9番地 凶報まがい3
俺はダンジョン内に沸きいずる泉の一つ――地下3層のマスターの部屋の角にある――で口をゆすぎ、顔を洗ったあと、しばし呆然とする。俺の様子が気にかかったのか、鉄チンも留まった。
そんな俺の様子に気付いて、女神様が近づいて来る。
「どうしたの?」
「守るから」
「えっ」
「俺が女神様を守るから」
「あっ。そう。ありがとう」
明らかに戸惑いつつも、そう答える。
会話を続けようとして、女神様にどこまで言うのかさえ、決めていないことに気付く。下手に事実を告げても心配させるだけだ。女神様は不審そうに双眼鏡子を見ている。
鉄チンは何か言いたそうに見えたが、殺害場面を見るよう勧めるか否か決めかねておるのだろう、言葉は出て来ない。無理もない。俺以上にショックを受けるはずだ。
「大丈夫だから。心配することは何もないよ。部屋に戻っていいよ。モンスターたちの世話があるだろう。俺はまだ少し鉄チンと話すことがあるんで」
女神様はしぶしぶという感じで戻る。
俺はそこで前の世でのゲーム『ダンジョン征討記』の話をした。そして、この世界がそれをもとに成り立っていると想えることも。誰かにこれらを語るのは初めてであった。
鉄チンは驚きつつも、聞いてくれておった。