王都へ 8
カレンが伸ばした手が、ブラックの頭を撫でまわす。
「凄いな、かっこよかったぞ。」
「えへへ。」
嬉しそうにしているブラックに、ちょっと自慢げに鼻を高くする翔太。
「本当ね、私としては、可愛ければ他はどうでもいいから関係ないけど、もったいないと思うわ。」
翔太とカレンの視線を受けて、セレアは、両掌を上に向けた。
「だって、ねぇ、体格が、、。」
カレンが、息を吐く。
「しょうがないさ、それに、あたしとしては、一回は助けてもらってるから、十分だね。」
「それは、私も賛成するわ。」
「んっと、わからないんだけど、、、。」
翔太が、交互に二人の顔を見る。
「前にも言ったけど、ブラック、体が小さすぎるのよ。」
「正直、正面切って戦うなら、成体のホーンラビットでも苦しいだろうな。」
肩を竦めるセレアに、苦笑するカレン。
「その、つっ、つまりは、、、。」
「あんまり、強くない、ってことになるわ。」
「まぁ、あんまり強くない、ってことだな。」
セレアとカレンが同時に、同じような答えを言うのを聞きながら、翔太は、抱きなおしたブラックが、欠伸をしているところを眺めた。
「あっ、でも、ブラックにもレベルがあるんだよね。」
翔太より半歩前に出ていた二人が、ブラックに目を移す。
「そりゃあ、あるんじゃない。」
「あると思うわ。」
「じゃあ、ブラックも、レベルが上がれば強くなれるんだよね。」
妙案とばかりに喜ぶ翔太に、二人は、表情を曇らせると、
「体格、変わるかなー。」
「ビックボアみたいに大きくなるとか?」
カレンは腕を組み、セレアは顎に手を当てて、考え込む。
「だっ、駄目なの?」
二人を見て、翔太が、沈み込んでしまう。
そこへ、セレアが、はっとしたらしく、ブラックを見た。
「あっ。でも、ブレスは大きくなるんじゃないかしら。」
カレンが、ぽん、と、手を打ち。
「おっ、確かに。」
「ほんと?」
翔太が、目を輝かせた。
「間違いないと思うわ。」
「でも、どうすりゃ上がるんだ?」
カレンが首を捻る。
翔太とセレアも、いったん、目を合わせて首を捻った。
「戦う、ぐらいしか、、、。」
「走ってもらうとか?」
「それは、かなり難しいわね。」
「じゃあ、頑張って、ブレスを沢山吐いてもらうとか。」
「そりゃあ、ブラックが大変だぞ、魔力がどのくらいあるかもわからないし。」
「ブラック、今、レベルどのくらいなのかしら?」
セレアの一言に、三人は、一度、黙った。
「高くはないと思うぞ。」
「それは、そうね。」
「じゃあ、やっぱりブレスを頑張ってもらうとか、、、。」
また少し黙る三人。
「レベルとは関係ないが、ブレスの使える回数は、知っておいた方がいいと思うな。」
「言えてるわね。」
「じゃあ、ブレスを頑張ってもらう、って、ことでいいよね。」
いそいそと、ブラックを持ち直す翔太。
「凄い乗り気だな、ショウタ。」
「だって、レベルが高い方が、いろいろ有利なんでしょ。それに、大きいブレス、かっこよさそうだし。」
カレンに、高揚した顔で答えた翔太は、一度、ブラックを自分に向けた。
「ブラック、ちょっと、ブレスを何回か頑張ってほしいんだけど、いい?」
「あん。」
ブラックも気分が上がっているのか、尻尾を激しく振っている。
「よし、じゃあ、一回目、ブラック、火。」
「ぼーーーー。」
勢いよく始めた、翔太とブラックを眺めながら、セレア。
「ふふっ、可愛いわね。まぁでも、ブレスでレベルアップは、ブラックがレベル0でもない限り難しいと思うけどね。」
「まっ、回数がわかれば十分だ。」
「そうね。」
セレアとカレンは、前を歩く翔太を眺めた。
「四回目、ブラック、火。」
「ぼーーーー。」
セレアとカレンも、暇だった為、ブラックを眺めている。
と。
ブレスが消えたところで、ブラックが光り始めた、
続いて、
「あっ!」
「えっ?」
「ほんとかよ。」
三人が、それぞれに、声を上げる。
「やったね!ブラック!おめでとう!」
翔太が、ブラックを抱きなおして、頭を撫でまわし、セレアは肩を竦め、
「まさか、本当に、ブレスでレベルが上がるなんてね。」
カレンは、額に手をあて、
「驚いた、本当に上がるとは。」
と、呟く。
「とりあえず、もう一回は、ブレスを頼まないとな。」
おめでと、の後に、翔太にかわって、カレンがブラックの頭を撫でている。
「見て、すぐにわかるぐらいの大きさになってるといいわね。」
セレアも、おめでとうの後に、カレンにかわって、ブラックの頭を撫でた。
「んっと、やってみるね。」
セレアが、撫でるのを終わらせると、翔太は、ブラックを持ち直し、
「もう一回、ブレスを頼むね。ブラック。」
「あん。」
機嫌よく答えるブラック。
「じゃあ、ブラック、火。」
「ぼーーーー。」
覗き込んでいた三人は、
「あっ、ちょっと、大きくなってる。」
嬉しそうに翔太、
「確かに、大きくはなってるな。」
感心して、カレン、
「まぁ。確認できるから、いいと思うわ。」
セレアは、少し、打診的に見て、頷いた。
三人は、もう一度、代わる代わる、ブラックの頭を撫でた。
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