緊急! パンダがいなくなっちゃうから和歌山へ行かなくっちゃレポ
このレポはパンダが中国に帰還する前に書き出したもので、これからパンダ見に行く人の参考になるかなと考えて書き出したものの、パンダが帰還する前には完成しなかったものです。
すでにラストパンダブームは過ぎ去っているので、現在とは状況が違っています。
せっかく書いたしな、ともったいない精神で上げることにします。
和歌山のパンダが6月末で返還されてしまうとのニュースが聞こえて、慌てて和歌山行きを計画。6月初旬に和歌山へと行ってきました。
パンダ、ずっといてくれると思ってた。日本生まれでも、日本のものじゃないんだよなあ、パンダ……
上野でパンダ生まれた時も和歌山にいるしーとスルーしてたわけです。が、いつでも見に行けると思っていたらそれが叶わなくなってしまう。で、慌ててパンダを見に行ったわけです。
もっと前から見に行っとけばよかったのにね。アドベンチャーワールドのSNSはずーっとチェックしてて、行きたいなー行きたいなーと年単位で思ってたわけで。
兵庫からの和歌山への行き方を調べ、うーんやっぱり遠い……との正直な感想が浮かぶ。
まず大阪に行って、そこから特急くろしおに乗って2時間半。兵庫から大阪に行くだけでも1時間以上はみとかないといけないわけで。色々換算すると、白浜に行くのに約4時間……これは、日帰りは無理!
では宿の予約……と思ったら、週末の宿が軒並みいっぱいで埋まってる。みんな考えることは同じ!
どうする、どうする……と考えて出した答え。有休消化!
金曜日に有休をとることにして、宿探し。よさげな宿、あった!
無事に有休もとれて、いざ和歌山へ!
始発のバスに乗って、駅まで行き、大阪駅まで新快速。久々の大阪駅。見覚えがなさ過ぎる。景色が記憶と全然違う。
京セラドームへは阪神電車を使って行ってたので、大阪駅には数年単位で来てなかったのです。
とりあえずこっちかなー、と勘で動いてたら警備員らしき人に「ここはのぼりです」とここは通るなと指示され。
?
大阪でのぼりとは?
看板をよくよく見たら環状線行き方面と書いてある。
?
環状線ののぼりとは?
未だに全然わからない。
近くの改札まで行って駅員さんにくろしおの乗り場とチケットの売り場を聞く。
改札を一旦出て、チケットを買い、ホームに降りて、さらに地下へと降りる。
いや、正直わかりづらいです……ナニコレ。この旅で一番迷子になったのが、大阪駅でした。おおん、田舎者はこれがあるから辛い。
とにかく速く和歌山に行きたい! とチケットを買ったら、指定席は全席売り切れ。立ち席になりました。
え、もしかしてもしかすると、みんな白浜に行くんですか……?
いや、まさかねー。
電車内の狭い接続部分に立って2時間以上過ごす。途中、キンドルで観光ガイドブックを読む。アンリミテッドでガイドブック読めるのありがた過ぎる。
途中から海が見え出して景色がよくなる。海が見えると、やはりわくわくと期待感が高まる。
そして、白浜着。かなりの人がここで降りる。やっぱり、みんな考えることは同じ。
平日なんだけど、お子様連れが結構多い。家族で行くと楽しいよね。
白浜駅、至る所がパンダ模様。乗ってきた電車にはパンダや動物の写真。ホームにもパンダ。階段にはコロコロ転がるパンダのミニキャラ(このミニキャラはすでに消されてるとかなんとか。なんでー。消さないでよ。かわいいのに)
改札出てもパンダ。パンダのぬいぐるみに、自販機もパンダ、駅を出たとこにはでっかいパンダの親子オブジェ。(このオブジェも撤去されるとか。置いててもええやん……)
こんなにもパンダ推しなのに、本当にいなくなるの? 切ないねえ。
アドベンチャー行きのバスは長蛇の列。タクシー待ちもかなりの列。
天気が良かったので、日差しが気になる。帽子忘れたの、致命的なミス。
バス一本見送って20分待ちくらいで、バスに乗れた。11時くらいにアドベンチャーワールドに着。
チケットを買って、園内マップをとって、園内へ。
早速パンダを見に行きたいとこを我慢して、まずは入り口すぐ横にあるお土産屋さんへ。
