第5話
それからは、たいして何もなかった。というか、あえて言うほどの何ごともなかったが正しいか。何せ、ひたすら同じことの繰り返し。しかも、それが殺されることなのだから。
ところがである。何度目であろうか? 恐らくは七、八十回以上――下手すると、百回を越えていたかも知れぬ――殺されたあとのこと。阿呆らしくなって、数えるのを止めたのだった。
しかし、よくもあいつら、プレイヤーども。ひどいことをしておいて、平気なものだ。まったく、ところ変われば品変わる、ではないが、立場変われば、何とやらか?
そんなときのこと。いつもの如く、壺からクジを引く。出て来たのは、金色に輝く棒であった。
おおっ。黄金。と喜んだ訳ではない。しかし、そのコテコテの分かりやすさは、それが当たりであろうことを、ほのめかしてはおった。さらに、棒はするすると掛け軸の如く、独りでに展開した。
もしや、これは大当たり。
彼女がそこに書かれた文字を読んでくれる。
「体の一部を固くすることができるようになるんですって」
言われた意味がすぐには分からず、俺はボーッとしていた。何だ?
「やり方はお好きに。心の中で念ずるも良し。言葉に出すも良し。手指でその部分、つまり、固くしたいところを触れるも良し」
「分かった。分かった。それだけ聞けば十分だ」
その利するところにようやく想い至ったのだった。確かに、右手なり左手なりを硬化すれば、盾代わりにできる。なるほどだぜ。俺は期待して、プレイヤーの阿呆を待った。今度はこっちが返り討ちにしてやるぜ、とばかりに。
今回の敵が持つは大段平。それを豪快に振り下ろす。俺は(右腕よ。固くなれ)、そう、心で念じて――だって、言葉にするのは、少し恥ずかしいだろう――右腕を硬化する。段平を見事に受け止める。至近距離にある相手の顔が驚きに歪む。そう、いつまでも好き放題にはさせないぜ。俺は不敵な笑みを浮かべる――を、得るはずであった。
プレイヤーも、そこはさるもの、それでは終わらず、剣を横ざまになぎはらう。ただ、それで魂消る俺ではない。俺の方もそれに応じる。伊達に何百編も殺された訳ではない、って、それ関係ないだろう。それに数増えているしと自ら突っ込みをいれつつも。
俺は(左手よ。固くなれ)と念じる。ただ、どうしたことか? 左腕は硬化しなかった。結果、俺、また、死んだ。
復活ののち。
どうやら、一カ所しか硬化できないらしい。それじゃあ、右腕か左腕のどちらかを硬化させて守るしかねえな。まあ、ゲームに制限はつきものか。
ところが、である、次の戦闘、何とか、右腕のみで防ごうとしたものの、数秒――三秒とか五秒とか、そんなもので硬化は解けてしまった。
何だ。こりゃあ。まったく、期待させやがって。
またまた復活ののち。急いで、彼女にクジの文字を読んでもらう。この前は途中でさえぎってしまったからな。すると、最後の最後に
「持続時間三秒。再使用まで三十秒必要、とあるわ」
クソっ。期待させやがって。これで、どうやって、戦えってんだ。