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運ゲー野郎のモブ転生――ダンジョン連合vs運営政府  作者: ひとしずくの鯨
最終部 そこが地獄の一丁目な件
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8番地 凶報まがい2

 鉄チンは、あっちこっちと移動が多いためであろうか。少なからず疲れがうかがえた。その鉄チンが『無勝堂』から双眼そうがん 鏡子きょうこを連れて来た。この者が何と『地獄巡り』の召喚師が殺された場面を記録しておるという。


 俺は、ゲームで遊んでいたときに、その姿を見た記憶があった。特段、強いからという訳ではない。頭部が双眼鏡になっている、その特徴的な姿ゆえであった。


 何となく、どうすれば、その場面が見れるのか察した俺は、あまり説明も聞かずに、試してみる。そう。双眼鏡からのぞいてみたのである。しかし、なぜか、相手はその姿からは想像できぬ女の子の悲鳴のような声を出して、俺から逃げる。


 違ったか、と想い鉄チンの方を見ると、逆からのぞいていると言われた。言われた通り、そうする。すると、今度は悲鳴もあげないし、逃げもしない。先ほどの俺の行いは鏡子にとっては痴漢まがいの行いであったとでもいうのだろうか。抱き着いた訳でもなく、のぞいただけなのだが。それに、これはこれで正面から見合っているようで、何となく恥ずかしくないか。ただ、そんな徒然な想いは、その先に見えるものにより吹き飛ばされた。


 それは音声無しの記録動画であった。召喚師が殺される場面というのは分かっていたので、血なまぐささへの嫌悪感を抑えつけ、画面を見続ける。


 召喚師は青いひらひらの衣をまとっておった。胸や尻が透けているのでは、とドキリとするほどの薄物である。もちろん、それは誰かに見せるためではない。その他者が絶対にここには入って来ない、その安心感の裏返しと取るべきであろう。


 それをひるがしながら、必死の形相で逃げる召喚師。それをあるキャラが、刃物をたずさえて追っておった。ゲーム内で、そのキャラを見たことはなかった。俺が見たことないだけか、あるいは俺が死んだあとに実装されたキャラなのか。


 しかし、重要なのはそこではない。そのキャラは他のモンスターたちには見向きもせずに、ひたすら召喚師のみを追っておった。


 ありえぬことである。


 俺は、この事件について、これまで次の如く推論を立てていた。

 本来ならレベル0のみのモンスターのはずが、レベル1モンスターも紛れ込んだゆえに、プレイヤー側に見つかってしまったのだろう。そのまま、モンスター討伐に巻き込まれ、召喚師は命を落としたのだろうと。


 ただ、ここでは召喚師がターゲットになっておった。繰り返すが、ありえぬことである。プレイヤーは召喚師を知らない。召喚師はゲームには出て来ない。召喚師とは、あくまで、このゲーム世界を成立させるために、生み出された裏の存在――言い換えれば、裏設定の存在とでもいうべきものである。レベル0のモンスターのみと一緒にいるなら、プレイヤー側から決して見つからない、というのも、それを裏付けていると想えるのだが。


 何が起きているのだ? その動画は、青い薄物が凶刃により赤に染まって、終わりを迎えた。俺は想わず吐いていた。

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