SNSでの噂によると、帰る頃にお土産屋さんに行くと混み混みらしい。それを信じて、まず最初にお土産を買っていく。
自分を信じて選んだお土産と手荷物をコインロッカーに預けて身軽になる。
お土産屋さんの一角には、パンダシューが売ってるらしい。公式のSNSで紹介されてて気になってたので、食べたかったのだ。
売店、閉まってた。
どうも、このパンダ熱で人がたくさん来過ぎてるので、それをさばくために何か所かの売店が閉まってたようだ。だが、それによりまた待機列が集中してしまって列が伸びてたようだけど……
園内に入っていく。どこから行こうかなと思ったら、すぐそこに象さんいた。そして、そのすぐそばにパンダラブが。
アドベンチャーワールドに入るパンダは全部で四頭。その内の二頭がパンダラブにいる。
パンダラブはガラス張りの室内にパンダがいて、それを外から眺められる。検疫隔離期間に入ってしまったので、パンダたちは室内にいるのだ。
ガラスの反射がひどくて、中々視界は悪い。自分自身の影を頼りに中のパンダを覗く感じになる。
パンダたちは二頭とも寝てた。どっちのパンダもあっちを向いて寝てる。パンダたちの背中と後ろ頭を拝んでから、別の場所へと向かう。
朝が早すぎてすでにお腹が減っている。まず、何か食べようかなと思ったけど、結構なフード待ち列ができてる。すぐに食べられそうなパンダ肉まんはまだ蒸せてない。ポップコーンの気分でもない。
園内マップによると、イルカショーがそろそろ始まるので、急いでそちらに向かう。
イルカショーはすでに人がいっぱい入ってて大盛況だ。座ってしばらくすると、ショーが始まった。
特に前知識も無しに見たけど、しかも結構遠い席に座ったけど、それでも感動した。なんか泣きそうになった。
イルカ達とトレーナーさんの息が合っててお互いがお互いを信頼してて好きじゃないと成立しないショーだなあと思った。
イルカ、賢いねえ。フリスビーをキャッチするのは失敗してたけど、そもそもとってこいができる時点ですごく賢い。とってきたよーって得意気にしてるっぽい。遠目からでもわかるぐらい感情豊かで、体格の違う小さめのイルカも一緒になってジャンプ披露してたり、なんか凄いと小学生みたいな感想を持った。
イルカショー終わりにもう一つのパンダスポット、ブリーティングセンターの待機列をチェック。
60分待ち!
いや、まだましな方なんだろうとは思いつつ、先に空腹をなんとかしようとフードコートに行く。
どこの店も行列で来てて、パンダ肉まんだけ注文しよーとしたら、普段は開いてるレジも閉まってて中の店舗のレジで対応とのこと。
どうせ並ぶんだったら、パンダ肉まん以外も注文するかー、とパンダ型に抜いてあるチキンライスで作られたバーガー、チキンカツオムライスバーガーを頼むことに。
並んだ店が主にオムライスを扱ってるとこなんだが、もしかしてもしかしなくとも人気が合って結構な時間並ぶ。
注文済まして、料理を受け取って、席を探そう……と探し回るが席がない……2階にも席があって結構な席数あるはずなのに、席が足りない。恐るべしラストパンダムーブ。
しょうがないので、テーブルのないベンチで膝の上に料理置いて食事する羽目に……旅の恥は掻き捨て。許してください。
パンダ肉まんは見た目のかわいさは抜群。お味は普通に美味しい肉まん。
チキンカツライスバーガーは中に入ったスクランブルエッグ? オムレツ? がふわふわで美味しい。チキンカツもさくっとしてて、ゴボウサラダも好相性。食べづらいんじゃと思ってたけど、ライスバーガー部分もしっかりとしてて、ちゃんとバーガーとして成立してた。
予想してたけど先にチキンカツがなくなってしまって次にライスのバンズがなくなって、オムとゴボウサラダが残ってしまった。なんとか包み紙が受け止めてくれたので事なきを得た。
食事終わって、気合入れてパンダ列並ぶかーと思ったけど、まったく減ってない列に日和って先にウォーキングサファリを行くことに。
サファリゾーンは歩きの他、ケニア号という車に乗って見学することができる。このケニア号は歩きでは行けない猛獣ゾーンも進んでくれるので、虎とか見たい人はケニア号に乗るのがおすすめ。
