15番地 地獄巡り3
戦闘のあと、マスターが鉄チンに尋ねて来る。
「どうだ。見事、相手のボスを倒した気分は?」
「はあ……」
あのゴチンという衝撃と共に、相手の命を奪ったこと。それは、とても不快なものであった。
「どうやら、私には向いておらぬようです。戦闘に加わらせていただき、初めてそのことが身に沁みました」
「そうか。折角、活躍できるのに。残念だが。仕方ないか」
マスターの説明によると、以下である。
『雷公』の間を必ず通過する構成としておる以上、敵は雷耐性必須となる。仮に雷公を倒すを得たとしても、その戦闘にて暴れ狂う雷で死んでしまうためである。雷公やマスターそして雷神は、雷を本源とするモンスターであり、雷に打たれて喜びこそすれ、苦にもしない。風神はよく分からぬが、雷神と雷耐性を共有しておるか、ボスにより守られておったのだろう。風神・雷神は切っても切れぬ仲ゆえ、前者だと想うがな。いずれにしろ、ボスは少なくとも己自身を守らねばならぬとなる。となれば、雷本源の者でない限り、雷を操る何らかの術式や魔法を用いることになる。ただ、そのためには、戦闘の間中、術を唱え続けなければならぬ。ゆえに、そなたを投げつけても、逃げることさえできぬ。
「使者として頑張らせていただきます」
「確かに、使者の方はそなたしかなせぬからな。それにますます重要性を増して来ておる」
「そう。おっしゃってくださり、とても嬉しく誇らしく想います。むやみに他人を羨んだりするものではありませんわね」
すがすがしくそう言う鉄チン。まさにひと戦を経て、成長した彼女の姿がそこにあった。