第47番地 運ゲー野郎3
(しかし、あれが本当だとはのう。聞いてなお信じられぬわ)
「とすれば、そなたのマスターは始源の知を知る者、すなわち伝説の『導者』ということか」
心中の想いは、図らずも声となっておった。といって、ひとりごちた訳ではない。その証拠に答えが返って来る。
「道夫はすごいのだ。弱いけど、そして、俺よりモテないけど」
額に三助が乗るのだ。猫の額は狭いというのが通り相場だが、そこに乗りたいとの三助の希望をかなえられるほどには、運営使者が巨大という訳である。
それを聞いて、苦笑せざるを得ぬ。どちらがモテるかは預かり知らぬところだが、弱いは残念ながら、その通りであろう。ただ、ことは運ゲー野郎のみの問題ではない。他の3ダンジョンを加えても、果たして、戦力で運営政府側を上回れるのか? 特に母上の参戦が明らかとなった現状においては。それもあって、今、彼は急ぎ『存在の空処』ダンジョンへと馳せておるのだ。ゆえに、心中の想いはこうなる。
(こんなときでもなければ、三日三晩、いや百日だって、語り合えようぞ。第4人格も第6人格も喜んで応じてくれよう。そう、これまでと異なる新しき世界像が、その議論の果てに浮かび上がるのを期待して。
この世界がゲームから派生したとの言い伝え。それは『始源の知』ともいわれ、わしのみならず、多くの者が迷妄とみなしておった。これは真なるものではなく、むしろ、修復子から『母海』への進化の過程で、紛れ込んだ、あるいは、生じた迷妄であると。
争いなどしている場合ではない。なぜ、母上は、こんなときに限って。『導者』が召喚され、現存しておるときに限って。世界の真理が求められるかもしれぬ今に限って。
いや、今だからこそか。いやいや、臆断は避けよう。そもそも運ゲー野郎のマスターが導者であると、母上が知っておるか否かさえ分からぬのだ)