このケニア号も60分待ちの待機列ができている。
虎めっちゃ見たい。1歳になったばかりの虎の子供達が平日限定でサファリデビューをしてるのだ。虎の子達、よちよちしてた頃からSNSで見てたのでめちゃくちゃ出会いたかった(過去形)。
サファリゾーン、まずはお猿さんから出会う。このお猿さんのゾーンからサファリの全体像が眺められるんだが。
めちゃくちゃ広大。
アドベンチャーワールドはほんまに広い。広過ぎる。アドベンチャーワールドに行く人は一日費やすことを覚悟した方がいい。
サファリ内はブッシュエリアとかあるけど、ほとんどの場所に屋根というか日影がないので暑い時期には日差し対策と水分の用意が必要。
お昼に飲み切れなかったドリンク片手に回ってたんだが、これを持ってて本当に良かった。
サファリ、広大な分、動物達も広いスペースでまったりと過ごしている。そして、動物たちが近い。鹿とか通路に出てるように見える。
……
通路に出ちゃってますねえ。
鹿の内の一匹が通路に出て、餌売り場の前で出待ちしている。ガチャ方式で触れ合い用の餌が買えるんだが、その餌の前でスタンバっている。
触れそうだと思いつつ、ビビりなので触らず。
待ってるんなら餌やるかーと思ってたけど、先に近くにいた家族連れが餌売り場のガチャにお金を投入。
餌が出てくるのを受け止める前に、鹿が口を突っ込んでしまってる。
鹿さん出てくる餌を全部一人で食べちゃった。
これは触れ合いできてませんねえ。というか、無理。
諦めてサファリを進む。いろんな種類の動物が見れて、なんか得した気分になる。
鹿っぽい見た目の多分ウシ科の動物に餌をあげてみる。投げてあげろと書いてあったのに、投げるとスルーされるので手に出してあげる。噛むことがありますとの注意書きにビビる。
いろんな子にあげたいのに二匹しか寄り付いてくれない。弱肉強食……? 強い子しかふれあいゾーンに来れないものなのか。
舌とか下あごとかなんか温かかったです。温もり感じると妙に愛おしく感じるね。
崖っぽいところにいる鹿の仲間っぽい動物、SNSでは赤ちゃんが産まれたとお知らせしてた。遠目でしか見れなかったけど赤ちゃんちっさくてかわいい。
キリンとかもめっちゃ近い。ライオンもまったりしてるのが見える。虎はやっぱりウォーキングエリアからは見れなかった。
ウォーキングサファリを堪能した後、気合入れてパンダ行くか! と思ったけど、鳥とか小動物も見たいのでふれあい広場の方へ行く。
オオハシとか白孔雀が目の前で見れて感動。尾羽のない白孔雀が木の上にいたけど、あれは子供だろうか。
のど渇いたので、飲み物を調達しにまた飲食ブースを探す。
プレイゾーンの一角にパン工房がある。パンダを象ったパンが各種売られている。……のだが、軒並み売り切れててメロンパンしか残ってなかった。
クリームチーズ入りのパンダパン食べたかったなあ。
ペットボトル飲料もラベルがアドベンチャーワールド仕様。イルカのラベルの水とメロンパンを買う。
パンダメニュー何品食べられるか⁉ とひそかに目指してたけど、いちいち行列に並ばないといけないのがね。行列待ちの間に、何か動物が見れるとも思ってしまうわけで。
さて、いよいよ気合を入れてパンダ列へと並ぶ。
待機列は70分待ち。列が伸びてるよー。
そらそうだよねえ。朝一に並ぶのが一番楽だったかもしれない。
視界に入るのぼりがパンダたちの写真でかわいい。デザインというか使ってる写真が結構豊富。
待機列の後方、フードコートの一角にはパンダラブの様子が中継されているテレビが置いてある。
園内の自販機もパンダデザイン。本当に至る所がパンダ推しだ。
ブリーティングセンターが目前なのに、待機列はぐるっと回りこんで蛇行している。パンダ見た後でアニマルショーが見れるかなと思ってたが、この段階で諦める。待機列の日差しを浴びる時間を減らすべく、パラソルが並べてある。気遣いがされている。
そして列は進んでいよいよパンダの姿が目の前に……パンダ起きてる! 人間眺めながらご飯食べてるよ! 動いてると、かわいさが倍増!
