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運ゲー野郎のモブ転生――ダンジョン連合vs運営政府  作者: ひとしずくの鯨
最終部 そこが地獄の一丁目な件
78/134

38番地 愛の虚(うつ)ろ

 使者の役目をにない、4つのダンジョンを行き来する鉄チン(鉄スライム)。今は『地獄巡り』のマスター(見た目は東洋の竜)の下におった。そして、その視線の先には屁コキ野郎(見た目は白い子猫)。


 最前のこと。不意に姿を現したと想うと、鉄チンの前に近づいて来た。マスターの脱皮に全身を包んでおるゆえ、屁は届かぬと油断しておったところ、いきなり脱皮をはだけて、放屁したのだ。一体、何を食べたら、こんなにと、その臭さに悶絶することになった。


 そして、今や、脱皮をいかに素早くはだけて、ケツを露出させられるかに、懸命になっておる。ただの変態である。




「鉄チンよ。我は己のダンジョンへ敵を集める提案をなした。その本当の理由が分かるか」


 上より野太い声で尋ねられ、しばし考え込んでから、答える。


「他の召喚師様を守りたいとのお気持ちからなさったと、かつて、マスター自身がそうおっしゃっていたと記憶します」


「もちろん、それもある。ただ、本心をいえば、妻の復讐をしたいから。それだけよ。妻を失ってのち、我はいかんともしがたきむなしさに呑まれておる。それほどに、あの者は我の心を占めておった。楽し気な妻の笑い声が聞こえた気がして、あわててその姿を捜した後、これが空耳と想い知る。これを何度繰り返したことか。

 その妻を奪った輩は、最早、このダンジョンには攻め込むまい。既にその目的を果たし終えたのだから。そして新たな獲物――召喚師の殺害を求めて、他のダンジョンに入るに違いない。それを我の下へといざなうためだ。見方を変えれば、他のダンジョンの召喚師をおとりに使う卑怯なる行いに過ぎぬ」


 そう聞かされ、やはり鉄チンはしばし考え込んだあとに、答える。


「今回の提案により、彼らは、時というかけがいのないものを得ました。これは彼らのダンジョンの強化に必要なものです。

 私のそもそものあるじ、『無勝堂』のマスターはかなりお強いですが。『ぺろぺろ』のマスターは属性向上により新境地に達したと聞き及びます。『運ゲー野郎』のマスターは1番弱いですが、彼なりに努力はしておるようです。

 ただ、貴方あなたが最強です。そんな貴方に守っていただけること――自らのみでなく、その愛する召喚師様も――そのことを感謝しないなどということが、果たしてありましょうか?

 私も深く感謝しております。貴方を含めて、いずれのマスターも召喚師様も失いたくありません。こうして使者の任をいつまでも務め続けることが、私の願いでもあります。

 あまり自らを悪く言われませぬよう、お願いいたします。それをお聞きすることは、あの屁コキ野郎の屁より不快です」


 ついつい、感情のままにここまで言ってから、マスターにとってあいつの屁はかぐわしいものであったと気付く。同時に言い過ぎたかとの後悔に駆られ、マスターの顔を仰ぎ見るも、


「我の場合、そもそもの体質と『属性アップ』というアビリティが合ったというだけなのだがな。『ぺろぺろ』のマスターにとっても同様と聞けて、とても嬉しいぞ」

 帰って来たのはマスターの優しき心を伝える言葉であった。

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