王都へ 7
「ごめんなさい。」
起きると、すぐに、カレンに、謝る翔太。
背負い袋を前後ろ反対につけていることから、格好は少し変だが見えているわけではない為、翔太は、ブラックを抱いて、それなりにカレンの近くまで来ていた。
「一応、肩を揺すってくれれば、て、なってたと思うけど、何でブラックに?」
タイミングが抜けている為、確認口調になっているカレン。
翔太は、少し赤くなりながら俯く。
「えっと、そのーー。」
翔太としても、多少は、そのくらいのこと、と、思っているの為、言いにくい。
「ショウタ、とりあえず、言ってくれた方が助かるわ。」
準備を終えたセレアが、近くに来ていた。
翔太は、覚悟を決めた。
「そのーー。直接、肩に触っていいかわからなくて、、、。」
「は?」
翔太が、俯きながら話し出したその内容に、カレンは、セレアを見た。
「え?」
セレアは、カレンを見た。
セレアは、肩がある半袖の上着を着ていて、それに、革の鎧を着ている。
カレンは、肩がない、上着と、一体型の革の鎧だ。
「「あ。」」
セレアとカレンは、額に手を当てた。
「でも、、ブラックだけに頼んだら、また、騒ぎになりそうだったから、考えて、、。」
二人の様子に、翔太は全く気が付かず、語る。
「その、、、。肩にブラックをのせたらどうかなって。」
「で、ブラックをあたしの肩にのせようとした時に?」
翔太の語りに続けるカレン。
「うん。」
二人は、盛大にため息をついた。
「まぁ、ショウタだから、、、。」
「そ、そうか、別に、肩ぐらい直接でかまわないからさ、次はブラックに頼まないでくれると助かるな。」
「うん。頑張る。」
苦笑で二人が答え、カレンが、向きを変えた。
「行くか。」
「そうね。」
セレアも向きを変え、二人が歩き始め、翔太も、
「おっと。もう一つあった。」
カレンが、後ろを向いて手招き。
翔太が足を速めて追いつくと、カレンが場所をあけたため、翔太は、セレアとカレンの間に並んだ。
突然。
「で。」
翔太の肩に、カレンが手を置き、
「えっ?」
驚く翔太が、カレンを見る。
「なに驚いてるんだ、どうだ、このくらい平気だろ。」
ぺしぺし、と、人の悪い笑みで、翔太の肩を叩くカレン。
「えっ、えーーーっ、と。」
耐性ゼロの翔太が、赤くなって目線を離し、セレアは、我、関知せず、を決め、森の方へ目線を走らせる。
その時。
カレンが、翔太の耳元に顔を近づけた。
見なくても、耳にかかる息で、近くにあるのがわかる。
全身が軋む音がする程に、力の入る翔太。
「どのくらい見た?」
瞬間。
夜のことが翔太にフラシュバック。
翔太にしてみれば、思い出すだけでいっぱいいっぱいだ。
膝の力が抜け、くたくたに倒れそうになって、
「あっ。あれは。あれは、その、あれは。」
頭に湯気を上げながら、思考が半壊した。
「安心しな。どのくらいかは、わかってるぞ。」
ニヤニヤしているカレンが、先に答えを言ってくる。
その声に、翔太の、思い出す以降、進まない思考のループが何とか停止し。
「ごめんなさい。」
「別に、謝る必要はないぞ、ただ、流石にただ見はまずいからな、ちょっと頼みたいんだ。」
ちょっと身構える翔太。
「その、できることなら、いいんだけど、、、。」
まだ、夜の景色が頭に残っている翔太は、まともにカレンを見れない。
そこを。
カレンが覗き込んだ。
いきなり、カレンの整った顔が視界に侵入し、翔太の思考が飛び上がりそうになる。
が。
「ブラックってさぁ、ブレスが吐けるんだろ、セレアが言ってた。一回、頼めないか?」
「あっ!」
翔太は、声を上げたセレアに向いた。
「ん、と。」
何故か、向こうを向いているセレア。
翔太は、どうしていいかわからず、カレンの方へ目を送る。
微笑むカレン。
刺さりすぎて、焦って、また、セレアを見る翔太。
気配でわかったのか、ため息をつきながら翔太に顔を向けるセレア。
少しおどけた可愛い顔で、小さく舌を出した。
「ごめん。流れで思わず言っちゃった。」
二発目も刺さりすぎた翔太。
ふらふらと足元が怪しくなるところに、セレアが、肩を叩いた。
「まっ、彼女なら大丈夫だから。」
「あっ。うん。」
ー 自分で判断しろっ、てことだよね。 ー
翔太は、自分で決断すると、カレンを見た。
「頼めるか?」
「うん。ちょっと待って。」
抱いているブラックを見ると、丁度、大きく欠伸をしている。
「ブラック、ちょっといい?」
ブラックの、まん丸な目が翔太をとらえた。
「ブラックが、火を吐くところを、カレンが見たいらしいんだけど、いい?」
自分を見上げているブラックの目が、なんとなく、了解してくれた気がして、翔太は、顔を上げた。
「いいみたい。」
「おっ、ほんとか、頼んだ。」
「うん。」
翔太は、ブラックを、前足の脇に手を入れ、胸の前に持ってくる。
なんとなく、一呼吸して、
「ブラック、火。」
「ぼーーーー。」
「おおぉぉ。」
カレンが、感嘆の声を上げ、セレアが、残念そうにため息をついていた。
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