パンダ列は数十人単位で区切りながら進行している。二頭いるパンダの内、一頭はお昼寝していたが、途中薄っすら覚醒してたのか体制を変えたり遊具の角でお尻を掻いたりしていた。お顔があまり見えないが、その行動がなんともオモシロかわいい。
最前列でパンダを見れるところまで順番が回ってくる。一旦、パンダがあまり見えない位置に行かされる。ロープで区切って人数制限をしている。見た人は譲り合って~とアナウンスがされている。一パンダごとにロープの区切りがある。
前の人達が隣のパンダの方に移ってから、手前のロープが開かれる。
寝ぼけて動いてた良浜……遊具の上で完全に向こうを向いてしまってる。どこに移動しても後ろ姿しか見えず。不思議な体制で寝落ちしてしまったようだ。さっき横顔見れたのは奇跡であった。
次いで、客を見ながら竹を食べてた彩浜。うろうろと動いて食後の運動タイムに入ってた。動いてる姿はやはりかわいい。
配慮してパンダを見終わった後はなるべく素早く移動……と思ったが、後ろにぎっちり人がいたりして中々身動きが自由にとれず。みんなパンダが見やすい位置に行こうとしてるからだ。下手に動く私は逆に迷惑な存在だったのではないか。申し訳ない……。
パンダを堪能して、満足した。
ブリーティングセンターの横がイルカ達がいるビッグオーシャン。階段を上がったところに飲食店がある。
ここで最後のパンダグルメパンダクッキーアイスを買う。
座って食べれる場所を探してマリンウェーブへ。ふれあいプールでイルカ達とお子様たちが交流している。午前中にショーをしていたお兄さんお姉さん達が衣装チェンジして対応している。
そんな様子を眺めながらクッキーアイスを食べる。パンダの耳部分がピノのようなチョココーティングしたアイスになっている。クッキー部分は意外と柔らかいので、崩さないように気を付けて食べる。
味は普通に美味しい。そして、結構ボリュームがあるのでお腹いっぱいになる。……昼から、色々食べ過ぎだからでは。
イルカを見た後は、何か他の動物を見ようと再び園内を散策。わんわんガーデンに行こうとしたらわんこたちが室内に帰るところが遠目に見えた。もう、展示の終了時間が近づいている。
ホースキャンプ方面を歩きつつ、再びパンダラブを目指す。
ミニチュアホースを眺めた後、レッサーパンダを見ようと足を運んだが、この日は体調がよくなかったのか展示はお休みであった。
再びのパンダラブ。激しくガラスが反射してますねえ。この反射のおかげで長時間並ぶこともなくパンダを見れるわけです。
日傘を使って影を大きめに作ってパンダを見ている人はある意味賢いです。自分自身の影を頼りに中を覗き込むと、一匹は寝てたけどこちらを向いて寝ている。顔に手を当てて寝ているの、人間臭くてかわいいポーズだ。そして、もう一匹は起きて竹を食べている。かわいい!
