたわ。ショウタ、意外と大人だったのね。」

 「あたしも驚いた。見た目より子供に見えてたけど、大人のところがあるとはなぁ。」

 「えっ。感心するとこなの?」

 ー お礼を言っただけなんだけど。 ー

 以前の翔太の記憶から、感謝は、ちゃんと伝えた方がいい、と、なっていたからだが、感心されるとは思っていなかったのだ。

 伊達に、孤児として苦労していたわけではなかったらしい。

 「あたしには、そんなに気にする必要ないぞ。どちらかと言えば、ついてきたのはこっちだし、助けてもらってるしな。」

 笑うカレン。

 「私も別にいいわよ。手伝ってもらってるし、利益も出てるし。」

 セレアは、今更、と言いたげに、肩を竦める。

 「あはは。その、それならいいんだけど、、、。」

 事も無げに返されたことで、そこまで気にしなくて良かった、と、多少、安堵。

 そこへ。

 「で?他にもありそうだけど、何だ?」

 わかってるぞ、と、言いたげなカレンに、セレアは、小さく息を吐いた。

 「かなり言い難そうだったから、黙っていたけど、ついでに言っておいた方がいいと思うわ。なに?」

 そのあたりは、二人の方が上手だったらしく、王都が近くなって以降、立ち止まっては言いたそうにして、諦めて歩き出す、を繰り返したことに気が付いていたらしい。

 あっさり言い当てられた翔太は、また、俯いた。

 が。

  ー 今しか、、、。 ー

 「んっと、その、、、。二人はこの後、どうするのかな、って。」

 決意はしたものの、自信のなさから、ごにょごにょと、小さく言ってしまう翔太だったが、二人には、しっかり聞こえていた。

 「?冒険者ギルドに行って、ショウタを登録するでしょ。」

 「その後、あたしの鎧を見に行く。」

 何が言い難いのかと、二人が疑問符を浮かべた。


読んでいただき、ありがとうございます。


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