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王都へ 6

 翔太は、またもや、絶望的な危機に陥っていた。

 ー どうしよう? ー

 背を向けて横になっていたカレンが、こちらに寝返を打うって、女性のふくらみがつくる谷間を炎の明かりに浮かび上がらせたのは、必死になって横を向いて躱した。

 見張りを交代する為に、起こすべく近づいた今は、後ろに回っている。

 問題は、袖のない服装をしているカレンの、褐色の肌をむき出しにした肩だった。

 ー 直接触ってもいいのかな? ー

 休む前に、セレアからの忠告で、起こし方は聞いている。

 セレアと同じで、肩をゆすってくれれば、だった。

 しかし。

 直接、その肌に触っていいかは聞いていない。

 第一、許可があったとしても、翔太には、ハードルが高すぎた。

 ー セレアを起こして、、、。 ー

 悪くないが、結局、セレアに無意味に触ることになる上に、起こしてしまうことになる為、申し訳なさ過ぎて、却下に。

 ー ブラックに、、、。絶対失敗だよね。 ー

 却下に。

 と。

 ー そうだ、直接触らなければいいんだ。 ー

 丸くなって寝ているブラックに駆け寄る。

 「ブラック。」

 悪いとは思っているものの、起こしやすさから、つい、頼ってしまう翔太。

 ぴょこっと、目を開いたブラックを持ち上げた。

 「ブラック、ごめん。カレンを起こすのを手伝って欲しいんだ。」

 嬉しそうに尻尾を振るブラックに、理解が得られたと、説明を始める。

 「簡単だから、カレンの肩?腕かな、にのって欲しいんだ。それで起きてくれれば助かるけど、起きなかったら、ちょっと上から押させて欲しいんだ。いい?」

 つまりは、最悪、ブラックを介して、カレンの肩を押そうと言う作戦で、かわらず、尻尾を振っているブラックに、翔太は、頷いた。

 「頼んだ。」

 カレンの後ろに回った翔太は、両手に持っているブラックを、彼女の肩にのせるべく、彼女を直接みないように横を向きながら進んだ。


 しかし。


 横を向いていると言うことは、カレンの肩の位置もよく見えないわけで、、、。


 翔太は、ブラックの顔を、カレンの脇あたりに突き出していた。


 目の前に、カレンの脇が近づいたブラックは、、、。

 

 「わっ!!!」


 叫んで、飛び起きるカレン。


 「えっ?何で?何で?」


 意味が分からず、ブラックを下げる翔太。


 「なに?敵?!」


 向こうでは、セレアも飛び起きいてる。


 「っと!ショウタか、驚いたぞ。」


 勢いよく後ろを向き、翔太に気が付いたカレンが、動きを止め。


 「「あっ。」」

 

 カレンの目線は、落ちていく背負い袋へ。


 翔太の目線は、肩のベルトが千切れ、先ほどのように、自分が持っていた手拭いで隠されていない、、、。


 セレアが二人を見ると同時に、翔太がオーバーヒートで崩れ落ちた。


 「、、、、、、、。」


 「聞かなくてもわかる気がするけど、どうしたの?」

 立ち上がり、歩き出すセレア。

 右ひじをついて半身を起こした状態だったカレンは、左手で胸を覆ったまま、その場に座り込む。

 「脇を、ブラックに、、、。」

 ダウンしている翔太の横で、ブラックは、お座りして尻尾を振り上機嫌。

 「あーー。それは、ご愁傷様ね。」

 「まぁね。」

 二人はため息をついた。

 「でも、なんでかしら?」

 起こし方は確認していたのに、と、セレアが首を傾げると、カレンは、ブラックの頭を撫でた。

 「さぁ?」

 二人は、もう一度、ため息をついた。



 カレンは、ぼんやりと、炎を瞳に映していた。

 だが、脳裏には、別の情景を映していた。


 「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 翔太が、叫びながらホブゴブリンに突撃。

 倒れていくホブゴブリン。

 カレンは、、、、。


 問題は、翔太に助けられたことではない。

 問題は、その後だった。

 ー なんでだ? ー

 いつもの自分なら、考えられない行動。

 それは。

 倒れていく中のホブゴブリンにとどめを刺さず、右のホブゴブリンへ向かったこと。

 真っ当に見て、翔太がホブゴブリンに勝てるはずはない。

 それなら、いつものカレンなら、間違いなく、右のホブゴブリンの攻撃が当たるのを無視して、中のホブゴブリンにとどめを刺した。

 が。

 そうしなかった。

 それはつまり、カレンの直感が、翔太が対処できる、と、判断したからだ。

 結果として、直感は正しく、翔太は怪我もなく、カレンも、以上の怪我もなく、セレアも。

 ー つまりは、ショウタを信用した、って、ことになるんだよな。 ー

 問題は、そこだった。

 どう見ても、戦闘経験は皆無。

 戦闘において、あてにできそうな部分が全くないのに。

 ー 信用した。 ー

 はぁ。

 苦しくなるまで息を吐き続ける。

 「見た目はあれでも、めちゃくちゃレベルが高い、とか?」

 動きからして、そんな様子も全くない。

 「あぁ、もう。」

 カレンは、向こうでうんうんと唸りながら寝ている翔太を見た。

 「つまりは、ショウタが弱っちく見えるから悩むんだ。だったら、あたしが鍛えてやればいい、強くなれば、その素養があったから信用できたと言える。」

 決意に目が細く、研ぎ澄まされる。

 「よしっ。楽しみにしてくれ。」

 聞こえていない翔太に、カレンは宣言した。

読んでいただき、ありがとうございます。


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