しかし、大分端っこで食事している。中々見づらい場所にいる。
再びのパンダを見た後、周辺を歩く。パンダラブ横には、パンダの食べ残しの竹で作られた大きなオブジェが立っている。人が何人も中に入れるほど大きい。
そのオブジェ周りにパンダたちのボードが飾られている。
パンダラブの横の奥の方にポニーやラクダ、猛禽類なんかがいた。こっちの方はあまり人が来ないのか空いていた。
再び入り口付近まで戻ってきた。もう一回お土産屋を巡ってみる。人は多いが行き来がしづらいほどでもない。だが、もうすでにお土産を買ってるので、自分の荷物を回収してアドベンチャーワールドを出る。
白浜駅行きのバスを待つ。元気いっぱいのお子様が乗らないと大声で主張している。
よっぽど楽しかったんだろうなあ~。
歩いて帰る! と、だから乗らないと抵抗している。
扉閉まりますのアナウンスに「閉 じ な い で!」とかわいい声が響き渡る。
白浜駅に着いた。ここから、予約している宿の最寄りの紀伊田辺駅に移動する。
路線バスで白浜駅から紀伊田辺まで行けることは事前に調べていてわかっていた。だが、そもそも駅から駅なんだから電車に乗ればいいのでは? と思うのだが。
時刻表も見ると8割が特急で普通電車が全然走っていない。だから、駅から路線バスが出ているのだ。
16時前で次の普通電車が来るのが18時。なので、すぐ来る路線バスに乗ったのだった。
ちなみに白浜駅から紀伊田辺駅は特急に乗ると12分で移動できる。これが路線バスだと、30分から50分かかる。かかる時間に差があるのは、迂回するルートが違うからだ。
私が乗った路線バスは50分かかるルートを辿る。バスに乗り、ボケーと景色を眺める。なんだか落ち着く田舎っぽい景色が続く。
紀伊田辺駅着。すぐホテルに向かってチェックインしようかと思ったが、なんとなく駅前のカフェっぽいところに入ってみる。
カフェかと思ったが、お土産とかも置いてある。
実はこの店はアンテナショップだった。なんとなく川添茶とマスカルポーネのアイスとコーヒーを注文。……クッキーサンドアイス食べたくせに、ついアイスを頼んでしまった。
アンテナショップは梅味の調味料とか、南方熊楠の描いた粘菌をデザインした手拭いとか、八咫烏デザインの手拭いとかいろいろ売ってた。
梅ジャムと梅ドレッシングを買ってみた。瓶の調味料は背負って持ち歩くのは正直重かった。けど、美味しかった。
ひと休みを終えて、予約したホテルに向かう。受付で近場の観光マップをもらう。
「この扇ヶ浜ってのは」
「ここから徒歩10分ほどで行けます。夕焼けがきれいな浜ですよー」
とのことなので、後で行ってみる。
「この天神崎ってところは」
「そこはここから30分以上はかかりますねえ」
とのことなので諦めた。ウユニ塩湖っぽい映えスポットらしいのだが、まあいいか。
スマホとモバイルバッテリーの充電を復活させながら、日没時間をチェック。30分くらい余裕があるようなので、暇つぶしにテレビをつける。
「あ! 阪神戦始まる!」
オリックス阪神の試合が始まる直前であった。先発は東。ついつい一回表裏の攻防を見守ってから、扇ヶ浜へ向かったのだった。
扇ヶ浜は広々として見えて、開放感のある浜だった。夕焼けが海面に反射してキラキラとしている。
なんでこんなに広々と感じるのだろうと思ったら、私のよく知る海は向かい側に淡路島が有ってそこにまたがるように橋がかかっているからだった。
夕日に染まった海は本来の色がよくわからなかったが、それでも澄んで見えてきれいだった。
扇ヶ浜は熊野古道に行く人が清めのために入る海らしい。その清めのために海に入る行為を潮垢離と言うそうだ。
その潮垢離をローマ字表記したモニュメントがドーンとある。なんか「BE KOBE」みたいだな、と思った。
しばらく浜辺を散歩してから、ホテルに帰る。まっすぐ帰るのではなく、何か夕食を調達したいと思う。
ホテルの受付でもらった観光マップによると、寿司屋と居酒屋が多いようだ。野球観たいからテイクアウトしたいなあ、と考える。あと、私は実は刺身が苦手なのだ。
味光路という飲食店が固まってある路地があるらしくそこを歩いてみる。
天ぷら屋の店先に弁当の表記があったので、ここにする。
海老天弁当を注文した。店内に野球のユニホームが飾ってある。全球団分のユニホームがあるようだ。なのに、店内のテレビは野球中継を映してなかった。なーぜー?
