2番地 攻略ルート
クラゲンゲが来てくれたことにより、敵の攻略ルートについて、あらためて考え直すこととなった。
まず、決めなければならないのは、必ずクラゲンゲを通るルートにするか否かであった。こうすれば、多くのプレイヤーがここで倒れ、俺たちが戦闘を強いられることは少なくなるだろう。ただ、それは同時に戦闘の勝ち負けによるご褒美がもらえないことを意味した。つまり、ダンジョンの強化は遅れることになる。果たして、どちらが良いのか? 数日前から考えているが、未だ答えは出ていない。
作業用の机は、足が短い、いわゆるロー・テーブルであり、俺はその前にあぐらを組んで座っている。
その対面に双子の少女『瞑・眠』が座る。ついさっきまで、便利アイテム『ダンジョン君』を二人して扱いましておったが、遊び疲れたのか、今では、スヤスヤと寝息を立てておる。彼女たちの睡眠魔法がこれくらい効果てきめんであれば、いいのに。そう想うも、その寝顔にほほえましさを感じずにはおれぬ。彼女たち、年端も行かぬ少女たちにとっては、戦闘が無いのが一番、良い。
先ほどの俺の問いは、
それがずっと先の将来か?――俺たちが誰にも負けぬほど強くなれば、攻めて来る奴はいなくなるはずだった、
とりあえずの今か?――まさにクラゲンゲに守られる形であれ
そのどちらが良いかというものだった。
二人の寝顔を見ていると、起こしたくないと想う、その想いは、自然と『とりあえずの今』とつながった。俺は、クラゲンゲを必ず通るルートに置くことに決めた。
これは、現行の部屋割りでも対応できた。とすると、今回は『ダンジョン君』の出番は無しか。女神様から勢い込んで借りて来たこれは、一見、ダンジョン模型に過ぎない。各層ごとにばらばらにでき、本体は外枠のみである。これに部屋に相当する別部品――立方体や直方体――を入れて行くことにより、部屋割りが決まる。
(注:文章だと分かりにくいので、飛ばしてもらってもOKです→例えば、この地下3層の枠は横10×縦10の枠である。ダンジョンマスターの部屋が入り口側にあり、これをしつらえるためには、例えば横6×縦6の部品を前側に寄せて配置すればよい。この両側に畑があるのだが、そのためには、横2×縦6の部品を各々入れればよい。その後ろ側は女神様の領域であるが、これも同様に複数の部品で埋めて行けば、良いとなる)
これを地下2層、3層にもなしてから合体し、ある術式を施せば、ダンジョンが、その部屋割通りとなるという優れものである。俺は部屋割りだけして、術式は女神様にやってもらう――今の地下2層と3層の部屋割りは、そうやってしつらえた。
必ず通らねばならぬ部屋は何か所かあった。一つは、入ってすぐの部屋で、俺が最初に戦っていた部屋である。他はいずれも階段に通じる部屋で、その経路は1層出口部屋→階段→2層入口部屋→(2層)→2層出口部屋→階段→3層入口部屋となる。
3層入口部屋はマスターの部屋なので、ここへの配置はNGである。また、2層出口はマスターの部屋に近すぎ、そこでのゴロゴロは、戦闘待機する俺の心臓に良いと想えないからNGとした。
また、基本的にクラゲンゲを地獄変部屋に入れるのは、敵の攻略時のみとしたかった。そうでなければ、移動に支障を来たすし、ゴロゴロドカンが常時となれば、俺やポチが発狂しかねない。この観点から、1層すぐの間は、準備の時間が取れず、NGとなった。
結局2層入口部屋となった。