第7話 プレイスタイル
気付いたことについて、彼女が隣室に戻った後も考えた。
因果律とか妙な――自分でさえあまり理解していない――言葉で彼女に説明したが、要はオート操作じゃねえか。その言葉なら、もっと彼女にも分かりやすく説明できた? いや、自信ねえな。どっちにしろ、『ダンジョン征討記』にもオート操作があり、俺はもっぱらそれの世話になりっぱなしであった。
そして、不明点というか疑問点があることも分かった。自分の防御力との関係である。なので、推論まじりとはいえ、とりあえず、そこを整理した。
硬化無しでは、ワンパン負けばかりであったことを考えるならば、やはり己とプレイヤーの防御力の差はとても大きいと想える。そして、今回の硬化のアビリティの取得により、己の防御力が大幅に向上し、彼我の差を埋めたのであろう。
確かにゲーム『ダンジョン征討記』にても、プレイヤーは装備――防具と特殊武器――により、防御力が上がっておった。
防具は鎧兜などの身につけるもの、そして手に持つ盾である。
特殊武器とは、超近接戦向けの武器である。両の拳にはめる金属製の籠手であり、いかめしく爪や刃がついておった。また、両手に持つとても刀身の短い刀剣もあった。中には、カンザシというものまであった――こんなん現実じゃねえと想うが、そこは、まあゲームなんでということで、俺もしばしば色っぽいお姉さんキャラに好んで持たせた。
そして、これらの武器を装備できるのは超接近戦を得意とするキャラ――武闘家や忍者など――ばかりであった。これらのキャラは縛りとして、盾を持てず、また身軽であるために、その身につけるものも防御力の低いもの――布やせいぜい革製のもの――に限られた。それゆえの調整として、特殊武器による防御力向上がゲーム内に盛り込まれたのは明らか。
硬化はアビリティであり、厳密に言えば武器・防具ではないのだが、ただ、同様の防御力向上の恩恵に預かっていると想われた。
そして己の手――硬化した手――もまた攻防兼備に用いてこそ、なんだよな。でも、どうやって?
いくら考えても堂々巡りの果てに一つの答えに至る。しかし、気が進まねえな。何せ、相手の武器の方が長い。それがそのまま結果に結びつくのは明らかじゃねえか。なので他に方法がないかと考えるのだが。やはり、これしかないか?
突撃。
プレイヤー側の超接近専用のキャラの如くに、素早さのステータスが特に高ければ、何とか、なろうが。そもそも己にそうしたステータスがあるのかどうかさえ不明だ。存在が明らかなのは攻撃力と防御力のみ。手抜きすんなよな。まったく。なので、そうした利点が無いとして考えざるを得ず。
相手が沈着冷静に対応するなら、ほぼほぼ死にに行くようなものである。でも、相手が慌てたならば、1チャンあるかも? いわば運ゲーである。まあ、実際、俺はどのゲームもへたくそで、いざとなると運ゲーに頼りがちであり、ゲーム仲間うちからは運ゲー野郎などとからかい半分に呼ばれていた。結局、行き着くところは己のプレイスタイルか?
そうして、敵を待ち構えては――フタを開ける音でその襲来は分かる――そして、扉が開いた瞬間を狙って、俺は突撃した。何度も試み、そして結果は死、死、死であった。
これまでの戦いと唯一違ったのは、サンスケ(三色スライム)も突撃に加わろうとしていることだった。ついに俺の負けっぷりを憐れと想ってか? しかし、何せのろのろとしか動けぬサンスケ。今回の戦法とは相性が悪すぎると言わざるを得ない。
6回の突撃と死を繰り返して復活したあと。サンスケが子猫のように身をすり寄せて来て、膝にのりたがる。抱え持ち、乗せてやる。
「分かってるって。気持ちだけは、ありがたく受け取っておくぜ」
そう言って、膝から降ろすが、すぐに、また乗りたがる。こんなことは初めてだった。もしかしたら、何かいい戦法でも想いついたか? しかし、喋れねえんじゃなあ。ただ、一つの可能性に気付く。彼女なら会話できるかも。何せ、召喚師様だ。と都合良く考える俺。
隣室に出て来た彼女に問うが、無理ということであった。しかし、また、召喚獣増えてねえか。扉の隙間からはそのように見えた。
サンスケを抱いたまま寝床に座り込み、「しょうがねえよ。お前が言葉が喋れたなら、うまく行ったかもしれねえがな。こればっかりは」と語りかけ、そのプニプニの体に頬ずりした。