揚げ立てをホテルに持ち帰って食べる。サクサクの衣に熱々ぷりぷりの海老がめちゃ美味だった。
オリは阪神にサヨナラ負けしてしまった。おーん……
翌日。朝食はホテルのブッフェ。自分で用意しなくていい朝食!
ついパンとおにぎり両方とってしまう。サラダの横に自家製鶏ハムがあって、これが美味しい。目の前で焼かれるオムレツ、これも美味しい。一応手加減しつつ、それでも一通り食べてしまった。
身支度を済ませて、再び扇ヶ浜へ。朝の海は予想通りきれいだった。波の少ない穏やかな海面。夕方も人がいたが、朝でも散策している人がいる。
個人的には朝の海の景色の方がお気に入りだった。
扇ヶ浜を後にして、近くの闘鶏神社へ向かう。……ここで、チェックアウトの時間にまだ余裕があったんだから、荷物をホテルに置いといて訪れればよかったのでは? と気づく。
昨日買ったドレッシングの瓶が重い。これを背負ったまま一日過ごすのか……
闘鶏神社は扇ヶ浜から歩いて10分くらいのところにある。源平合戦に縁のある神社なのだそうだ。
源平合戦の折、熊野水軍の援軍を源氏平氏双方から求められたのでどちらにつくかを決めるために鶏を戦わせて決めたのだとか。
朝の神社は静かで気分が落ち着けて参拝に丁度いい。お参りして、境内をじっくり見ていく。
「えっ! ラオウさん⁉」
境内には弁慶とその父湛増の像が飾られているのだが、この弁慶像がオリックスのラオウこと杉本裕太郎選手にめちゃくちゃ似ていた。
摂社の藤巖神社の御祭神は初代田辺領主の安藤直次公。土地が痩せていて年貢を納めるのに農民たちが苦労していたので梅を育てることを奨励。やせた土地でとれた梅はやぶ梅と呼ばれて、あまり状態のいいものではなかったが、これを保護したため梅栽培が広がっていった……という逸話が案内板に書いてありました。(うろ覚え)
ラノベに脳が毒されているので、異世界恋愛的な領地改革で使えそうなネタだとか思ってしまった。
闘鶏神社のすぐ近くに観光案内所的な場所があったので寄ってみる。どこ行こうかなーと見ていたが、熊野古道の案内が多い。
熊野古道を行くには時間が足りない気がする。なので、最初から選択肢に入れていなかった。また今度な! と思いながら、紀伊田辺駅へ向かう。
駅前から三段壁行きのバスが出ているのでそれに乗る。再び白浜方面へと向かった。
途中、白良浜の景色をバスの中から眺める。浜の砂が白くてきれい、なんかもう泳げそうな雰囲気であった。
天気が快晴で気持ちがいい。しかし、暑い。風があまりない。なんだかもう真夏の様相である。
バスが三段壁に着く。バスを降りた先に電話ボックス。その横に、いのちの電話の看板が立つ。なぜここに? 思いつつ、三段壁に真っ直ぐ向かおうとして、横目でお土産屋さんなどあるのを見る。道の脇にはすでにアジサイが満開だった。気候が兵庫とはちょっと違うんだなーと実感する。
芋ふかしたのとか、イチゴとかが軒先に並んでいる。奥では海産物を焼いたのが食べられるようだ。いいね。アイスの看板もあってどうしようかなと思う。朝食べたとこでしょうがと自問しつつ通り過ぎようとして、旅でケチるのもなあと戻ってアイス買った。
店主だと思って話しかけようとした人が、お客さんだった。ハワイから来た奥さんだ。通りがかった子連れに英語で話しかけている。
旦那さんが戻って来て奥さんと再会している。食べ終わったので、いよいよ三段壁の景色を見に行く。
快晴の空と、海の青のコントラストがきれい。天気がよくて本当に良かった。崖が段々になってておもしろい地形だ。きれいな水平線が見えているところを船が通過していく。
