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ストルアの村 1

 「で?思いっきり身構えてるけど、どうしたの?」

 不思議そうに見上げるセレア。

 「その、、、怒られたときに、すぐに謝れるように、、、じゃないかと、、、。」

 自分でも、何故、身構えたかわからなかった翔太だが、適当に答えた内容で、自己納得する。

 セレアが、多少、呆れた目になり、ため息。

 「まぁ、正直、またブラックで変な起こし方をされるかと思ってたから、とりあえず合格でいいんじゃない。」

 「ほ、ほんと!よかった、触ったらいけないんじゃないかって思ってたから、安心した。」

 明るく喜ぶ翔太。

 セレアは、そのくらいのことで、と、苦笑しながらも、思わずしっかりと握っていた剣の柄を握る手の力をぬいたのだった。

 「それで、この後なんだけど。」

 「あ。うん。」

 かなり緊張していた翔太は、その糸が切れて、惚けるように座り込んでいたが、何とか反応した。

 「次に翔太が起きる時は、明るくなっているわ。ちょっと早いけど、ストルアの村に向かうから、そのつもりでいて。」

 「うん。わかった。」

 頷くと、敷物のところに戻って横になる翔太。

 セレアは、その様子を眺め、次に、横で丸くなっているブラックを見て、微笑んだ。




 闇が退いて、明るくなる。

 準備が終わり背負い袋を身に着け、ブラックを抱き上げた翔太を、セレアは、待っていた。

 「ごめん。時間がかかっちゃった。」

 「いいわ。それより、量は十分にあるから、大丈夫だと思うけど、水は大事に飲みなさいよ。」

 「うん。わかった、気を付けるよ。」

 小川で満タンにし、腰に付けた水袋を確認する翔太。

 「後は、私のペースでいけば、昼にはストルアの村に着くと思うけど、間違いなく昼はすぎると思うから、まぁ、頑張ってね、と、しか言いようがないわね。」

 「うん。頑張るよ。て、言うか。」

 セレアの横に来た翔太が、彼女を少し見上げた。

 「セレア、背が高いんだね。」

 確かに、翔太の目線より、セレアの目線の方が上にあった。

 セレアは、そんなことを言われると思っていなかった為、少し驚いたが、クスッと笑った。

 「そうね。普通よりは少し高いわ。ふふっ、ショウタは、普通より少し低い?」

 言葉に詰まる翔太。

 「ふふっ。気にしなくても大丈夫よ。ショウタはまだ成長期みたいだし、すぐに大きくなるわ。頑張って。」

 「うん、、、。」

 「それより、さっ、ほら、行くわよ。」

 「うん。」

 二人は歩き出した。




 昼を過ぎて、セレアは、薬草を探したりしながら、ゆっくりと歩いていた。

 ここまでは、本当に何もなく、セレアは、だいぶ退屈に思っていた。

 翔太は。

 「ハァ、、、。ハァ、、、。」

 両手に、適当な枝を杖代わりに持って、遅くなっているものの、何とか歩いていた。

 ブラックは、翔太の肩に前足を引掛けるようにして、彼の背中に乗っていた。

 不思議なことに、多少、翔太が大きく動いても、落ちる様子がない。

 「そろそろ、また休む?」

 セレアは、翔太の少し前に立って、半身に、翔太を見ている。

 「もう、、少し、、がんば、、れるよ。」

 荒い息に合わせて喋る翔太に、しょうがない、とでも言いたげにため息をついたセレアは、腰に手を当てた。

 「とりあえず休みなさい、ここまで来れば、明るいうちに着けるのは間違いないわ。」

 言われるままに、杖代わりの枝に体重をかけるようにして立ち止まった翔太は、座り込みたい気分だったが、それだと、動けなくなってしまう気がしたため、立った状態で、枝を片手に持たせ、腰につけている水袋に手を伸ばした。

 「あーーーっ。」

 無念な響きの声が、翔太の口から洩れた。

 水袋が空になっていたのだ。

 「どうしたの?」

 「水。飲んじゃったみたい。」

 苦笑したセレアは、ため息をつくと、翔太の方へ戻り、細く、スラリとした指を持つ手を、翔太に差し出した。

 「水袋、貸しなさい、入れてあげるから。」

 「本当?ありがと。」

 水袋を持った手を出したところで、まだ少し残っていた思考が回り、気が付く翔太。

 ー セレアの水袋から移してくれる、って、ことだよね。 ー

 つまり、セレアが使っている水袋、と、言うことで、、、。

 瞬間沸騰する翔太。

 「どうしたの?」

 様子が変わった翔太に気が付いたセレアが、あざとい角度で小首を傾げる。

 「何でもない、何でもないです。よろしくお願いします。」

 翔太は、水袋を渡して空いた手を、どこに体力が残っていたの?と、思えるほどの勢いで振り動かす。

 「なに焦ってるのよ。変な子ねぇ。」

 少し口を尖らせたセレアは、水袋の口を開くと、その上に手をかざした。

 翔太は、赤ら顔で、その様子を眺めていた。

 「水よ。」

 セレアが、一言。

 かざしている指先から水が流れ出した。

 それは、両目と、開いた口をまん丸にした翔太の前で、確実に水袋を満たしていった。

 「よし、っと。」

 何事もない、当たり前の動作で、停止している翔太の前、水袋の口を閉めてるセレア。

 「はい。一杯にしておいたわ。飲むなら、飲んでおきなさい。、、、。聞こえてる?」

 「まっ、魔法なの?」

 「ん、っと、そうよ。水の魔法は、程度の差はあるけど、この世界では半分はないけど、そのぐらいの人が使えるわ。驚くところじゃないわよ。」

 「そっ、そうなんだ。」

 止まっていた翔太の様子に、セレアは、肩を窄めながら説明する。

 何とか飲み込む翔太だった。

読んでいただき、ありがとうございます。


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