ストルアの村 11
「、、、。誰だ。お前は?」
見惚れるも、すぐに気を取り直し、同じぐらいの歳と思われる誰かに目を鋭くした。
「俺か?転生者だ。」
誰かは、自分を指さすと、ニヤリと笑い、自慢げに答える。
「は?」
グレドウラは、思いっきり、呆けてしまった。
どうだ、と、立っている誰かを、何度も、上から下まで確認してしまう。
「あれ?転生者のことは誰でも知ってる、て、なってるんだけどな。」
あきらかに、不審者をみる態度をとるグレドウラに、流石に、おかしな答えだと思ったのか、誰かは、頭を搔きながら、思い起こすように目を動かす。
「いや、転生者はわかるぞ。」
「なんだよ。ならいいじゃないか。」
「けど、お前が転生者かどうかはわからないけどな。」
「確かに、そりゃあ言えてる。気が付かなかった。」
ー なんだ、こいつは。 ー
グレドウラが見る限り、歳は十二、三、自分とそうかわらない。
エルフも霞む程の美男児。
腰には剣を下げていて、冒険者風の出で立ち。
そして、剣も含めて、見たことがないほど、綺麗な恰好。
「えーっと、そうだ、これならどうだ?」
観察しているグレドウラの前で、いきなり、剣に手を掛ける誰か。
はっ、と、グレドウラが身構える。
「待て待て、何にもしないぞ、この剣を見てほしいだけだ。」
「、、、。」
グレドウラは、答えず、警戒を解かない。
が。
誰かは、剣がもう少しで抜ける、と、いうところでいったん止まって、もがき始めた。
「、、、。何やってんだ。」
「いや、、。剣が抜けない。」
「、、、。は?」
「ん、、。成長を見越して、ぎりぎり長めの剣にしてもらったんだが、ぎりぎり引っ掛かる。」
間の抜けた答えに、警戒する気が失せ、
「大丈夫かお前?」
心配してしまう。
「うるせ。と、抜けた。」
誰かは、剣を見えやすいように横にして、グレドウラに突き出してくる。
「どうだ、こんないい剣を、この歳で、新品で持ってるなんて、ありえないだろ。」
確かに、素人のしかも、子供でもわかる程に、素晴らしい剣だ。
「貴族か、それとも、王族か。」
「それなら一人でいねえよ。護衛をつけてるよ。」
「確かに。」
「わかってくれたみたいだな。」
グレドウラの警戒が解けたのに気がついたのか、笑うと、剣を納刀しようとして、もがき始める誰か。
「おい。」
「うるせぇ。ちょっと待て。」
「馬鹿。鞘を外せ、持っててやる。それだと、指がなくなるぞ。」
「、、、。鞘が外せない。」
「ちっ。動くな。」
グレドウラは、誰かに近づくと、腰にある鞘を外して少し離れた。
「慎重にやれよ。俺の手を切るなよ。」
「わかってる。そっちこそ動くな。」
二人は、騒ぎながら何とか剣を納刀すると、着けかたがわからない誰かに代わって、グレドウラが、誰かの腰に剣を着けてやる。
「で、その転生者は、何で俺に声を掛けたんだ?」
一応、納得したグレドウラが、腰に手をあて、誰かを見ると、ふっ、と、横を向く。
「何だよ。」
「なんだ。転生者ポイントを使って、いろいろともらったけど、肝心なのを忘れててな。」
「肝心なもの?」
「食べ物。」
「、、、。」
「勘違いするなよ。森で、自分で狩って何とするつもりだったんだ。」
黙るグレドウラに、焦った誰かは、言い訳を並べる。
「で。」
「現実なんだなーーー、と。異世界だから、何でも思った通りに、と、考えてたら上手くいかなくてさ、腹が減ってるんだ。」
「思った通りに、って、いくわけないだろ、俺でもわかるぞ。変なこと言う、とは知ってるけど、転生者って馬鹿なのか?」
流石に、ムッ、とする誰か。
「うるせ。初めて転生するんだ、気が付かないことも多いんだよ。」
「はぁ。」
ため息をついたグレドウラは、畑に戻ると、実を二つ持ってきた。
もちろん、一つは自分、もう一つを誰かに投げる。
「とりあえず、それでも食べろ。」
受け取った誰かは、驚いたような表情になる。
「いいのか?」
「一個や、二個、なくなってもわからんだろ。それに、いざとなったら、お前が腹が減っていたから仕方なく、と、言えば、俺は怒られない。」
「もらっているだけに、文句が言えん。」
誰かは、グレドウラを真似して、実を口にした。
「美味い。」
「だろ、この村の特産なんだ。」
実を眺める誰かの横を抜け、通りに出るグレドウラ。
「爺に会わせてやる。何とかしてくれるだろ。」
「おっ、助かる。できることなら何でもやるぜ、特に戦闘。チートな強化をもらってるから、かなり強いはずだ。」
「剣が抜けないだろーが。」
「、、、。」
「おい。」
「いや。チートな強化で、殴った方が早いかな、と。」
「やっぱり、転生者って、馬鹿なのか?!」
思わず叫ぶグレドウラ。
「全く、爺が言っていた、転生者が最初に来る村だ、て、言っていたのが本当だとはな。」
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