景色をある程度眺めた後は、三段壁洞窟を見学しに行く。エレベーターで降りた先、写真が売ってるなーと思ったらまずは記念撮影をする運びになる。
……ここから見た景色を自分で写真を撮りたいなあ。私を被写体にはしなくていいからさあ。
奇岩が見えるスポット、温泉が湧いてるスポット、弁財天様が祀られてるスポットと回って、鉱山跡が出てくる。狭い空間に要素がぎっしりだ。そして、熊野水軍の番所小屋。この洞窟は熊野水軍が船を隠すのに利用したそうだ。
洞窟の中は岩にぶつかって波が随分荒々しい。よくこんなところに船を隠したなあと感心する。
漣痕と呼ばれる波の化石が見れる。
……見応えは十分なんだが、狭い。駆け足で回ると5分で見終わってしまいますと係の人が言っていた。確かに。じっくりと見て回って30分は滞在したいところだ。
地上に戻り、併設のカフェで海を見ながら一服。足湯があるので、そこにも入る。穏やかな海を見ながらゆっくり足湯に漬かる。晴れてて良かったなあとしみじみ思う。
足湯を楽しんだ後は、遊歩道を歩いて崖先へ向かう。
口紅の碑という心中カップル由来の史跡があるらしい。心中カップルには興味ないなあと思ってた時にはっと気づく。
恋人の聖地との看板、そしていのちの電話の看板。それらが結びつく。
ええ! 心中カップルにあやかって恋人の聖地とか言ってんですか?
なんかすごい。
崖先に向かって歩くとまた絶景が見えてくる。いいなあと思って眺めながら歩いていると、どう見ても柵の向こう側に立っている人がいる。
映えを意識してそんなことしてんですか? そんなに高い柵でもないんで柵が入らないように写真を撮ることは全然可能だ。粋じゃないわあ、と鼻白むのだった。
ごつごつとした岩肌に可憐な小さい白い花が咲いている。自然の妙を感じる。
海と空だけが見える景色の中で、海と向き合い、景色を堪能する。
三段壁の景色を堪能した後は、もう一つの景勝地千畳敷を目指す。徒歩で行けるよねと地図検索してたら、裏千畳敷なるものがあると知る。
千畳敷と三段壁の間にあるようだ。まずはそこに向かう。
どこだ? と全然わかんなくなったので地図アプリを起動させる。住宅路の裏を抜けたところにあるようだ。
三段壁とはまた違った景色が広がる。平らな岩を何枚もバラバラに積み重ねたような感じだ。対岸にはホテルか何かがあってその裏から行けるようで人が何人かいるが、目の前には人はいない。穴場のスポットのようだ。海の目の前まで行ってみようと降りていく。
階段状になっているので楽に降りれるかと思っていたが、実際に降りていくとごつごつの岩に足を取られないようにと気を付けないといけない上に、段差の大きさがまちまちなので結構神経を使う。もちろん、体力も使う。
三段壁には柵もあっていのちの電話も置かれていて、どうしてここには何もないんだと疑問だったが、自分の足で降りてみるとよくわかる。
さくっと飛び込んで楽になりたい人がこの場所を選ぶことはない。さくっと飛び込めないのだ。めちゃめちゃアスレチックである。
……ふむ。下まで降りてみてとりあえず満足したので、再び戻る。これまたえっちらおっちらと気を遣いながらゆっくりと登っていく。
思いもよらず体力を消耗した。普通の道路に戻って、ぼちぼちと歩く。平地って歩くの楽だなあと改めて実感。
ゆっくりと歩いて、千畳敷に着いた。駐車場にはたくさんの車でぎっしり。遠目に見てもにぎわっている。
私は実は千畳敷を楽しみにしていた。
中学生のころ和歌山に連れてきてもらったことがある。その時に訪れたのが千畳敷ではないのかと思っていたのだ。それを確かめたくて、ここに来たかったのだ。
