1番地 凶報まがい
ここまでお読みくださりありがとうございます。本話より最終章に入ります。引き続きお読みいただければ、幸いです。
また、評価及びブックマークをしていただいた方、ありがとうございます。とても嬉しいです。まだの方は、是非、お願いいたします。それを糧にラストまでがんばりたく想います。
それは、凶報は凶報でも、まがいものの凶報、事実誤認にもとづく凶報なのではないかと想われた。『地獄巡り』のダンジョン・マスターからのもので、やはり鉄チンが伝えてくれた。
「どう想われますか?」
そう、鉄チンに問われるも、俺もまた問いで返さざるを得なかった。
「彼は同じ部屋にいたのだろうか?」
「そこまでは確認しておりません」
「その際の詳しい状況を知りたいが、まずは、そこのところを確認してくれ」
「分かりました。私は取り急ぎ『無勝堂』のマスターにも本件をお伝えして来ます」
そう言い残し、去って行く鉄チンを見送りながら、俺は首をひねる。
その凶報まがいとは以下の如くのものであった。
『『地獄巡り』の召喚師は敵に殺されました。同じ悲劇に見舞われぬよう、そして後悔にさいなまれぬよう、貴方のダンジョンの召喚師をお守りください』
俺がかつて女神様に聞いたところでは、マスターを含めレベル1以上のモンスターがいなければ、つまり、彼女とレベル0モンスターのみならば、敵は彼女のいる部屋に入ることは無論、その存在を知ることさえできないと。
これは恐らく正しい。なぜなら、彼女は危ない目にあったことはないから。マスターたる俺が死に、ダンジョンが陥落したこと、数え知れずであるにもかかわらずである。
とすれば、『地獄巡り』の召喚師は、レベル1のモンスターを彼女の部屋に入れていたか、もしくは、彼女自身が部屋を出て戦闘の場にいたのではないか。
そして、これらのミスさえなければ、敵は召喚師に手を出せないことを、『地獄巡り』のマスターは知らないのではないか。
そう推測せざるを得なかった。