39番地 ピヨ丸VS屁コキ野郎2
「姉上。お久しぶりでございます。拙者。シャクトリンゴ殿と共に武者修行に出ておりましたが、訳あって別れました。そこからは笹の葉が川の流れに翻弄される如くの一人旅。ただただ旅先で出会う者の情に救われ、何とかここまでたどり着いた次第。つもる話もあれば、しばし酒など呑みかわし、旧情を温めたきところではありますが。拙者風情でも志というものがあり、その道を追うがまさに本願。その途上に立ちはだかるが、我が終生のライバルたる屁コキ野郎殿。どうか、姉上にもこの勝負の行方を見届けていただきたく、お願い申し上げます」
他のダンジョンを経めぐっておると風の噂に聞いておったピヨ丸。再会してみて、頼もしさが増したと想われるのは気のせいではあるまい。そのピヨ丸がしばしピヨピヨとばかり言っておった。果たして何か伝えたきことでもあったのか。
ふわりと舞い上がり、その赴く先におるは屁コキ野郎。いつもの如くマスターの肩の上におったが。何を想うてか、シュタッとばかりに床に飛び下りる。そして誘うが如く見上げると、ピヨ丸も舞い降りる。
そうして、両者、対峙して互いに頭を下げる。何か共に認め合うところがあってか、互いへの敬意さえ想わせる素振りであった。
そこからは珍妙なやり取りとなった。ただ、やっている本人たちは、どうにも真剣らしい。屁コキ野郎は尻を向けて、ピヨ丸はくちばしを突き出して、間合いを探り合う。ピヨ丸が間合いを詰めんとすると、屁コキ野郎がここぞとばかりに脱皮をはだける。どうなったらどちらが勝つのか、皆目分からずに見ておると、やがてドカンと爆発し、両者とも床に倒れておった。
ともに何がしたかったのだろうか、否、そもそも何をしておったのか、疑問に想いつつも、その戦いを見て、一つのアイデアがひらめいた鉄チンは、それをマスターに告げる。
「マスター。脱皮は余っていませんか? もし、お借りすることができるなら、他のダンジョンに携え行き、そこにて活用させたく想います」
声につられ見下ろす竜顔は、私の言葉が終わるころには、とても嬉しそうなものに変わっておった。