まず絶景におおーと感動してからあれ? と気づく。これは、中学の頃見た景色とは似ても似つかない。ここは始めてきた場所であった。
あの平らな石を広く敷き詰めたような海辺はなんだったんだろう。あれはどこなんだ。
疑問に思いつつ、海辺を目指して下に降りていく。
ここは裏千畳敷以上にアスレチックだ。一回下まで降りて、隆起した岩に登っていく。
景色はいいのに、足元に多くの黒歴史が広がっている。わざわざ岩を削って名を彫ってるのがいくつもある。
こんなん、普通の建物にあっても恥ずかしいのに、消せない岩に彫り込むとか……共感性羞恥? でもこれを彫り込んだ人達は羞恥なんて感じてないだろう。
三段壁では穏やかに見えた波が近くに見えるからかそこそこ荒く見える。
登った岩をまた降りて、さらに登って戻る。
三段壁のカフェでコーヒー飲んだのに、暑いからまた何か飲みたくなった。茶屋に入って一服する。
何にしようか迷いに迷って、映える感じの青いソーダにした。このソーダ、なんで層になってるんだと思ったら、底の青い部分は緩いゼリーだった。美味しかった。
店内で涼みながらソーダに舌鼓を打つ。
……結構疲れてるのか、あんまり動きたくなくなってしまった。お昼時になったのもある。2階の食事処でそのままお昼を食べることにした。
人気があるのか結構並んだ。お昼に選んだのは、梅おろしマグロカツ定食だ。二日連続で揚げ物だ。本当にダイエットはどこ行った。
マグロのカツはふわっと柔らかかった。おろしと梅の風味のおかげもあるが、マグロ自体が割とあっさりしてて食べやすい。
付け合わせに見たことのない貝がついてきた。食べ方がよくわからない。ちょろっと出た足のようなところを引っ張ると身が出てくる。
グーグルで画像検索した。チャンバラ貝、マガキガイと出てくる。食べてみると、歯ごたえのある固めの食感、噛むとしっかり味が出てくる。するめのような感じに思えた。
ゆっくり食後のお茶を飲んで、まったり過ごして……満足したので、よし帰ろう! となった。
白浜行きのバスを待って乗り込む。この景色も見納め、と眺めてるとデン! と円月島が大きく見えてちょっと感動した。
その後、海岸沿いの景色を眺めていると「⁉」となる。あの、中学の時に訪れた平らな岩が広がっている場所と似た景色があった。円月島の近くだ。
ここだったのか⁉ と思ったが途中下車する余裕はなく、そのまま白浜駅へと戻った。
帰りは座席に座りたい……と指定席をとる。
「1時間後か……」
1時間あれば観光できそうな気もするが、気力がもうない。駅前をぶらついて、どこかの喫茶店でも入ろうとする。
入ろうとした店がすでにラストオーダーの時間を過ぎたと言われ、え? となる。どうしようと思ったが、すぐそばにもう一つ喫茶店があったのでそこに入り、時間をつぶした。
電車が到着。余裕を持って乗り込む。旅もいよいよ終わり……としんみりしてたが、窓の外が気になってしんみりがどこかへ飛んだ。
駅から見えるところにある2階建ての建物が旅館か何かなのか看板を出している。そこに露天風呂と書いてあるのだ。
駅の真横で露天風呂……? と疑問が浮かぶ。駅から見えないように配慮されてるだろうから、楽しめる眺望は空だけだろう。この辺は夜空がきれいに見えるんだろうか。昨晩は空を眺めることもなく寝たなあ、と考えた。
帰りの電車は行きと違って結構空いていた。土曜日だからだろう。そして一路、大阪へ……気分としてはすぐに大阪に戻れる感覚だったが、2時間たっても和歌山から出られない。和歌山って大きいんだと旅の最終盤に思うのだった。